まだ国会を通過できるかどうか分かりませんが、複数の「共に民主党」(与党)国会議員たちが、外国、外国人などに対する発言や表現などを、刑法で処罰できる法案を発議しました。ソース記事の韓国経済(社説、8日)もそうですが、韓国メディアも主に批判的な記事を多く載せています。まず、これが刑法でなんとかする問題なのかについて指摘しています。記事によると、日本にも似たような法律がありますが、罰則についてはちゃんと規定していない、とのことでして。また、日本、米国に対しても問題になるような表現がいろいろあるのに、与党議員たちが「事例」として明記したものは、中国と北朝鮮に対するものだけでした。
8月、李在明大統領が、中国を相手したデモなどで使われる一部の表現を「表現の自由だとは思えない」と話してから、ずっとこの問題が話題になっていました。前にも引用した、8月14日のイーデイリーの記事によると、「最近、駐韓中国大使館の外で起きている対中国デモについても、中国側は強い反応を見せ、駐韓中国大使館は先月、厳重に抗議するという立場を出した」、「李在明大統領は12日、対中国デモについて、表現の自由とは言い難いと指摘し、関係当局に必要な措置を取るよう指示した」、「駐韓中国大使は当時ソーシャルメディアを通じてこのような動きを歓迎した」、となっています。
今回、こういう流れが、法律という形になるかもしれません。そして、大統領発言から始まったものなら、その適用に問題が生じるのも目に見えています。さすがに処罰などの水位などは(引用部分にあります)、強すぎないかと思いますが、それよりも気になるのは、「ちゃんと世界各国への表現に対し、日米、特に日本に対しても、等しく適用されるのか」です。結果的には「日本には適用されないと判断する」「中国には適用できると判断する」というニュースばかり増えるのではないか、どうしてもそうしか思えません。そもそも、大使館の前に魔神像を置くことこそが最大の「名誉毀損」のはずですが、そんな見方が韓国で認められる可能性はほぼないでしょう。
また、本題とはちょっと外れますが、朝鮮日報(8日)によると、李在明大統領が北朝鮮のミサイル発射について「長らく(発射せず)我慢してくれたようだ」と話すなど、少しずつ本音を出しているようなので、該当部分だけ合わせて引用してみます。朝鮮日報の記事の内容は、主に「米韓安保協議(SCM)の共同声明で、『在韓米軍の規模を現状維持』という内容が消えた、というもので、これはこれで興味深い話です。また、在韓米軍の対象が、既存の「北朝鮮」から、「北朝鮮及び、リスクとなる全ての域内勢力」になったそうです。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・外国、外国国民などの名誉を毀損したり侮辱すれば、最大5年以下の懲役刑に処する刑法改正案を、与党側議員10人が発議した。既存の刑法上、名誉毀損の「反意思不罰」、「親告」の条項を適用しないなどの問題もある。民主国家を支える核心価値である表現の自由、集会・結社の自由に大きな影響を及ぼす過剰立法ではないのか、という批判が避けられないだろう。表現・集会の自由が無条件で認められるものではないにせよ、自由な批判と参加保障のために、国家・国家元首に対する不敬罪を廃止したのが、すでに数十年前のことだ。外国と外国人だからといって、憲法上の国民の核心権を制限してまで彼らだけ保護すべき理由など、見つけるのは難しい。
中国と中国人を過剰保護するという疑問も大きい。法案を発議した議員たちは「特別に中国と中国人だけを意識したものではない」と強調した。だが、法案提案理由書を見てみると、中国と北朝鮮関連の表現を問題にした事例だけが言及されている。日本や米国に対しても同じレベルの表現がずっと前からあったが、突然、中国と北朝鮮だけ問題にしているので、これは疑わしいという反応が多い・・・・処罰水位も、名誉毀損で最大5年など、強すぎる。立法の際にに参考にしたという日本の関連法律の場合、罰則条項を置かずに、国家と地方公共団体に教育活動をすることを要求する程度だ。相手国との外交摩擦を立法事由に挙げたのも、共感出来ない部分だ・・
・・「第2の対北ビラ禁止法」(※とされる法案、安全などを理由にビラを飛ばすことができなくなる内容です)が同時に推進されている点が、さらに心配だ、法制司法委を通過したこの「航空安全法」は、文在寅政権だった頃、表現の自由に反するという理由で違憲判定を受けた「対北ビラ禁止法」と、本質的に変わっていない。主務長官は「理念的な問題が介入しないようにしている」というが、その適用対象が法人・機関・団体などすごく広範囲で、その言葉を信じるのは難しい(韓国経済)・・>>
<<・・米韓軍当局がすぐに発表する予定の韓米安保協議会議(SCM)共同声明から「北朝鮮の核攻撃が金正恩政権の終わりを招くだろう」という内容がなくなったという。この表現は2022年から毎年SCM共同声明に盛り込まれた。共同声明に北朝鮮の非核化などへの言及は残る予定だという。しかし、北朝鮮核脅威の核心原因である金正恩を直接狙ったフレーズが消えるのだ。この変化は、南北首脳会談を望む李在明政権と、金正恩と会ってノーベル平和賞をもらおうとするトランプによる結果だろう。現政権は、金正恩との会談のために米韓連合訓練をはじめ、金正恩が望んでいない訓練を延期した。李大統領は北朝鮮の弾道ミサイル挑発に対しても、「金正恩委員長が非常に長い間よく我慢したようだ」とまで話した。トランプは金正恩を見ると対北朝鮮制裁解除まで取り上げた。北朝鮮を核保有国として認めるような発言もした(朝鮮日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。