小泉進次郎防衛相が、日本の原子力潜水艦保有の可能性について言及しました。自民・維新連立の合意文書にもあった「次世代動力」潜水艦のこともあるし、いよいよ、日本でも議論が本格化されるでしょう。韓国でも原子力潜水艦関連で話題が続いていますが、その中でもっとも核心とされるのが「国内で建造する」ことです。一つ前のエントリーでも取り上げましたが、一部の報道では「アメリカ側も納得してくれている」としていますが、トランプ大統領が真っ先に言ったのが「米国内で建造する」という内容だったので、これについては韓国メディアでも意見が分かれています。そんな中、13日の週刊東亜(東亜日報の週刊紙)に、安保シンクタンクの専門家が「現実的に、米国で建造したほうがいい」という内容を寄稿しました。韓国では、極めて珍しい内容になります。
日本側のネットではすでに「アメリカは韓国に『売る』つもりだ」という趣旨の話、たとえば建造できるように造船所を改良する費用も韓国側が出す、という話が普通に出ていますが、韓国ではなにがなんでも国内で建造しなければならないという話ばかりで、「それ以外はあってはならない」ということになっています。政府レベルですでに公言が出ていますから。これについても記事は、「米国側が本当に望んでいるのは、米国内造船所への投資費用を韓国が出すことだ」とちゃんと指摘しています。ただ、それでも、現実的に米国でバージニア級原子力潜水艦を建造して、それを購入したほうがいい、とも。読んでいると、「最初からそういう話だったのに、なぜ誰も気づかないのか」という、ちょっとイライラしながら書いた文章ではないのか、そんな気もします。考えすぎかもしれませんけど。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・李在明大統領はトランプ大統領に、「核燃料供給が可能であれば、韓国技術で在来式武装を搭載した(※核兵器は無しの)潜水艦を何隻か建造して、朝鮮半島海域を防御し、米軍の負担を減らす」と提案した。米韓原子力協定改正を通じて米国が濃縮ウラン燃料を供給してくれれば、潜水艦は私たち自ら建造するという意味だ。(※しかし)トランプ大統領は、韓国の原子力潜水艦保有を承認するけど、建造は米国フィラデルフィア造船所で行うという条件を付けた。問題は、現在、フィラデルフィアに原子力潜水艦を造できる造船所がないという点だ。
前には、フィラデルフィアにも中・大型戦闘艦を建造できる米海軍造船所があった。しかし、当該造船所は1995年に閉鎖され、今は米海軍の退役艦艇長期保管桟橋として使用されている。この造船所の敷地のうち、西部の一部を民間会社が賃借し、中・小型商船建造用造船所として使い、返却した。これを最近、韓国企業ハンファが買収したのが、フィリ造船所(Philly Shipyard)である。ところが、ここには商船建造ドック2ヶ所があるだけで、潜水艦を建造できる施設は無い。ホワイトハウスの報道資料によると、ハンファはここに50億ドルを投資し、造船能力を10倍以上育てる計画だ。つまり、トランプ大統領の言葉は、「原子力潜水艦がほしいならね、米国にそのための建造施設から作ってさ、そこで原子力潜水艦を建造してもらってね」という意味だ。
専用ドックと遮蔽設備まで完備された原子力潜水艦建造施設を作るには、膨大な費用がかかる。政府支出を減らそうとするトランプ政権が、そのような費用を負担しようとはしないだろう。このような状況で、韓国が原子力潜水艦を言い出し、トランプ大統領はこれを米国に利益になる機会に変えてしまったのだ。韓国のお金で米国に原子力潜水艦建造施設を建てるわけだから、米国としては望んでもみなかったことであろう・・
・・(※しかし、現実的に米国から作ってもらったほうがいいという話として)一部では、低濃縮ウラン(LEU)を燃料とする「韓国型潜水艦」を独自設計し、フィリ造船所で建造する方案も取り上げられる。しかし、これは費用・時間の面で非効率的というのが筆者の見解だ。そのような核潜水艦を開発するには、LEUを使う潜水艦用原子炉を新たに開発しなければならないからだ。さらに、米国がフィリ造船所に米海軍用の原子力潜水艦を優先するように圧迫する可能性も見過ごすことができない。フィリ造船所で異なる規格の潜水艦を建造するには、ドックと作業場を別々に作らなければならない。韓国型潜水艦を作るためには、「既成品」であるバージニア級とは異なり、完全に新たに開発した潜水艦になる。進水した後も、各種試験や評価に多くの時間とお金が入る。それだけ戦力化は遅れるしかない。
文在寅政権だった頃、筆者(※シンクタンク「自主国防ネットワーク」のイ・イルウ局長)は海軍と共に原子力潜水艦の研究事業を行ったことがある。同研究で、「既存の潜水艦で北朝鮮潜水艦1隻を常時監視・追跡するには、10隻を専担戦力としてつけなければならない」というシミュレーション結果が出たことがある。当時、潜水艦の価格は4500億ウォンと計算された。数年前の基準であってもディーゼル・電気推進潜水艦に4兆5000億ウォンを使わないと、北朝鮮戦略潜水艦1隻のリスクに適切に備えられないという話だ。韓国に原子力潜水艦が必要な理由だ(週刊東亜)・・>>
最後の部分ですが、日本の場合はどうなっているのでしょうか。直接的な衝突ではないにせよ、通常の任務としても、中国、北朝鮮、韓国など周辺国の潜水艦戦力に対応するには、いまどんな状況になっているのか、気になります。なんでもかんでも公開できるはずはないでしょうけど、原子力潜水艦の導入のことと一緒に論じられるべき部分かもしれません。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。