さて、高市総理の台湾関連発言のこともあって、韓国メディアの関連記事も大幅に増えています。もちろん、そのほぼ全ては、「楽しんでいる」ニュアンスのもので、「中国の意思にさからうなんて何でそんなおろかなことをするのか」という世論があってこその現象でありましょう。この話だけでもありませんが、北朝鮮など国際情勢関連の案件では、いつも、「右側の人たちは考えが異なる」という話も出てきます。それはもちろん、左側の人たちに比べると、日米と同じ見解を述べる人の「割合」が高いのは間違いありません。しかし、日韓関係についてのすべてがそうであるように、この件もまた、「やり方や言い方が異なるだけで、根幹の考え方は同じ」ということを忘れてはならないでしょう。
国際情勢関連だと、日韓関係よりは「普通(日本から見ての普通)」の意見も多いほうではありますが、それでも「在韓米軍の役割拡大」、いわゆる現代化の話になると、そうでもありません。今日は、その一例として、保守とされる東亜日報(18日)の社説を一つ紹介します。韓国の左側の人たちが保守メディアのことをジョジュンドンとよく言いますが、朝鮮日報、中央日報、東亜日報のことです。もちろんこういうのは「書く人」によって異なるものですが、社説となると、そうでもないでしょう。在韓米軍司令官が「韓国は、北朝鮮だけでなく中国、ロシア牽制の中心軸だ」と話したこに対するもので、「『朝鮮半島、中露牽制の中心軸』・・米国の発進基地になるわけにはいかない」という題の記事です。
本文では「緊密な協議なしにこんな話(司令官の発言)が出てくるとはどういうことだ」としていますが、題で分かるように、米戦力が韓国から発進する(韓国が中露関連の有事の際に関わる)ことがあってはいけない、という意味です。「~な状況にならないように最大限努力する」レベルの書き方なら、別の読み方もできるでしょうけど。例のブラックイーグルズ関連だけでなく、高市政権の動きや台湾発言を「普通の国になろうとする策」「日韓、日米韓安保協力にとって良いことはなにもない」などと主張している韓国ですが、結局はこんなスタンスであるわけです。16日、韓国の安保専門家の寄稿記事として「トランプ大統領は米韓同盟という言葉を、高市総理は日米韓3角同盟(安保協力)という言葉を使わなくなった」という指摘を紹介したことがありますが・・「確かに、そうもなるだろうな」と思える、そんなスタンスです。以下、<<~>>で引用してみます。
<< ・・ザビエル・ブランソン在韓米軍司令官駐韓米軍司令官が、17日上下を逆にして描いた東アジア地図を公開し、韓国が北朝鮮だけでなく中国、ロシアのリスクを抑制するための戦略的中心軸だと明らかにした。これまで北朝鮮の防衛に当たっていた在韓米軍の核心的な役割が、中ロを軍事的に圧迫する方向に変わっていると明らかにしたのだ。実際、ブランソン司令官は在韓米軍が黄海で中国の陸・海・空軍、日本海でロシア艦隊を牽制できるという具体的な案まで言及した。この発言は、米韓首脳会談の結果を盛り込んだファクト・シートに「米韓両国がすべての域内のリスクに対する米国の抑制態勢を強化する」と明示してから、3日後に出てきた。
米国は、軍事戦略の最優先目標を中国抑制に置く新しい国家防衛戦略(NDS)、全世界米軍をどこに配置するかを決定するグローバル態勢報告書(GPR)発表を控えている。これにより、在韓米軍の戦略的柔軟さを拡大するにおいて、韓国も協力すべきだとする米国の要求がさらに強くなる可能性があることを、予告したわけだ。さらにブランソン司令官は、「北京の観点から見ると、在韓米軍のオサン空軍基地は遠距離のリスクではなく、中国に直ちに影響を与える隣接するリスクである」とした。
台湾の有事の際などにおいて、米国が必要とするときに中国を直接ねらった発進基地として、朝鮮半島を活用できるという意味にほかならない。韓国が米中の軍事的衝突に巻き込まれる可能性のある重大な状況を、在韓米軍司令官がさり気なく言及したことは、憂慮せざるを得ない。
もちろん、在韓米軍を指揮する彼が全世界米軍の再配置を控え、在韓米軍の縮小を防ぐために戦略的重要性を強調したのかもしれない。しかし、いずれにせよ、私たちの安全保障に直接影響を与える問題は、米韓の間での緊密な事前協議が必要である。このような過程なしに韓国が中国の潜在的攻撃標的とされる危険を甘受することがあってはならない(東亜日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。