韓国政府関係者「『3500億ドル投資より、同盟の未来について共に考えよう』と米国側を説得している」

あくまでメディアの報道ではありますが、例の「対米投資3500億ドル」のことで、韓国政府が考えているいくつかの選択肢が記事になりました。トランプ大統領が日本、韓国の対米投資は「前払い」と話したことで、一層この件が話題になっています。ここでいう前払いとは、本当に全額を前払いで払ってもらうという意味ではなく、『現金(保証やローンではなく、直接投資)』であるという点を強調したものだとの分析も出ているし、個人的にもその話だと思っていますが、どうやら「全額一気に払うもの」という論調の記事が多い気もします。いままで3500億ドルを「一気に」払うことだとする記事も多かったですが、今回の前払い発言で、そこに拍車がかかった、といったところです。ソース記事は韓国日報(28日)ですが、まず、米国側の要求をそのまま受け入れる選択肢は「ない」とのことでして。

そして、現金の割合をもっと少なくしてくれという韓国側の要求に対して、かなり冷たい反応である、とのことです。そもそも、韓国政府は米韓関税合意のあと、「現金比率は約5%」と公式に発表しました。韓国側は「米国がゴールポストを動かした」としていますが、米韓関税交渉でここまで具体的に話が出ていたとはちょっと思えません(それだと合意できなかった可能性が高いのでは?)。多分、交渉の場ではそんなことは言ってないのではないか、そんな気もします。今回「少なくしてくれ」というのが何%までかは分かりませんが、容易ではないでしょう。記事には在韓米軍撤収可能性の話まで出てきますが、最後が「(政府は)お金より同盟が重要ではないのかと説得している」になっています。以下、<<~>>で引用してみます。引用部分の「ノーディール」は、この場合、「25%で4年間耐える」話を意味します。




 

<<・・韓国が米国に投資することにした3,500億ドルと関連して、「前払い」としたドナルド・トランプ米大統領の発言で、両国間の関税交渉の見通しはさらに暗くなった。韓国政府は関税交渉「ノーディール」はもちろん、在韓米軍縮小など安保分野においての米国の措置まで、いくつかのシナリオと、対応方案を検討している・・・・韓国政府は、もっとも望ましくない場合を含むシナリオを多角的に検討している。大きく、4つある。1・常識レベルでの円満な合意導出、2・関税交渉を「ノーディール」にして終わり、ただ、25%高率関税以外の不利益は受けないようにする方案、3・米国側の要求を全面的に受け入れる、4・ノーディール結果で安保分野で在韓米軍関連の措置を受ける可能性、だ。

政府は、3を選択肢から消した。3,500億ドルの現金投資は韓国の経済体力において、余裕がある水準を越えるという判断からだ。李大統領が最近、外国メディアとのインタビューで、米国の要求をそのまま受け入れたならば「弾劾されるだろう」と言及したのは、このためだ。大統領室国家安保室長も27日、「チャンネルA」とのインタビューで、米国側の要求に対して「客観的かつ現実的に私たちが余裕がない範囲」と線を引いた。2の場合、高率関税は負担になるが、米国に投資するお金を国内産業を支援することに回すことで、保護貿易に備えることができる。




問題は、4である。米国がノーディールによる対抗措置として、核抑制力をこれ以上提供しない、または駐韓米軍を撤収させれば、安保の空白につながる可能性がある。4の可能性は、政府も言及しないようにしてはいるものの、米国の無理な要求が続いており、備えなければならないという声が大きくなっている。李大統領が21日、フェイスブックに「外国軍隊がなければ自主国防が不可能なように考えてはいけない」と指摘し、「国民が心配しないように完全な自主国防態勢を迅速に備えていく」と述べた背景でもある、と伝えられる。従来の戦力の強化、北朝鮮との関係改善を通じて、私たち自ら安保を守らなければならないという判断だが、北朝鮮の善意に寄り添った安易な認識だという批判を克服しなければならないだろう。政府の高位関係者は、「関税交渉は同盟の未来に関連する事案」とし「米国側に『お金の問題だけ気にしないで、同盟の未来の姿を一緒に考えよう』という意見を続けて伝達している」と話した(韓国日報)・・>>

 

同盟が重要だという話は確かにその通りですが・・大統領になる前の李在明さんの発言を取り出すまでもなく、「金を返さず『情(この場合は友情)』を言い出す」という話にも通じている、そんな気もします。あと、これも「3500億ドル」と関連している・・ともいえなくもない案件ですが、日本でいうと財務省あたりになる「企画財政部」の機能が分散されることになりました。分散させることで効率化できるなら問題ないですが、この場合、ちょっと妙な展開になっています。基本的には、いままで企画財政部が持っていた「予算」「財政」機能を企画予算処という機関に移し、金融委員会が担当してきた「金融」機能を企画財政部に移し、「財政経済部」という名で新しくスタートさせる、というものでした。ですが、金融機能を企画財政部(新しい名前は財政経済部)に移さなくなりました。

結果的に、新しく誕生する「財政経済部」は、既存のコントロールタワーに比べて「今までで最弱体」とされることになりました。韓国経済(28日)などによると、実際できることは税制だけで、「税制経済部」と呼ばれている、とも。記事によると、なんだかんだで、2008年リーマン・ブラザーズ事態などで世界的に金融危機が来たときなどに、米国と通貨スワップを結んだのも企画財政部でした。なんでこんなときにコントローラータワーを弱体化させるのか、また金融危機が来たら、どの部処(省庁)が担当するのか、という趣旨です。

 




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
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