例のブラックイーグルズ飛行事態が、さらに広がっています。韓国軍楽隊の自衛隊音楽まつり不参加に続き、会場救助・捜索訓練も中断されることになりました。朝鮮日報(8日)によると、この訓練は、日韓ともに前の政権で、例の哨戒機問題に蓋をするための象徴的な訓練として予定されていたものだ、とのことです。この部分、本当にそうなら、興味深いところです。ただ、韓国政府の反応は、「この件が広く報道されることを望んでいない」スタンスで、まだ「確認してやれる(公式にコメントできる)内容はない」としています。これは与党側も同じで、いつもならこの10倍は騒がしくなっていたのでは、な気もします(笑)。各メディアが結構大きく報じており、日本側から抗議が来たのが日韓首脳会談の頃(詳しく時間までは書かれていませんが)だったという点を強調しています。
全般的に、日本側がわざとそのタイミングにしてきたというニュアンスですが、ブラックイーグルズ隊が問題の飛行が行ったのは10月28日だったとのことです。日付からして、日本としては会談などを意識したのではなく、手続き的にそのタイミングになった可能性も十分にあるでしょう。というか、30日に日韓首脳が会談することは、その数日前からすでに報じられていました。30日じゃなくても、そして日程的に正式会談でなくても、APEC首脳会談期間中に何かの形で両首脳が出会うことはほぼ決まっていました。そんな中、韓国政府が28日にそんな飛行を許可したこと自体が、「会談」という側面からしてずっと大きな問題ではないでしょうか。
ここでまた一つ気になるのは、李在明大統領が就任してから初めて米国を訪問、トランプ大統領と会談したとき、「その前に」日本を訪れたことです。当時、どうしても肯定的に報じようとする両国メディアが「大統領の初めての外国訪問が米国ではなく日本になったのは、日韓関係を重視しているため」と報じました。韓国では「日本では(韓国大統領が米国ではなく日本から来たことで)大騒ぎになっている」などと報じるメディアもありました。この件、表向きには「両国関係重視」「関税交渉についてアドバイスを受けるため」などとされていましたが、その後、トランプ大統領との会談で、トランプ大統領は「日韓関係についての懸念」を話しました。その際、李大統領は「先に日本を訪問し、多くを解決してきた」と話しました。
ちょうど、在韓米軍の役割拡大(「現代化」とかいくつかの表現がありますが、要は対中国戦力としての活用です)について、米韓の間で話がズレていると話題になっていた頃です。今回、韓国政府が明らかに「この件があまり広がることを望まない」スタンスを見せているのも、米国との関係を気にしているのでしょう。ちょうど、米韓のSCM(安保協議)共同声明で、「在韓米軍の規模を維持する」という内容が消えた、というニュースもありますし。前にこの件を取り上げたときにも書きましたが、日本としては「当然の言うべきこと」を言ったまでです。いままで「関係改善」という謎のフレーズにしばられていた「当然の反応」が、これからも続くことを願います。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・(※表向きには両国関係に良い話が出ているが)裏では、韓国空軍の特殊飛行チーム「ブラックイーグルス」をめぐる国防当局間の葛藤が、静かに広がっている・・・・ブラックイーグルスのドバイエアショー参加に必要な中間給油支援に日本側が応じなかったことが発端だ。このため、韓国政府は今月13~15日、東京で開かれる日本の自衛隊音楽まつりに韓国軍楽隊を送らないことにした。今月に予定された韓日共同海上捜索救助訓練も、取り消された・・・・日韓の葛藤は毎年、歴史教科書検定発表(3月)、外交青書発刊(4月)、防衛白書公開(7月)時期などだ。だが、ブラックイーグルス問題は両首脳が「未来志向的協力」を話す中、浮上した。外交当局が予想できなかった変数である。
尹錫悦政権だった2022年~2024年、ブラックイーグルスは海外エアショー参加のために台湾の高雄基地で中間給油をした。外交情報筋は、「当時、中国が我が軍用機の台湾起着に抗議したことがあると聞いている」とし、「現政府は、対中関係改善を望んでいるから、日本が支援してくれないからって、またすぐに台湾に行くこともためらったのではないだろうか」と話した。結局ブラックイーグルスのドバイエアショー参加は事実上できなくなった。
安圭伯 国防部長官は9月訪韓した中谷元 当時日本防衛相と会って両国国防当局間の交流・協力を強化する次元で自衛隊音楽まつりに韓国軍楽隊を送ることにした。 2015年以降、10年ぶりの韓国軍楽隊派遣決定だった。だが、ブラックイーグルス事態が浮上し、韓国軍はこれを保留した・・・・今月中に予定されていた、韓国海軍と日本海上自衛隊の共同海上捜索救助訓練(SAREX)も、無期限延期された。事実上のキャンセルである。この訓練は、昨年7月、申源湜 当時国防長官が、木原稔 当時日本防衛相と東京で両者会談を行い、「国防交流協力」の一環として推進に合意したものだ。 2018年12月、日本哨戒機の低空飛行と韓国海軍の射撃用レーダー照射で発生した、いわゆる「哨戒機葛藤」問題の傷を癒やす意味として、そして日米韓安保協力を強化するための象徴的措置だった(朝鮮日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。