韓国関連ニュースで何かをピックアップするにも、昨日とまったく同じ内容になってしまいそうです。韓国では「李在明大統領は中国をうまく管理できているのに、高市早苗総理はそうではない」という内容が定説となっていて、それ以外は認められない雰囲気になっているので、なおさらです。似たような流れとして、尹錫悦政権の初期、「完全に米国の方に舵をきった」「中国との関係に気をつけないと」という認識でした。しかし、だからといって中国との関係において何か大きな批判が出ていたわけでもなく、「すごいすごい」という称賛がほとんどでした。バイデン大統領が日本より先に韓国を訪問したので、そういう流れになったとも言えるでしょう。
今回は政権が変わったので、それに合わせて「李在明政権は実用外交だ」「米国とも中国ともうまく行っている」という内容に変わったわけです。多分、次もなにかに合わせて変わるでしょう。「そういう意見」以外は、報じられてもほとんど話題にならず、すぐ消えてしまいます。たとえば原子力潜水艦関連でもそうです。中国官営メディアが強い懸念を記事にしていますが、「大丈夫だろう」という認識しかありません。ダリル・カードル米海軍参謀総長が韓国を訪問し、「原子力潜水艦は対中戦力になるのが当然だと思う」「台湾有事の際には韓国にも一定の役割が与えられる」と話したことは17日にも紹介しましたが、それについても「あ、そ」的な反応しかありません。ちなみに、ダリル・カードル参謀総長は高市早苗総理の台湾発言について「そこまで驚く発言ではない」とも話しましたが、こちらもまったく話題になっていません。
そんな雰囲気なので、当然と言えば当然ですが、台湾の有事の際、「なぜ」それが韓国に影響があるのかがまったく報じられていません。これは日本でも同じで、「なぜ」それが国家としての存立危機事態になるのかについての説明がほとんど出ていません。そこで、2024年のものではありますが、聯合ニュース(2024年1月10日)の「台湾有事の際、『なぜ』韓国にも影響があるのか」という記事をもう一度ピックアップしてみました。有事の際といってもそのレベルがどうなるのかは誰にもわかりませんし、どの側面をどう測るのかでデータも変わってくるだろうとは思いますが、こちらは予想されるGDPの減少についての話になります。高市総理が仮定した状況に比べると、まだ弱いレベルの仮定ではないだろうか、そんな気もします。元ソースはブルームバーグの研究機関です。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・経済研究機関であるブルームバーグ・エコノミックスは、台湾で起こり得る地政学的リスクと関連して、武力衝突が勃発した場合と、中国が台湾封鎖に出た場合など、2つのシナリオに分け、それによる経済的影響をを分析した。ブルームバーグ通信が9日(現地時間、※2024年1月)報道した内容によると、台湾の有事の際、米国がこれに介入するシナリオにおいて、台湾のGDPの40%が減少するだろうとブルームバーグは推算した。その中でも注目を集めているのは、韓国が受ける経済的な影響が、日本など他国に比べても大きいという点だ。
ブルームバーグ通信は、韓国の場合はGDPが23.3%減少するだろうと推定した。その反面、日本は13.5%減少すると分析した。韓国の場合、中国(16.7%)よりも経済的衝撃が大きかった。昨年(※2023年)1月9日、米国シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)が台湾の有事の際を仮定して公開した具体的なシミュレーション報告書が想起される・・・・その報告書は、「駐韓米軍の4つの飛行隊隊のうち2つの大隊が借り出され、たたかいに参加するだろう」と予想した。韓国の意思とは関係なく、在韓米軍が介入するだろうという観測だ・・
・・また、中国が台湾包囲のために大規模海軍を動員する場合、米軍が中国大陸・台湾に近い韓国のオサン空軍基地とグンサン空軍基地、さらにはジェジュ海軍基地を活用する可能性も取り上げた。駐韓米軍が台湾有事の際に投入される場合、中国も動く可能性がある。このようになれば、中韓の間で武力衝突になる可能性を内包しているという点で、衝撃がさらに大きいと分析される。CSIS報告書は、世界は密接につながっているため、台湾での有事の際には、世界経済が完全に台無しにされるだろうと予想した(聯合ニュース、2024年1月10日)・・>>
記事(聯合ニュース)を読んでみると、「なんで韓国のほうがマイナスが大きいのか」という驚きと、そして、「私たちには(台湾の有事の際にも)介入する意思などない」という本音見えてきます。高市総理の今回の発言について、私は「誰かが1回は言っておくべきだった」(言い換えれば、言うべきことだったのに誰も言ってなかった)と思っています。すでにトランプ大統領も台湾の有事の際に米国がどんなことをするのかについて言及していたし、今回も結構強い発言が出たので、タイミングという問題もあったかもしれません。次の選挙で米政権がどうなるか分からないし。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。