「デジタル政府」を掲げてきた韓国ですが、政府・公共機関のオンラインシステムにおいて、大規模不具合が多発しています。国家レベルでの「大規模」のことです。公共機関の書類関連業務が止まるのはもちろん、身分証明もできなくなるから、融資など銀行での用事もできなくなるし、飛行機にも乗れなくなります。マネートゥデイ(27日)など複数のメディアによると、病院の診療にも問題が発生しています。「27日、関連業界によると、モバイル身分証明書から郵便局郵便・金融サービス、空港身分証明書認証、病院診療、火葬予約、119位置追跡システムなど、実生活と密接なシステムが全て止まった」、とのことでして。「あ、この話2年ぐらい前にも聞いた」と思う方もおられましょう。
ちょうど2023年11月に、同じことがありました(本ブログでも11月18日に取り上げました)。当時、「システムアップデートが問題だった」と発表されていましたが、専門家たちは「言い換えれば、アップデート前にバックアップをしなかったということ」「政府がアップデートの前にバックアップをしなかったとはどういうことだ」と指摘しました。そして、それから2年も経たずに、また国家行政が止まってしまいました。聯合ニュース(27日)、KBS(27日)によると、国家行政システムのデータセンターとなる施設のバッテリー火事が原因だとのことです。サーバーなどもあるので消火作業も用意ではなく(現在は鎮火作業は完了したとのことですが)、こんなときに備えてのシステムが「必要最小限」のものしかないため、完全復旧まではかなりの時間がかかると言われています。
ちなみに、韓国政府が「デジタル政府」を名乗ったのは2002年からです。その時点ではデジタルに転換するという宣言だったので、実際にデジタル政府になるまでは結構時間がかかったことでしょう。実際にデジタル(オンライン)でいろいろできるようになるまではもっと時間が必要でしたが・・最近2年間で2回も止まったというのは、やはり「急ぎすぎ」と「メンテナンス」あたりがあやしいところです。2023年11月18日の記事で、東亜日報は「2002年11月、電子政府が発足して以来、このように長時間にわたって電算網が止まったのは初めてだ。昨年、国連電子政府評価で193カ国のうち3位の成果を掲げ、デジタルプラットフォーム政府を強調していた政府に対する信頼にも影響するだろうという指摘が出ている」としていました。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・26日、火災が発生した国家情報資源管理院は、政府電算システムサーバーやデータベースなどを大規模に保有・管理する、国家電算網の心臓とも言える場所だ。国情資院は行政安全部所属機関である。火災が発生した大田の本院の他にも、光州、大邱、公州などにセンターを置いている。2005年に政府統合計算センターとして発足し、政府サービスがオフラインからオンラインに置き換えられ、機関の役割と重要性が高まってきた。この日、国情資院5階の電算室内のリチウム電池で発生したと推定される火災が、翌日になっても鎮火できず、政府の電算システムは、事実上、長時間止まっている状況だ・・
消防当局は大量の水で鎮火に乗り出す場合、サーバーなどの計算システム装備に影響することを懸念し、排煙作業をして慎重に鎮火作業を行っている。行安部によると、この日、国情資院の火災で政府電算システム70個に接続不可・遅延など問題が発生したと暫定集計された。政府電算システムは重要度に応じて等級を分けるが、今回の火災で影響を受けたシステムは1等級12個、2等級58個と把握された(聯合ニュース)・・>>
<<・・2年前、政府システムが止まった時、原因提供をしたところも、まさに国家情報資源管理院でした。政府と公共機関の計算システムが集結された心臓部で、なぜこのようなことが繰り返されるのでしょうか・・・・2年前、全国の行政機関のあちこちには、各種類の発給が不可能であるという案内文が出されました。公務員たちが使用する行政オンラインシステムに問題が発生し、政府の電算網は一気に停止しました・・・・当時の事故も、国家情報資源管理院サーバーで発生したエラーが、全国的に発生した問題の原因でした。行政安全部所属機関である国家情報資源管理院は、政府と公共機関情報システムの運営を担当しています・・
・・大田にある本院と光州、大邱などにもセンターを運営し、「政府24」と「インターネット郵便局」、「国民苦情センター(※意訳です)」など合計約600の政府サービス運営システムを備え、「国家電算網の心臓」とも呼ばれます。事故発生時に行政システムが受ける影響もあまりにも大きくなる構造であるだけに、政府は2年前の事故以後、改善作業の準備に乗り出したが、依然として手が届いていないのが実情です。【行政安全部デジタル政府革新室長「(復旧)システムが構築されているが、現在、一般的に動作する規模で、そんな大きなシステムが構築されているわけではないので、必要最小限な規模だけにになっていることもありまして・・」】。政府は、「AI 3大強国」という国政課題を選定しましたが、そんな中、国家電算網という基礎体力はどれだけ頑丈なのかを振り返ってみなければならないという指摘が出てきます(KBS)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。