韓国メディア「日中対立は、国ではなく『陣営』の対立だ。だからどちらかに偏ってはならない」

昨日あたりから、複数の韓国メディアに「それは日本に対するもの『だけ』ではなく、韓国に対する警告でもある」という専門家の見解が載るようになりました。ハンギョレ新聞(23日)、国民日報などなどです。いままでは、信じられないほど、この手の意見は記事になりませんでした。少なくとも対外的に示されている立場的に、それは当然の見解であり、韓国も「状況の一部」であること。すなわち高市早苗首相の台湾関連発言と、それに対する中国の反応は、韓国にとっても決して無関係なものではありません。よって、これは日本と中国という「国と国」の問題ではなく、「側(陣営)」の問題であります。当たり前のことでしょう。こういう側面について、本当に不思議なほど、いままで韓国メディアには何の見解も載りませんでした。

で、その当たり前の見解がやっと載るようになったわけですが・・それでも、今回いくつかのメディアに載った見解も、結論は「だから、なおさらどちらかに偏ってはならない」というものです。ほぼ同じタイミングで、時事通信社の記事に米国のシンクタンク「ハドソン研究所」のケネス・ワインスタイン日本部長のインタビューが載りましたが、彼は中国の意図を、「日本を中立国化させること」だとしています。記事はこれを「中立政策といっても、実は大国の圧力によるもの」としています。首相が譲歩する必要はない、とも。




この中立化という言葉、李在明政権、いやもっと前からあった、「実用外交」と同じではないでしょうか。前にも書いたことがありますが、実は盧武鉉大統領の頃に「均衡実用政策(外交)」というものがあって、均衡の部分が強調するようになって「バランサー」「バランス外交」などと呼ばれるようになりました。今回の李在明政権の実用外交も、結局は同じもので、既存のバランスから「移動」しての新しいバランスを意味するものでしかありません。いまのところ、まだそこまではっきりと表れているわけではありませんが、「中立」「バランス」といえばなにかとても良いものらしく見えますが、実は「既存の基準点(バランス)から別の基準点(バランス)に移動し、それをニュー・ノーマルとして維持する」ことでしかありません。

すなわち、韓国が中立やバランス、実用を叫べば叫ぶほど、それは日米から離れるということを意味します。この場合、中国からすると、「中立」や「バランス」は、勝利を意味します。圧力であれ、自発的なものであれ、これはケネス・ワインスタイン日本部長が言う「中立」と意味が通じるものではないでしょうか。以下、ハンギョレ新聞から<<~>>で引用してみます。

 




<<・・(※日中対立と、その影響で日中韓関連の会談やイベントなどもキャンセルされていることについて述べた後に)問題は、両国の葛藤が、米中対立と相まって、米国とロシアまで加わった「陣営」葛藤の構図に拡散する兆しを見せているという点だ。マリヤ・ジャハロバ ロシア外交部のスポークスマンは18日、「ロシアは台湾をはじめとする主権・領土問題で中国を継続的に支持する」とコメントした後、その翌日、ジョージ・グラス駐日米国大使は中国の日本産水産物輸入の中断を「中国の典型的な経済的強圧」と非難した。国連駐在中国大使は21日、アントニウ・グテフス国連事務総長に高市首相の発言が不適切だったという書簡を送り、国際外交舞台で日本に対する世論戦を拡大している。

パク・ビョンクァン国家安保戦略研究院首席研究委員は、「2010年尖閣列島をめぐる日中対立の時と比べると、今は米中対立がはるかに深化しており、東アジアでの葛藤が発生するたびに陣営化の様相が現れている」とし「米国が日本の肩を持つ構図を、もっとはっきり示すものだ」と分析した。特に米国は最近、上級官僚たちの口を通じて「韓国の原子力潜水艦の建造は『中国』対応のためのもの」と話し、韓国の対中牽制への参加を圧迫している。「実用外交」を前面に出して、中国との関係回復に功を奏している政府にも、負担になるしかない状況だ。

イ・サンマン慶南大極東問題研究所教授は、「米国の立場では、日米韓三角構造の強化をさらに圧迫するだろう」としながらも「(韓国政府はこれに対して)揺れてはならない」と話した。彼は「中国も日本との関係がここまで冷たくなった状況で、私たちまで攻撃するには負担があるだろう」とし「『国際法の秩序を尊重する』という原則の下、事案によって国益を中心に判断すればよい」と話した(ハンギョレ新聞)・・>>

先も書きましたが、「これは国と国の問題『だけ』ではない」というところまでは確かにそうですが、その結論が 「だからこそ、かかわらないようにしよう」という趣旨になるとは、いろんな意味で「さすがだ」としか言いようがありません。この件に対する韓国政府の反応は、これからの「日米韓安保協力」という概念に、大きな影響を及ぼすのではないか、そんな気もします。

 




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
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