韓国政府、半導体への大規模投資で「電力」には言及せず・・再生エネルギーメイン政策のためか

韓国政府が世界最大の半導体団地を作ると発表しました。韓国の立場からして、半導体に投資をするのは分かりますが、なんか、内容が尹錫悦政権のときとまったく同じです。ほかはともかく、700兆ウォンの大規模投資(尹政権のときは600兆ウォンか650兆ウォンでした)を行うとしながらも、電力に関する内容が含まれていません。ただ、「政府が(多分、次の政権が)責任持って構築する」としています。ソース記事の朝鮮日報(11日)によると、いま想定されている規模の半導体関連施設を動かすためには、原発10基分は必要だ、とのことですが。本ブログでも紹介しましたが、いま李在明政権は「再生エネルギーメインで、原発は柔軟利用(足りないときに補助的に使う)」という政策を掲げています。だから、電力関連の話はしなかったのでしょうか。

また、随分前から業界から要請されてきた「1週間に52時間だけ勤務」という法律(を半導体関連には適用しないでほしいという内容)も、受け入れられませんでした。同じタイミングで、中央日報(11日)が、半導体部門で台湾はリードを続けており、日本は復活を目指しているが、韓国の場合は「それしかない」状態が続いている、という記事を載せました。台湾のように国が主導しているわけではなく、日本のように復活の段階を経ているわけでもなく、韓国の場合は「半導体だけを育ててきたわけではないのに、他の産業がパッとしなくなって、半導体しか残っていない状態」だというのです。ただ、中央日報は「日本、台湾、韓国ともに、半導体に全てをかけている」としていますが、個人的に、これはちょっとどうかな、と思っています。




日本が半導体に再び力を注ぐようになったのは、「半導体が手に入らなくなれば、他の産業も止まるから」という、言い換えれば「日本内で使われる半導体は日本で作る」というイメージがあります。経済安保的と見ることもできますが、そもそも半導体が足りなくなると他の産業まで大変ですから。日本は半導体素材、部品、装備(設備)面でも強く、台湾や韓国に比べると、もっとも「国内でのシナジー効果」に強い構造になるのではないか、と。私見ですが。一時、本ブログでも韓国メディアの半導体関連記事を子テーマとして取り上げていましたが、いまも、特に日本でなにか少しでも動きがあれば、すぐに記事が出ます。どちらかというと、日本国内より韓国メディアの記事の数が多いのではないか、そんな気もします。以下、<<~>>で引用してみます。

<<・・政府が10日、李在明 大統領主宰で企業経営者たちとの半導体戦略報告会を開き、「半導体世界2強への跳躍」のための中・長期計画を発表した。メモリ分野の圧倒的1位を維持し、台湾に遅れたシステム半導体での競争力を引き上げるという意志を明らかにした。2047年までに700兆ウォン以上を投入し、世界最大規模の半導体クラスタを造成し、生産工場(ファブ)10基を追加で構築する計画も提示した。しかし、政府の発表には、重要な核心が欠けている。最も緊急なのは電力問題だ。龍仁半導体クラスタが正常に稼働するには、15GW(ギガワット)の電力が必要だと推定される。これは最新型原子力発電所10基以上に該当する膨大な規模だ。現在、首都圏の電力状況に余裕はない。




結局、原発新規建設と大規模送電網の拡充が避けられない。政府が確固たる意志を持ってこれを解決しなければ、どうにもならない。ところが、今回の発表には「電力や湧水などインフラは、国家が責任を持って構築する」という宣言的フレーズだけがあるだけで、原発拡大や送電網構築といった実質的な問題についてはまったく、なんの言及もない。第11次電力需給基本計画に入っていた新規原発2期建設計画すら、再び「国民の公論に聞いてみる」というスタンスの政府だ。最も重要な電力計画がこれでは、半導体戦略を発表しても何も成し遂げることはできないだろう。半導体業界が要求してきた週52時間制例外適用も、今回の対策にははいってなかった(朝鮮日報)・・>>

 

<<・・台湾にTSMCという屈指の半導体企業が誕生したのは、かつて政府主導で「ファウンドリ」という一つだけに専念する戦略を打ち出したためだ。2016年から台湾政府は「中小企業中心、多品種少量」にとどまっていた経済体質を、強力な産業政策に変え始めたが、これはTSMCがあってこそのものだった。 TSMCをベースに、サーバー組立やパッケージングなど後工程とハードウェア全般に効果が広がる好循環の構造を作ったのだ・・・・中国経済金融研究所は「台湾には、干ばつであっても農業用水を半導体工場に先に使うほどの、政府レベルの総体的な支援があって、その結果が今、現われているのだ」と話した・・

・・日本は長い沈滞の沼から抜け出す兆しを見せている。企業実績回復をもとに2021年からはっきりとした輸出回復の勢いが現れているが、低金利を活用しようとするグローバル流動性が日本に集まり、証券市場も活況である。アベノミックス継承を唱えた高市早苗首相の就任後、半導体の再建や防衛産業の育成など、新規政策効果に対する期待も大きい。野村証券は最近、報告書で「高市内閣は円安と財政拡大という2つのキーワードを明確に提示し、これは日本に対する投資魅力を高める要因だ」と分析した。

 

韓国の半導体への偏りは、台湾の意図的な半導体「オールイン」とは異なるものだ。2000年代の経済成長の最大の支えだった「中国特需」が消え、鉄鋼・石油化学など主力産業が競争力を失い、半導体だけが残っているわけだ。成長のもう一つの軸である内需も、深い不振のままだ。新型コロナの時期から韓国経済の足首をつかんでいるが、実質所得減少と高い生活物価上昇率などがかみ合ったせいで、簡単な問題ではない。同時に世界で最も低い出生率と、最速の高齢化が潜在成長率を引き下げ、複合的な問題に囲まれた形だ。専門家たちは今の状況を、韓国経済の最後のゴールデンタイムだとみなす。

日本は基軸通貨国で(※韓国ではハードカレンシーも基軸通貨だと言います。日本が低成長時代に耐えてきたのは単に通貨のおかげだけではありませんが、韓国では「そういうこと」になっていて、このような書き方が定説になっています)長期間の低迷を支える体力があったが、韓国はきちんとした処方がなければ、今後、急な低成長におちいることもありうるという警告だ(中央日報)・・>>

 




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
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   ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。