今まで引用した記事も、今回引用する記事もそうですが、韓国では今回の日中対立について「喜んでいる」反応が圧倒的で、問題の原因も高市早苗首相にあるとされています。数日前からは、在韓米軍のいわゆる「ブランソン地図(イーストアップ地図)」の件もあって、やっと「国と国の問題ではなく、『陣営』の問題」という記事も増えましたが、それらも「だから、どちらの肩を持ってもいけない」とするものでした。趙顕 外交部長官も公開的に「日中両方と協力していく」という曖昧なことを話しましたし、もう完全に政府レベルの政策と見ていいでしょう。韓国内で今回の件で日本・台湾寄りの発言(韓国も陣営の一員であるという趣旨)を話したのは、駐韓米国大使代理のケビン・キム氏だけです。
ネットのコメントなどでは、中国人観光客が韓国に向かうことについて「やめてくれ」という主張も結構目立ちますが(笑)。そんな中、京郷新聞(26日)がまた同じ趣旨の記事を載せました。「日本も中国も実はウィンウィン状態(今回の件でお互いに支持率を管理できる)」としながら、韓国がどちらかの味方をする必要はないと主張しました。高市首相の場合はもともと支持率が高かったし、野党のしつこい質問に答える形で出てきた発言だったので、すでにこの時点で分析が合ってないと言えるでしょう。
例の陣営問題についても、記事は、来年に日本が李在明大統領を招待する可能性があるけど、その際にどうすればいいのか(記事の趣旨的には、行かないほうがいいという論調)、日米韓協力についてもこれからどんどん負担が増えるなど、いわゆる「どちらかを選べ」という選択を要求された場合、どうするのか?の答えとして、どちらの肩も持たないことだ、としています。この場合、「選択を要求されたときにどうするのか」の答えを「選択しない」にするのは、最初から答えになってない気もしますが。
24日に紹介しましたが、米国のシンクタンク「ハドソン研究所」のケネス・ワインスタイン日本部長は中国の意図について、「日本を中立国化させることだ」と表現しています。中立といえば客観的で冷静な対応をしているように見えるけど、実は「大国の圧力によるもの」にすぎない、と。そして、これこそが中国が望む国の姿である、というわけです。だからこそ高市首相が譲歩する必要はない、とも。最近の韓国側の世論を見ていると、彼らが望む「中立」というものが、まさにこれではないでしょうか。特に韓国の場合は、その立場的に、「中立」はすなわち「既存の立ち位置から中国側へ近づく」ものでしかありません。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・高市首相が執権序盤の内部支持基盤を固めるのにも(※今回の日中対立は)役立っているようです。日中葛藤が盛り上がっている中にも高市首相の支持率は高く維持されています。読売新聞によると21~23日高市内閣支持率は72%と集計されました。日中の紛争が起きる前の先月21~22日に実施した世論調査より1%ポイント上がったのです。中国が強硬な外交を続ける理由も、イ・ドンギュ牙山政策研究院研究委員が分析した報告書によると、新型コロナ責任論回避、中国体制優越性の誇示、大国としてのイメージ構築、中国内世論に対する支持誘導などの意図が隠れています。日本が中国を叩いて国内支持層を結束させているように、中国も日本を叩いて同様の効果を得ているのです。
葛藤の原因提供者である高市首相が発言を撤回し、遺憾を表明することが事態収拾の近道でしょう。しかし、「強い日本」を望む世論が高市首相を積極的に支持しているので、その可能性は低いと見えます。中国としても、内部結束に役立つので、日中退率は長期化されるだろう、という分析が多い方です。日本が来年1月に自国で開催しようとする日中韓首脳会議も中国の不参加宣言で事実上できなくなりました。韓国には得になることでしょうか。一部では、、日中対立の中で韓国が反射利益を得るという見通しもあります。日本旅行の自制令によって中国人韓国観光客が増加し、中国が竹島問題などで韓国を支援することなどを言うのですが。ただ、北東アジアの緊張状況から、韓国を巻き込み、どちらかを選べと要求される可能性も一緒に取り上げられています。
日本はすぐに来年初めに李在明大統領を招待する可能性が取り上げられています。韓国では中国の顔色が気になる状況です。中国は日米韓軍事協力にさらに反応する可能性が大きいです。この他にも、中国が希土類輸出関連措で日本素材・装備業者に措置を下せば、これに関連した韓国企業も連鎖的に影響を受けることになります。それなら、韓国はどんな立場を取らなければならないでしょうか。専門家は、どちらの肩も持たず、国益中心のバランス外交で行かなければならないと助言します。ファン・ジェホ韓国外大教授は「日中対立は段階的に『強 対 強』対立局面に向かっている」とし「尖閣列島領有権のときは領土問題に限定されたが、今は米中戦略競争の代理戦のような様相という点でさらに深刻だ」と話した。それとともに「基本的に、どちらかの立場に対する支持を表明せず、経済多国主義などの話をして、問題になるようなことは言及しない戦略をしなければならない」と話しました(京郷新聞)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。