「関係改善オンリー」の時代が終わるのか、終わったのか、そんなことを綴ったばかりですが・・それと似たような流れとして、今回の日中対立のことで、「日中韓FTA議論」がパタッと止まりました。これもまた、個人的によかったと思っています。日本で「日中韓FTAうわあぁぁ」とか言うと、「きゅ、急に何を言い出すんですか」な展開になりそうですが、韓国ではかなり盛り上がっていました。本ブログでも紹介しましたが、多くのメディアが「日韓または日中韓で」経済圏を合わせるとか、日韓経済共同体だとか、石破茂総理のときにこんな話が急に盛り上がっていました。
韓国側が日本との経済共同なんとかを言い出すことは、主に「中韓の経済圏に日本をまきこむ」ことでしかありません。この考え方がもっともわかりやすく出てきたのが、文在明政権の、南北鉄道連結のときでした。南北連結といっても、結局は中国の経済圏ともっとつながるという意味でしかありません。日韓海底トンネルなども結局は同じ話で、「中韓の経済圏に、日本をまきこむ」ことを前提にしており、その多くは「実は日本もそれを望んでいる」という考えに基づいています。なんというか、朝鮮時代の某思想にそっくりな気もします。「そういう考え方」がまた強くなった理由は、主に2つです。一つは、トランプ関税で米国への信頼が大きく揺れていたこと。
そしてもう一つは、岸田文雄政権で日中韓首脳会談(当時は韓国開催で、予定通りなら次は日本開催です)が再開されたことです。そしてその次の石破さんが総理になると、この動きはさらに盛り上がりました。そして、高市早苗さんが総理になってからは、この流れが途切れることを恐れたのか、韓国もそうですが特に中国が「日中韓FTA」を強調するようになりました。例えば11月2日ソウル経済の報道によると、中国の商務部長官は11月になってからもこの件を強調していました。まずここを<<~>>で引用してみます。
<<・・中国の王文濤商務部長は、「両国経済貿易関係の新たな発展を推進したい」とし、韓国と中国間のサプライチェーン安定化と日中韓自由貿易協定(FTA)の早急な推進を要請した。2日、中国商務部はこのような内容が盛り込まれた声明を発表した。前日、王長官は慶州で金正官 産業通商部長官と会い、サプライチェーンと貿易に関する意見を交換した。王長官は、「自由貿易と多国間主義を共同で守護しなければならない」とし、日中韓自由貿易協定の早急な再開を促した。金長官はこれに対して「中韓自由貿易協定2段階交渉を加速し、両国間の貿易投資及び地域、多者協力を継続的に深化したい」と述べたと中国側は伝えた(ソウル経済)・・>>、と。
ちなみに韓国はいまの中国とFTAを結んでいますが、FTAにしては範囲や効果が弱い方だそうで、すでに尹錫悦大統領の頃から「さらなる中国とのFTA拡大」を公式に要請しています。引用部分の「2段階交渉」というが、それです。そんなところですが、次の日中韓首脳会談の開催地が日本ということで、いまの雰囲気のままだと、まず中国側が応じることはないでしょう。朝鮮日報(22日)によると、すでに今年の日中韓首脳会談は難しくなっていて、来年も2月には中国の春節連休、3月には両会(全人代など)があるため、しばらくは難しくなった、とのことでして。個人的に、よかったじゃないの、と思っています。ちなみに、なぜでしょうか。日中対立の話が盛り上がってから、例の「日韓経済共同体」(など)の主張も一気に無くなりました(笑)。以下、朝鮮日報の記事を引用してみます。
<<・・22日、共同通信などが報じた外交情報筋の話によると、議長国の日本は当初、年内開催が難しいと判断し、来年1月に3国首脳会議を開く方案を韓国と中国に非公式に打診した。しかし、中国は外交チャネルを通じて「高市首相が(台湾問題に)適切に対応していないため、首脳会議に応えられない」という立場を伝えたことが確認された・・・・中国の不満は、単純な外交的修辞を超えて、実質的な措置につながっている。中国政府は高市首相の発言以後、自国民に日本訪問の自制を勧告する一方、日本産水産物の輸入手続きを中断した。
また、来る24日、日本で開かれる予定だった日中韓文化大臣会議についても、韓国側に暫定延期を通報するなど3国間実務協議さえ遮っている。日本政府は、来年2月以降に時期を調整してでも推進する方針だが、見通しは明るくない。2月には中国の春節があり、3月には中国最大の政治行事である両会(全国人民代表大会・全国人民政治交渉会議)が予定されており、一定の調律が物理的に容易ではないからだ。韓中日首脳会議は昨年5月、ソウルで開かれた第9次会議が最後だった。もし次期会議が成立すれば、李在明大統領と李強 中国国務院首相、高市首相が会うことになるが、現在としては、具体的な時期を約束することが難しくなった(朝鮮日報)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。