大統領選挙の頃の「公約」段階からそうですが、李在明政権は再生エネルギーメインを掲げています。大統領になった直後には原発も推進すると言ってましたが、UAE、チェコ関連の原発が問題になってから(技術的な問題、累積赤字になっていることなど)、また再生エネルギー政策を出すようになりました。今は、原発によるエネルギーを「柔軟性電源として利用」するとしていますが(8日、朝鮮BIZ)、これは再生エネルギーをメインで使い、もし足りない部分があれば(再生エネルギーの場合、得られる電力の予想が難しいので)原発エネルギーも使う、すなわち補助的に使う、という意味です。
この点について、単に電気料金が上がるかもしれないという素朴な意見もあれば、日本を含め世界的に、「再生エネルギーって、考えていたようにはいかないものですね」という認識が広がっていることを指摘する声もあります。また、韓国ってそんなに各種再生エネルギーに向いている自然環境なのか、というのも疑問です。そしてもう一つ、これが本題になりますが、エネルギー安保です。ほぼすべての部品・技術が中国から来ているのに、本当に大丈夫なのか、という指摘です。ちょうどクッキーニュースが関連記事(8日)を載せましたが、たとえばソーラーセル(光エネルギーを直接電気エネルギーに変換する部品)の場合、2019年には国産部品シェアが50%もあったのに、いまは4.9%まで下がり、95.1%は中国製、とのことでして。
個人的に、これって、「分かっていて」、または「だからこそ」やるという、そんな流れもあるのではないか、そんな気もします。2021年8月5日ソウル経済などの報道によると(本ブログで紹介したのは2021年8月12日)、「中露(北朝鮮経由)から韓国へエネルギー(電気)を繋げる」というのは、文在明政権でも企画がありました。以下、<<~>>が引用部分です。
<<・・大統領直属カーボンニュートラル委員会は、2050年のカーボン・ニュートラルを達成するためのシナリオ1案・2案に、「北東亜グリッド(Grid・電力網)」を盛り込んだ。具体的な国名までは公開しなかったが、中国とロシアに送電網を設置し、国内まで電力を引いてくる案を構想していることが分かった・・・・ドイツ、デンマークなど欧州諸国は、近隣諸国との「スーパーグリッド」を構築し、常時電気を供給している。文在寅大統領も2017年、の第3次東方経済フォーラム(※Eastern Economic Forum)で、中国・ロシアなどと「北東アジアグリッド」の構築を提案している。問題は、ドイツなどのヨーロッパ諸国と韓国の地政学的条件があまりにも違う点だ。それに、中国・ロシアから電気を引いてくるためには、海の上に迂回する電力網を作らない限り、北朝鮮を経由して電力を供給しなければならない(ソウル経済、2021年8月5日)・・>>
個人的に、このような「(北朝鮮を含めた)中露側とのエネルギー共同体」を夢見ているのが文大統領だけではないと見ています。これは、「バランス移動」(日米陣営から離れた地点でのバランス)のためにも必要な措置ですから。前のように直接電力をもらうのではなく、「部品・技術的に依存している」からこその、「エネルギー」という名の安保バランス移動ではないのか、と。以下、朝鮮BIZとクッキーニュースを続けて引用してみます。
<<・・政府が、原子力発電を「柔軟性電源」に切り替える準備をしていると公開的に明らかにし、電力供給構造にまた別の変化が予告されている。柔軟性電源は、電力の需要と供給の変化に応じて、必要に応じて発電量(出力)を簡単かつ迅速に変化させることができる電力源のことだ。このような政策の背景には、石炭火力発電の退出と再生エネルギーの拡大がある。問題は電気料金である。再生エネルギーなど相対的に発電単価が高い電力をまず購入し、安価な原子力で作った電力を柔軟性電源として活用する場合、電気料金を上げなければならない可能性が高い。自然に韓国電力の収益性にも影響を与えるしかない(朝鮮BIZ)・・>>
<<・・太陽光・風力産業は中国中心のシステム構成になっている。パネルを作る核心部品である太陽光セルの国産シェアは2019年50.3%から今年4.9%に急落した一方、中国産は38.3%から95.1%まで上昇した。風力発電機用の主要部品であるチェーン・ホイールは最近5年間で99.9%が中国産であり、電動機・発電機用部品も中国産の比重が84.6%に達した。問題は「部品シェア」だけではない。中国企業がグローバル市場で自社技術規格を事実上国際標準にしていく「ルールをセッティングする」段階に進入し、国内企業の進入のハードルが構造的に高くなっているいる。
その間、国内R&Dはむしろ後退した。太陽光核心技術であるタンデム電池予算は341億(2022年)→238億(2025年)に30%削減され、全体太陽光R&D予算も半分近く減った。部品国産化の基準となる「KS認証(※韓国の品質認証マーク)」さえ、実効性がさがっている。中国産の「半製品」を、国内で少量だけ組み立てただけでも、「国産認証」を受けることができるため、中国から「送ってもらう」慣行が産業全般を歪曲している(クッキーニュース、記事は各産業別に中国依存が高すぎるというものですが、再生エネルギー関連部分だけ引用してみます)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。