日本語記事も出ているのでちょっとどうしようかと思いましたが、今日はブルームバーグのオピニオン(コラム、論評など)を一つ取り上げてみます。「やり過ぎた中国、高市首相の政策遂行手助け」という題です。英語圏のメディアは、今回の日中対立を「両方に非がある」というニュアンスで書いているけど、明らかに敵意は中国から来ているだけで、逆に高市政権を支持率などの側面で助けることになるだろう、という内容です。X(旧ツイッター)での、中国外務省をおもちゃにしている風潮についても言及されています。「日本は慣れている」とも。韓国ではビジネスポストというメディアが報じていますが(19日)、他にはこれといってヒットしません。
米海軍参謀総長の「高市総理の台湾発言はそこまで驚くことではない」という発言もそうですが、なんか、「高市政権のミス」「日本がものすごく困っている」という論調以外のものは、あまり報じられない風潮があるのは、これこそそう驚くことでもありません。私の検索が下手なだけかもしれませんけど。オリジナルはブルームバーグの会員記事で、「中国のやりすぎな対応は、高市政権を早期の勝利に導くだろう(China’s Overreach is Handling Takaichi an Early-Win)」という題です。はてさて、どんな内容なのか、ちょっとまとめてみます。
まずコラムは、台湾発言による今回の騒ぎは、高市総理が望んでいたものではないし、それに関する世論も分かれているけど、明らかにオーバーな中国の対応は、高市政権政権を支持する結果になるだろうとしています。「台湾に関する高市氏の発言を受けた中国側の対応ほど、国内世論を結束させる要因はない」、と。もとから支持率が高かったけど、今回の件でさらに支持率が上がっているし、北朝鮮のミサイル発射と同じで日本の世論はもう「慣れていて」、前のような大きな衝撃を受けたわけではない、と。また、石破政権で「融和攻勢」をしてきた中国だっただけに、日本は「中国との関係が、どれだけうつろいやすい関係なのか」を改めて感じ取っている、とも。こういうのこそ、世論形成に大きい影響を及ぼすと私は思っています。
なにかあったときに、普通なら「なにがあったのだろう」という世論が大きくなりますが、何度も同じ「揺れ」があると、「またかよ」と思うようになります。この「またかよ」というものの影響力はかなり大きいものですから。これは日韓関係でも同じことが言えます。ちなみに、本文には、「日本国内のネット上では中国外務省をやゆする投稿が相次ぎ、(※中国の)攻撃的な表現をちゃかす動きも出ている」としています。このくだりが、「慣れているから」という流れで出てきたのは面白い書き方です。「こういう中国の『やりすぎ』対応は、高市政権を助けることになるだろう」という中心部分ですが、ここはちょっと<<~>>で引用してみます。
<<・・英語圏メディアでは「言葉の応酬」や「対立エスカレート」といった見出しで日中双方に非があるかのように描かれることが多い。しかし、示されている敵意は圧倒的に一方的なものであり、その結果、高市氏は「急進的」「超保守的」としばしば批判されてきた印象が薄れ、むしろ穏健で現実的な政治家として映り始めている。高市氏の発言はアドリブだった可能性もあるが、誰もが暗黙のうちに理解していた現実、すなわち、中国が台湾に軍事介入した場合、日本も必然的に巻き込まれ得るという前提をはっきりと述べたに過ぎない。
また、中国政府が自国民に日本への渡航自粛を呼びかけたものの、治安の良さで知られる日本で中国人旅行者や留学生が危険にさらされると考える人はほとんどいない。むしろ昨年、中国で日本人が襲撃される事件が相次いだことを思えば、眉をひそめるしかない侮辱を交えた暴力的な脅しほど、保守的なリーダーを現実的で頼れる存在に見せるものはない・・・・強硬姿勢を取ったことで、中国は自ら軟着陸する余地をほぼ失った。結果的に、高市政権の立ち位置を明確にする手助けをすることになるのかもしれない。(ブルームバーグ)・・>>
観光などの問題も、コラムでは、そこまで懸念する問題ではないとしています。すでに日本ではオーバーツーリズムが問題になっていたし、安倍元総理のときも似たようなことがあったけど、その数カ月後には訪日中国人観光客は増加に転じた、などが理由です。コラムでは、日本の安保強化においての非核三原則見直しなどについて、政権がそれを推進できるチャンスだとしながら、「核保有国の中国が脅迫的な言葉を投げかけている今こそ、日本の核政策を巡る議論を始める好機とも言える」と指摘しています。たしかに、それはそのとおりです。「今回の日中摩擦は日米関係を一層緊密にし、米国のグラス駐日大使は日本防衛への米国の揺るぎない関与を力強く再確認した」、とも。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。