中韓首脳会談が開かれ、韓国政府が「中韓関係の全面的な復元」を宣言しました。いまのところは「これから~する」な内容がほとんどですが、ドルではなく両国の通貨(ウォン・中国元)の中韓通貨スワップが締結され、各韓国メディアから大々的に報じられています。70兆ウォン規模ですが、形とタイミングがちょっと「李政権らしい」といったところです。1日の朝鮮BIZ(朝鮮日報)など、ほぼ全てのメディアが大きく報道しています。ご存知、いままで韓国政府は米国側に通貨スワップを要求してきました。大統領自ら「対米投資には必ず必要な要素」と公言までしたものの、結局、米国側は通貨スワップに応じませんでした。本ブログのコメント欄をはじめ、「APEC首脳会議で来訪した中国と通貨スワップを結ぶ(既存のスワップを拡大する)形になると、ちょっと笑えるかも」という意見もありましたが・・トランプ大統領が帰国した直後、ドルではなく、なんとウォンと中国元の通貨スワップが結ばれたわけです。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・韓国と中国が1日、慶州で開かれた首脳会談を契機に、70兆ウォン規模の「ウォン・元(※中国元)通貨スワップ契約」を締結した。魏聖洛 大統領室国家安保室長は、「中韓関係の発展に、今まで浮き・沈みがあったのは事実だが、李在明政権の、国益と実用に基づく対中外交のおかげで、韓中関係を全面的に復元する効果があった」と明らかにした。中韓通貨スワップ締結は、両国関係正常化を象徴する措置であるわけだ。
大統領室はこの日、李在明大統領が、習近平中国国家主席と両国間に締結した数件の了解覚書、及び契約交換式を行ったと明らかにした。最も関心を集めたのは、両国中央銀行が5年満期70兆ウォン(4000億元)規模で締結した「ウォン・元通貨スワップ」だ。安保室長は「両国の金融・外国為替市場の安定と、貿易増進に寄与できると期待される」と明らかにした。また、韓中両国は高位級の定例コミュニケーションチャネルを稼働することにし、サプライチェーン安定化のための協力も強化することにした。両国間の人的交流の活性化のため、相互訪問利便性対策も検討する。安保室長は「中韓経済協力を、水平的協力に基づく好恵的協力として推進し、国民が体感できる協力の成果物を作るために努力した」と話した(朝鮮日報)・・>>
で、いくつかのMOUを締結したという話が続きますが、北朝鮮非核化問題から、事前に話題になっていた中国の韓国コンテンツ関連措置(公式には、中国はそんな措置を取っていないとしていますが)、そしてハンファオーシャン制裁問題(米国にあるハンファオーシャンの子会社に対し、中国政府が制裁をかけていること)、そして、主に韓国の西海(黄海のこと)で問題になっている領海問題などについても、これといった話は出ていません。今回、慶州APEC首脳会議で米中首脳会談など大きなイベントがあったのは事実ですが、韓国政府は「国際舞台に帰ってきた」をアピールしていました。尹錫悦政権の戒厳令で、完全に国際舞台から離れていたものを、李有明政権によって復帰できた、ということです。個人的に、「そこまで言うほどのことかな」としか思えません。今回の中韓関係「全面復元」も同じで、各案件でなにかの進展は見られません。これら(通貨スワップ以外)も、一部を続けて引用してみます。
<<・・李大統領と習近平主席は、朝鮮半島の平和と非核化問題も議論した。安保室長は「朝鮮半島の平和安定に関する中国の政策的立場が維持されるということを、私たちも如実に知ることができた」とし「具体的に(南北)対話を再開するのにどんな役割を果たすということまでが議論されたわけではなく、朝鮮半島の平和安定のために協力する、という意味を表した」と説明した。ただし、安保室長はこの日、具体的な非核化案を議論したわけではないと明らかにした。
最近問題になったハンファオーシャン問題についても両国首脳が話を交わした。魏聖洛 安保室長は「ハンファオーシャン問題に対して生産的な議論があった」とし、この問題は米中間の貿易対立と関連しているが、米中の問題が解放され、そのような雰囲気でハンファオーシャン(問題も)生産的進展があるという期待を持つことになった」と説明した。中国政府の韓国コンテンツ関連措置の解除については、「良い議論があった」とし、「実務的に協議をしていきながら、コミュニケーションしながら、解決していこうという共感があった」と話した。
これ以外にも、同日、中韓両国は中韓自由貿易協定(FTA)サービス・投資交渉の実質的な進展を通じた両国間経済協力の制度的基盤を設けるための「サービス貿易交流・協力強化に関するMOU」を結び、シルバー産業と革新創業分野の協力に関するMOU、韓国農産物の中国への輸出を容易にするための「中国輸出食物検疫要件MOU」も締結した(朝鮮日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。