ほぼすべてのメディアの記事が、例の3500億ドル投資のこと(関連記事とか)に集中しています。そんな中、そこまで大きな話題になっているわけではありませんが、国内問題として「選出権力」と「任命権力」の話が、主に右側を中心に議論されています。李在明大統領と与党が、最高裁判所長を辞任させようとしていること、そして、尹錫悦大統領の件を専担する裁判部を構成しようとしていることなど、裁判所関連内容です。中には法律の改正などが必要な案件もあります。しかし、党内ですら反対世論も多かったことで、李大統領が「権力には序列がある」「選出権力(国会)は任命権力(裁判官など)より優先される」などの趣旨で話しました。選出権力とは、選挙で国民から選ばれた人たちのことで、ここでは国会のことです。内心、自分自身(大統領)のことでもあるでしょう。任命権力とは、任命された裁判官などのことです。
同じ共に民主党だった文在寅政権のとき、あれだけ「三権分立」を主張していたにもかかわらず、必要になるとここまで三権分立に「順位」をつけるのか・・と、本ブログの本題としてふさわしい内容ではないないでしょうか。韓国日報(16日)、中央日報(15日)はこの件で、「三権分立は対等とするのが一般的な学会の見解」、「優越を乗り越えて、もはや全能になろうとしている」としながら、「任命」も、国民から権力の代理として選ばれたからこそ可能なものであり、結局は三権分立に序列があるのではなく、すべてが国民の権力を代行しているだけだ、としています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・「三権分立について誤解があるが、司法部の独立が、司法部が勝手にしていいという意味ではない。すべては国民によるものだ。だから大韓民国には権力の序列が明らかにある。国会は最も直接的に国民の主権を委任されたのだ」 (李在明大統領・就任100日記者会見で)。共に民主党代表と法制司法委員長など与党側の首脳部が、曺喜大 大法院(最高裁判所)長の辞退圧迫に乗り出して、李在明大統領の「三権分立の序列」発言が再び注目されている。
国会立法権を強調した趣旨だったが、牽制とバランスを前提とする通常の三権分立の概念とは距離があり、議論が起きた。国会多数党が司法部の首長を批判し、その辞任まで公開的に言及し、三権分立の本質をめぐる学界の論争も熱くなっている。李大統領の「三権分立配列」発言に対しては、批判的視点が優勢だ。憲法学界の代替的見解は、立法司法行政の三権は対等性を前提とする(韓国日報)・・>>
<<・・(※たとえ国民から選出された権力でも、民主化運動とともにしてきたのに)共に民主党が、いつからか、選出された権力の優越さを主張している。21代総選挙で180議席近くが得られ、衛星政党を含む巨大与党になった頃から、この流れが始まった。特に、尹錫悦前大統領が戒厳令などで去った後、共に民主党で「選出権力」としての地位は、優越を超え、全能の水準に達している。11日、李在明大統領も、就任100日記者会見で、「権力には序列が明らかに存在ある」と話し、これを公式化した。発言が出たきっかけは、(※尹錫悦大統領の)内乱特別裁判部をめぐる論議だ。共に民主党は、外部の専門家が含まれた委員会が推薦した判事たちで、該当事件だけ専担する1、2審裁判部と、関連令状を処理した令状判事を構成する内容の法案を推進している。
当初、外部人を裁判部に含めることができる条項も考慮したが、現職判事の中で推薦されるよう、一歩下がった状態だ。当然、三権分立と憲法に違反するという批判が出てきた・・・・李大統領が提示した配列は、国民主権、直接選出権力、間接選出権力の順である。「国民の意思を最もよく反映するのは国民が直接選出した選出権力であり、任命権力は選出権力から二次的に権限を分けられたものだ」と説明する。一見、もっともらしいようだが、重大なエラーが隠れている。任命権力を委任するのが選出権力ではなく国民である。選出権力はシステムのスケッチを描いて権限委任を代理するだけのことだ。国民が選挙で立法者を選び、彼らが法を作って、分野別に委任する内容と方式を定める。
しかし、法にも守らなければならない原則と、超えてはならない限界がある。それが憲法だ。一次委任を受けた立法者が作った法が、原則に違反し、限界を超えると、それは無効になる・・・・(※本件については)違憲訴訟が避けられないだろうし、結局は裁判が長くなるだけだ。合憲判定を受ける可能性も低いが、合憲が出たらそれでも問題だ。後で政権が変わったら、今回の裁判結果を覆すための「再審特別裁判部」を構成するだろうからだ(中央日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。