例の対米投資3500億ドルで、いわゆる強硬論がどんどん強くなっています。京郷新聞の場合、コラムとは言え、あの装甲車事故まで取り上げながら「覚醒のチャンスが来た」としています。国民日報も「同盟の価値とは、お金ではなく信頼であるべきだ」とするなど、多くのメディアが「なぜ米国は無理な要求をするのか」と、完全に「みんなの涙をオラにわけてくれ」モードに入っています。そもそもなんで合意したのかもわかりませんが、そもそも、「合意したあとの細部調整」レベルの話ではなくなりました。しかも、今月末にアジア地域を巡訪しながら、たとえばマレーシアなどと新しい貿易協定ができる可能性があるという報道も出ています。
しかし、APECまでも米韓交渉は合意(合意の合意?)できないのではないか、という話も出ています。いわゆる「仲介外交(米朝、米中など)」として宣伝しているので、なにかの形で交渉に進展させるのではないか、そんな気もしますが・・こんなに強硬論が出ていては、与党としても動きづらいでしょう。そんな中、アジア経済(1日)が、韓国が米国に要求している「無制限通貨スワップ」について、締結できる可能性も高くないけど、できたところで、その利子負担などはどうするのか、と指摘する記事を載せました。結構珍しいことだと言えましょう。韓国メディアは通貨スワップを「使えばいい」ものとしか思ってない側面があります。いつだったか、米韓通貨スワップが締結できたときの記事で・・ちょっとうろ覚えで恐縮ですが、「米国が『ドル、好きに使っていいぞ』と言ったという意味だ」という記事があって、びっくりしたことがあります。
そもそも投資のための通貨スワップというものが前例がないことだけど、あえて3500億ドル全額を通貨スワップで行うなら、年間の利息だけで約2000億円(2兆ウォン)を超えるだろう、と。また、米国が特定の国に投資前提で通貨スワップを締結してやると、米国に投資を行う他の国々も当然「じゃ私たちも」と言い出すはずです。それどうすんの、とも。結論は、「通貨スワップだけで解決できる問題ではなく、やるとしても期間をかなり長く設定する必要がある」「結局、(現金による直接投資ではなく)保証やローンの割合を増やすしかない」ということですが・・トランプ大統領は全額を「前払い」とするなど(本当に前払いという意味ではなく、全額「現金」だとする意味だと言われています)、米国側が譲る兆しは見えていません。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・外国為替当局は、外国為替保有額の減少を招かない方式で調達できる資金は、年間200億ドル(民間部門を含む)水準であると見ている。キム・ヒョンテ韓国金融研究院研究委員は「韓国が3500億ドルを外国為替市場で調達しようとする場合、現在1410ウォンの為替レートが2000ウォン台になる可能性がある」と指摘した。貿易依存度の高い小規模開放経済であり、外国為替の健全性が揺れると、国家の信任度が下がり、第2の外国為替危機(※IMF期間のこと)につながる可能性がある・・・・国家間の通貨スワップは通常、両国の中央銀行がお互いの通貨を交換する契約だ。韓国銀行と米国連邦準備制度が通貨スワップを締結すれば、韓銀が連準にウォンを預けてドルを借りてくる式だ。
韓国は2008年300億ドル、2020年600億ドル限度の通貨スワップを米国と締結してグローバル金融危機とパンデミック危機をくぐり抜けた。当時に結んだ通貨スワップは基本約定期間が6ヶ月で、満期延長を通じて1年3ヶ月~1年9ヶ月維持されたが、実際に借りた期間は「超短期」だった。危機時にに超短期での供給しけ受けられなかったドルを、3500億ドル対米投資過程で、長くは数年、数十年ずつ供給を受けられるようにしてほしいというのが韓国政府の要求である。このような「投資支援目的の通貨スワップ」は前例がない形態である。投資支援目的の通貨スワップはドルの流動性を与えるという以外に、伝統的な方式の通貨スワップとはまったく異なる形になると観測される。短くて数年、長くは数十年ずつ続く投資資金調達に適した方式を考慮することになるだろう・・
・・ただし、韓国と投資支援型通貨スワップを締結することになれば、他の関税交渉国にもこれを許可しなければならない状況だけに、米国側が大きな負担を感じるという点が変数だ。莫大な利子費用も、韓国側の負担だ。現在の通貨スワップ手数料は通貨スワップ金利(OIS)に25bp加算金利をつけた年4.5%で、かなり高い。あえて3500億ドル全額を借りてきたと仮定すると、年間金融費用は150億ドル(約21兆ウォン、OIS+25bp)に達する。1000億ドルだけ借りるとしても、年45億ドル(約6兆3000億ウォン)だ。相互関税25%になったとき、2024年実質国内総生産(GDP)基準での損失額推定値である、「年間7兆~9兆ウォン(対外経済政策研究院)」とほぼ同じ金額だ。通貨スワップの利子費用が小さくないだけに、今後の交渉過程で関税引き下げ率と対米投資構造と実行方式、外貨流動性が市場に及ぼす影響など損益要因が複合的に考慮されるものと見られる(アジア経済)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。