李在明大統領が、米国や北朝鮮関連でいろいろ話しました。まとめて取り上げてみたいと思います。BBCとロイターとのインタビュー、SNS投稿内容です。聯合ニュース(22日)、朝鮮日報(朝鮮BIZ、22日)、韓国経済(21日)の記事です。気になるのは3つ、1つは、対北朝鮮政策が文在寅政権のときに戻ったこと。具体的には「非核化」ではなく「凍結」などを認める発言をしたことです。いままでも、「先に北朝鮮が非核化に乗り出さなくても、『先に』支援を行う」という趣旨を話してきましたが、さらに分からいやすい発言が出てきました。2つ目は、米韓関税合意の3500億ドル関連で、「通貨スワップなしに米国側の要求を受け入れた場合、1997年の金融危機(いわゆるIMF期間)が再発するかもしれない」と話したことです。3つ目は、「自主国防は外国軍に依存してはいけない」と、在韓米軍の役割変更を牽制したことです。
いままでも同じ趣旨の発言が、閣僚レベルで何度もありましたが、ついに大統領が自ら同じ発言をしたわけです。米国に対する公式メッセージだと見てもいいでしょう。見方にもよりますが、ある種の「通貨スワップを受け入れてくれないなら、投資できない」と圧力をかけたとも言えます。ただ、各韓国メディアの報道だと、米国側は通貨スワップに応じるつもりはないとされています。そもそもFRBとトランプ大統領の仲がいいとは言えない状況が続いており、基軸通貨(韓国ではハードカレンシーも基軸通貨と言います)でもない韓国ウォンと「無制限」通貨スワップをしたところで、リスクを負うのは米国側だ、という話です。そもそも、無制限(常設)というのが、なんというか、控えめに言って、大胆です。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・李在明大統領は22日(韓国時間)、韓国と米国間の関税問題をできるだけ早く解決しようとする目標を持っていると明らかにした。李大統領はこの日報道されたロイター通信とのインタビューで、韓国の3500億ドル規模の対米投資に対する商業的な妥当性の保障問題において、両国間に異見があるとしながら、このように述べた。それとともに「(韓米間)通貨スワップなしで米国が要求する方法で3500億ドルを引き出し全額現金で投資すれば(※そんなに一気に引き出すことはまずないと思われますが)、韓国は1997年の金融危機と同じ状況に直面するだろう」と憂慮した。李大統領は米国との貿易合意を文書化した日本の場合、外国為替保有額の規模などを説明し、韓国は日本と状況が異なるとも強調した・・
・・李大統領は「商業的合理性を保障する具体的な合意に到達することが、現在の核心課題であり、これは最大の問題として残っている」とし、実務レベルの協議での提案は、商業的妥当性を保障できず、両国間の見解をまとめることを困難にしたと説明した。李大統領は「交渉が来年まで続くことができるか」に関する質問には「私たちはこの不安定な状況をできるだけ早く終わらなければならない」と話した。また、米国との貿易合意を放棄する意向があるかとの質問には、「同盟間で、最小限の合理性を維持できると私は信じている」と強調した(聯合ニュース)・・>>
<<・・李在明大統領が「外国軍隊がなければ自主国防が不可能だと考えるのは、屈従的な思考だ」とし「強力な自主国防の道を開く」と21日明らかにした。李大統領が在韓米軍を「外国軍隊」と表現するなど強い表現を使ったことで、政治家たちの間で問題指摘が起きている。大統領室は軍の統守権者として自主国防意志を原則的に明らかにしたものだと説明したが、ドナルド・トランプ2期米国行政府が在韓米軍の役割変化など、いわゆる戦略的柔軟性を主張する現状において、このような立場を明らかにした背景はなんなのか、注目されている(韓国経済)・・>>
<<・・李在明大統領が、北朝鮮の非核化交渉と関連して、完全な廃棄ではなく「核プログラム凍結」を暫定的に収容できるという立場を明らかにした。ドナルド・トランプ米大統領と金正恩北朝鮮国務委員長間の取引を容認できるという意味だ(※2023年、まだトランプ大統領が当選する前、彼が大統領になれば北朝鮮に「凍結」を要求するだろうという報道がありましたが、米国側が公式にそんな話をしたことはまだありません)。同時に、米国と進行中の貿易交渉については「米国の要求をそのまま受け入れれば、1997年の金融危機ような事態に直面できる」とした。李大統領は国連総会出席を控え、主要外国メディアと相次いでインタビューし、外交・安保懸案に対する新しい構想を具体的に表わした・・
・・李大統領は、2019年に決裂した北米核交渉が再開される可能性も言及した。彼はトランプ大統領と金委員長が「ある程度相互信頼を持っているように見える」と二人の出会いが再び実現できると見通した。米国に向けて、他にも心を決めたような発言を続けた。李大統領はロイターインタビューで韓米貿易交渉の状況を説明し・・・・李大統領は、通貨スワップのような安全装置が無いと、3500億ドルの大規模な外貨を流出させる余裕がないという点を明らかにした(朝鮮日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。