李在明政権が始まった頃から、「実用外交は、盧武鉉政権のバランサー外交(均衡実用外交)と同じ」、「結局は文在寅政権のような『運転者論(仲介・仲裁外交)』になる」と思ったのは、私だけではないはずです。実際、閣僚など重要ポストに盧武鉉政権の人たちが再登用されています。鄭東泳統一部長官もその一人です。今回、APEC首脳会議をきっかけに、米朝首脳会談が開かれる可能性がある、米国も北朝鮮もすでに準備が出来ている、トランプ大統領の決断だけが残っている、長官はそう話しました。国際新聞、聯合ニュース、MBCなど複数のメディアが報じており、特にMBC、国際新聞などの場合は「可能性が大きい」「可能性はかなりのもの」としています。聯合ニュースは題で「2018年のデジャヴ」とも。この米兆首脳会談関連、3500億ドルがあまりにも大きな話題になっていたので、ずいぶん久しぶりに聞いた気もします。日本でも関税交渉関連は大きく報じられましたが、韓国では、もうその比ではありませんでした。
特に、「日本のほうが遅れているから、日本と手を組んで(差し伸べて?)米国に圧力をかけよう」とかそんな話で盛り上がっていた頃、日米関税交渉がなんだかんだで先に妥協されてから一段とブーストしました。それから、この関税交渉がギリギリで妥協できてからも、あとになって「現金(直接投資)3500億ドル」がキーワードになって、もう一回ブースト。ブーストというかバーストというか、そんな状態になりました。その影で米朝首脳会談関連はあまり話題にならなくなっていましたが、今日、また妙な発言があったわけです。すぐに首脳会談が開かれることはないでしょうし、もし首脳会談でなくても米朝関係において何かの会談の準備が出来ているなら、すでに何かの情報が出ているはずですが。
なんか、長官の話は「すべて用意できているのにトランプ大統領が決心しないから」なニュアンスですが・・ちょっとどうかな、と。なにより、万が一、北朝鮮が会談に応じたとしても、李在明政権がなにかやったことがないので、文在寅政権のような盛り上がりは見せることができないでしょう。文政権は、それでも米朝の間で特別使節などで情報を仲介していましたから。しかも、その内容が「そんなこと言ってない」で、結局は決裂となりましたし。韓国政府としては、盛り上がる要素が見当たりません。鄭東泳長官も「もし米朝首脳会談が開かれても、李大統領は同行しないだろう」としています。それでも、李在明政権からすると、関税よりもこちらのほうが本題かもしれません。「ぼくはいいから・・早く・・行け・・(ガクッ)」なイメージで。さて、通貨スワップもそうだし、本当にAPECをきっかけにして、米兆首脳会談はありえるのか。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・鄭東泳統一部長官は、今月末に慶州で開かれるアジア太平洋経済協力体(APEC)首脳会議を契機に米朝首脳会談が成立する可能性がかなり高いと見通した。鄭長官は15日、MBCテレビ・・・・に出演し、「トランプ大統領が決心さえすれば、APECを契機に米朝首脳会談が開かれる可能性がかなりある」とし「(首脳会談が開かれれば)場所は板門店北側である可能性が大きい」と明らかにした。金正恩北朝鮮国務委員長がトランプ大統領を北側に招待する方式になる可能性がある、という趣旨だ。
彼は、ホワイトハウスの「条件のない対話」意思表明と(※『非核化のために会談する』とも言っています)トランプ大統領が、米韓首脳会談で明らかにした「年内に出会えることを希望」、金委員長の先月の最高人民会議での「非核化問題以外なら会ってもいい」とした発言、および、それ以後の対米メッセージ管理などを根拠に、米朝首脳会談の可能性を見込んだ。
鄭長官は、金委員長がトランプ大統領に最後に送った書簡で、米韓連合練習に対する不満を表出した点を取り上げ、「トランプ大統領がその問題を議論し、どのような提案をするかによって、会談の成否が分かれるだろう」と見通した。鄭長官はトランプ大統領のことで「朝鮮半島情勢を実質的に変える意志と能力を備えた唯一の米大統領」とし「金正恩委員長もトランプ政権を逃すと機会がないと考えなければならない」と話した。彼は2019年、文在寅大統領が板門店北米首脳会洞に同行したが、「あまり形がよくなかった」とし、「今回、板門店北側で米朝首脳会談が開かれれば、韓国大統領は同行しないのがいいと思う」とした。南側を直接相手にしないという金委員長の態度が強硬だからと、鄭長官は付け加えた。
いわゆる「通米封南(※米国と直接対話することで、韓国の役割を封じる北朝鮮の戦略のこと)」の懸念について、鄭長官は「ワンポイントな通米封南なら、受けられる」とし「今までの通米封南は、すべてが保守政府でのことだった。李在明政権では心配しなくてもよい」と言いきった。長官は「金正恩は一ヶ月近く、対米メッセージを管理して、機会をうかがっている」とし「結局、鍵はトランプの手にあり、彼が決心すればAPECをきっかけに米朝首脳会談が開かれる可能性は、相当なものである」と繰り返し強調した(国際新聞)・・>>
気のせいかもしれませんが、まるで「トランプ大統領が、米韓軍事演習についてなにか譲歩してくれるといいのに」と期待しているような言い方です。文在寅政権のとき、そんな話が結構多く、しばらくのあいだ実起動訓練はなく、コンピューターシミュレーションだけで行われていました。米兆首脳会談が2018年のように行くかはわかりませんが、韓国政府のスタンスはすでに2018年に戻っているようです。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。