2022年3月14日、週刊朝鮮(朝鮮日報の週刊紙)には、「韓国は台湾問題をウォーストーリーとしか見ていない」という指摘が出てきます。戦争映画を見ているような感覚でしかない、という話です。「韓国が見る日本は、概ね、韓日関係の中の日本だ。日本が見る韓国は、アジア、さらにはグローバルレベルの韓国だというのが、日本の知識人たちの言葉だ。日本はなぜ韓日関係の中での韓国として見ないのだろうか。2つの背景がある。まず、韓日関係の中で韓国を見た場合、過去歴史問題が主な議題として浮上するせいだ。合意点も無いし、感情的に傷つくだけだ。二つ目は、現実政治に対する姿勢が違う。例えば、韓国で取り上げられている台湾問題は、『興味深いウォー・ストーリー』の一つとして映るだけだ」、と。
ちなみに、ソース記事はインタビュー記事ですが、この部分はインタビュー内容ではありません。「本当にそんな事態が起きた場合の影響についての観察や分析は、ほとんど無い」、「日本では、そういう問題がいつも日本外交と世論の中心にある」などと、全般的に「台湾問題を見る観点が、日本と韓国とではあまりにも異なる」という内容です。そんなところですが、韓国慶州で開かれたAPECにて、韓国政府が「外交関係がない」などの理由で台湾代表団に「中央公務員による空港での出迎えを行わない」と通知していた、というニュースがありました。聯合ニュースTV(4日)など韓国メディアの記事によると、台湾代表団はこの措置に抗議し、結局は中央公務員による出迎えが行われた、とのことです。その過程で、「私たちと同じ理念の国にも協力を求めた」、とも。
他に、今回のAPEC関連記事を読んでみると、ほぼすべてが「絶賛」レベルです。京郷新聞の場合は「用米用中(安米経中ではなく、米国も中国も利用する)」という造語を使っていて、印象的でした。原子力潜水艦のときに「中国潜水艦」に言及し、その後に大統領室が「中国の方向の海域の潜水艦のことで、中国の潜水艦という意味ではない」と話したのも、わざと中国を牽制するためのものかもしれないと、どちらかというと褒めるようなニュアンスで書かれていて、びっくりしました。中国との経済関連拡大(韓国コンテンツ問題、FTA拡大、希土類の安定した供給など)に期待する声は高く、高市早苗総理が台湾代表と会談したこと、トランプ大統領が首脳会談で台湾関連の話をしたこと、などなどはあまり話題になっていません。「そんなことがあった」と黙々と報じるニュースだけです。
中には、「(韓国は中国と友好的な関係作りに成功したのに)日中は首脳会談の後にさらに関係がギクシャクしている」という趣旨の記事まで出ている、今日この頃。高市早苗総理と台湾代表の会談、そして中国側の抗議が話題になっている日本とは、こういう側面が大いに異なると言えるでしょう。今回の空港出迎えの件も、台湾側が公表したのでいくつかのメディアが報じてはいますが、韓国ではあまり話題にはならないでいます。というか、先も書きましたが、台湾関連の案件そのものが、韓国では「関係ないこと」としか認識されていません。出迎えの件「だけ」というより、その土台が垣間見える、そんな案件だとも言えるでしょう。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・台湾が、最近開かれた慶州アジア太平洋経済協力体(APEC)首脳会議と関連して、自国代表の空港儀典が期待したほどでななかったため、韓国外交部に抗議して解決したという後日談が伝えられました。今日(4日)台湾中央通信社(CNA)と中国時報などによると、ツン・ジェンウィアン台湾外交部国際機構局長は前日、APEC首脳会議代表団活動の決算記者会見で、「中国が台湾の国際行事参加を抑圧・縮小しようとする傾向がより強くなっている」とし、「韓国側の空港の出迎えと関連して、いくつかの小さなエピソードがあった」と話しました。局長は台湾代表団の出国直前の先月27日、韓国側の空港出迎えが「期待に合わず、明白な不公正な待遇があることが分かったし、すぐに外交部長(※外相)の指示によって駐韓代表部と国際機構局APECチームが多様な経路で韓国と交渉を行った」と明らかにしました。
彼は「似たような理念を持つ他の国にも、協力を要請した」とし「結局は、このような措置と計画がすべての会員経済体を平等に扱うという原則に合わないという点を韓国に理解させ、韓国も妥協した」と説明しました。彼は、中国が背後で圧力をかけてこのようなことが起こったかどうかは確認できないと明らかにしながら、「私たちが韓国側に大きな圧力を加えたのは確かだ」と話した。これに先立ち1日、CNAは外交情報筋を引用して、韓国がAPEC会議の直前「『台湾と韓国は外交関係がない』というなどの理由で、中央級公務員を空港に派遣しないと通知し、外交部長の指示で韓国に厳正な立場を表明するなど対応に乗り出した」と話した。
台湾のこのような対応により、結局APEC高位管理会議の議長が金海空港に直接出迎えることになった、とCNAは伝えました。APECは国ではなく「経済体」(economy)として参加資格を持つため、通常多国間協議体で使われる「会員国」ではなく「会員」として表現し、台湾も一員として活動しています。台湾は今回のAPECに林信義 元行政院副院長(副首相)を代表として派遣しました(聯合ニュースTV)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。