本ブログでも取り上げたことがありますが、数日前、トランプ大統領は台湾保証実行法に署名しました。でも、この件、韓国では一応多くの記事が出たものの、一瞬で話題にならなくなりました。日中対立の中、米国は台湾問題を重視していないという設定に合わないから、でしょうか。ほぼ同じ流れとして、もう一つ、米国のNSS(国家安全保障戦略)です。米国は新しいNSSに、台湾防御に関する内容を主要目標としており、ロイターによると、中国側はまたもや「台湾はレッドラインだ」と声明を出しました。この件、韓国メディアはいつものように「私たちは台湾問題に介入してはならない」としていますが、いわゆる在韓米軍の現代化(役割拡大)も、この件の中に含まれていると見ていいでしょう。
そんな中、韓国で「経済(金融)と安保は別々ではない」、「私たちの金融はまだ井の中の蛙である」とする記事がありました。ソウル経済(9日)です。この部分だけだと、「おお、在韓米軍役割拡大などに同調しようという趣旨の記事か」と思われます・・し、実際、中盤あたりまではそんな話ですが・・結論が、かなり意外なものでした。普通、「安保と経済・金融が別々でないなら、米国を中心としたインド太平洋戦略にもっと参加しよう」、そんな話になるはずですが、記事は、「もう米国は守ってくれないから、経済成長して自主国防しよう」としています(ドッカーン)。国民所得5万ドル行こう、それで自主国防もできる、などなど。
本ブログも、「韓国は経済規模に比べて金融は弱すぎる」とか、「『経済安保』を、経済と安保を並べて書いただけのものとしか思っていない」と書いてきたし、この部分についてはソース記事も同じですが・・なんでそこで「自主国防しよう!」という話になるのか。「米国のインド太平洋戦略に積極的に参加することで安保同盟としての側面を強化し、それで経済的な繋がりも強くなる」という結論にならないのか。書かないのか、書けないのか。よくわかりません。そんなに「在韓米軍の役割拡大」に応じたくないのでしょうか。もしそうなら、それこそ経済と安保を別々に考えていることではないでしょうか。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・(※米国経済リセッション予想などがあったが)むしろ難しいのは韓国だ。韓国銀行は今年から2027年まで3年連続1%台の成長にとどまると見込んだ。李在明政権が30兆ウォン規模の追加経済予算を通じて、「民生回復消費クーポン」をばら撒いたにもかかわらず、こんな結果だ。事実上、成長のない時代が到来したのだ。成長率は1970~1980年代の年10%前後の高度成長期以降、外国為替危機とグローバル金融危機などを経て下落してきた。大型化した理由もあるが、半導体と自動車以後、可視的な成果を出した産業が少ない。 AIとロボット分野で韓国企業の技術力は相対的に弱く、金融などサービス業では、依然として井の中の蛙だ。中国の追撃は激しくなるが、自由貿易はできなくなりつつある。
対外依存度が高い韓国の立場では四面楚歌である。イギリスのエコノミスト誌が「2026世界大展望」で「先進国に財政危機が来る可能性がある」としたが、程度の差があるだけで、私たちも安全地帯ではない。このような懸念には、ますます大きくなる「米国の不在」が影響している。ドナルド・トランプ米大統領の「アメリカファースト」は世界の警察としての役割を、これ以上しないという宣言だ。トランプ政権の「国家安全保障戦略2025」は、中国の第一島連線(※列島線)船防衛のために韓国と日本の国防費を増やさなければならないと露骨に明示した。第1の線は、日本~沖縄~台湾~フィリピン~ボルネオ島を結ぶ中国の対米海洋防御ラインだ。中国が第1ラインを封鎖すると、韓国は中東からの原油輸入ルートを失うことになる。
米国が第1ラインの防御をあきらめることはないだろうが、一部の米軍が引く分は韓国と日本が満たさなければならない。在韓米軍の役割も再調整されるしかない。米国が韓国に原子力潜水艦を許してくれたことも、地域内で役割を強化するという請求書だ。それによる費用と対価は、まさに私たちの分だ・・
・・事実、安全保障と経済はつながっている。為替危機当時(※IMF管理期間のとき)、韓国に救済金融が必要だと強く主張したのは、米財務省ではなく国防省だった。当時、ロバート・ルビン米財務長官は今回こそ韓国の官治と補助金、財閥中心の経済構造を改革するとし、目に物見せてやるとしていた。一方、国防省は、安保同盟として韓国の安定を重視した。「米国のない世界」は、単に防衛費分担を越える外交・安保・経済的な意味があるのだ。
2026年は、大韓民国が経験してみなかった時代の元年になる可能性が大きい。内からは1%台の低成長が、外では米国の不在が本格化するだろう。国民は初めて成長がない時期と、米国が守らないグローバル秩序を同時に経験することになる・・・・李在明大統領は9日、来年に規制・金融・公共・年金・教育・労働など6大分野構造改革を果たすと明らかにした。構造改革を通じて韓国経済の体質を変えて競争力を確保しなければ増える財政需要を余儀なくされ、国民所得4万ドル、5万ドルに進むことができる。自主防衛のための道もしっかりした経済から出てくる(ソウル経済)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。