何度も取り上げてきましたが、韓国では日中対立のことで、明らかに「日本がこまっている」という側面だけを報じています。この前の「パニック」記事が代表的ですが、他にもYTN、ヘラルド経済などが「台湾のために日米同盟に亀裂」「トランプに見捨てられた」などという趣旨の記事を載せています。中身はどれを読んでみてもほとんど同じなので(笑)わざわざ同じ内容の記事をチョイスしたくはないので、ちょっとだけベクトルが異なる記事を二つ紹介します。ソウル経済(12日)とマネートゥデイ(14日)で、前者は、中国が韓国に手を差し伸べた、台湾問題による日中対立で、中国にとって韓国はもっと必要な存在になった、シェシェでござる(こうは書かれていません)、そんな記事です。
後者は、記事全体ではなく引用されている専門家の見解が、まさに異色を放つものでして。「日中対立は、実は米中対立の一環」という内容です。それのどこがユニークなのか、と思われるかもしれませんが、先も書いた通り、ほぼ全てのメディアは「米国は介入する気がなく、日中の対立にすぎない」としているからです。この主張の本音は、韓国とは関係ない2国間の問題にすぎないというものですので、異論を提起する記事はほとんどありません(まったくないわけではなく、メディアと言うより書いた人によります)。もしこれが2国間を超える範囲のインド太平洋」規模の問題なら、在韓米具の役割拡大にも影響するでしょうし、韓国としては「そういう問題じゃないからね、本当だからね」としたいのでしょう。以下、二つの記事を<<~>>で引用してみます。
<<・・先月、アジア太平洋経済協力体(APEC)首脳会議をきっかけに開かれた中韓首脳会談以後、中国が積極的に韓国に向けて手を差し出しています。中国は、世界覇権をおいて米国と競争しており、最近、日本とは台湾問題を置いて対立しながら、韓国の必要性がさらに大きくなっています。特に、長い期間、最大の貿易国の一つであり、技術交流を続けているだけに、中国は依然として韓国との協力を望んでいるようです。来年から新たに15次5カ年計画を通じてさらなる跳躍を夢見る中国は、韓中両国の発展のために人工知能(AI)、半導体、自律走行、ロボットなどの先端技術分野で互いに協力を強化しようというメッセージを伝えて注目を集めています・・
・・(※中国で開かれた中韓産業協力関連のカンファレンスで)テーマ発表者になった中国シンクタンク所属研究員たちも、口を揃えて中韓両国の協力を強調しており、前とは明らかに変わった姿を見せました。それだけ、現在、両国の雰囲気が、未来のためにお互いを信じて一緒に進むパートナーだと考える雰囲気だという点を、代弁するものだと感じられました。前の尹錫悦政権だけでも、中国は韓国研究機関などの行事に、できるかぎり参加しないようにしたり、簡単なレベルの意思表現だけ伝えるだけで、むしろ韓国政府に向かって不便な気配を出すことが多かったです。今は、一緒にしなければならないという点を積極的に示しており、中国の立場がどれほど変わったのかが、よくわかります・・
・・もちろん、中韓両国の本音は異なる場合もあります。中国は韓国を利用して米国を牽制し、自分たちにとって足りない先端技術分野の能力をアップグレードすることが優先であろうし、韓国は最大の貿易国であり技術強国に浮上する中国を通じて私たちが現在遅れている部分を埋めようとしています。結局のところ、お互いが協力しても、それぞれが持っている手札をすべて見せずに、相手よりも自分の利益が優先されるはずですが、これまで以上に良くなった雰囲気を逃してはいけません。相互信頼をもとに韓中両国が協力を模索するならば、その結果は予想より強力になるのではないでしょうか。きっかけが設けられただけに、緊密なコミュニケーションを通じて、韓中両国がシナジー効果を発揮する姿を見せてほしいものです(ソウル経済)・・>>
<<・・日中対立が、米中覇権競争の延長線だという解釈もある。日本が台湾問題を浮き彫りにし、米国の「域外バランサー(地域内の他の強大国を支援して該当地域の勢力バランスを維持させる国家)」の役割を自任しているということだ。これは最近、トランプ政権が発表した「国家安全保障戦略」(NSS)の域内同盟を活用した「第1島連線」(太平洋の島を継いだ中国の仮想防御・戦略ライン)牽制内容と直結する。国立外交院バンギルジュ教授は、「トランプ大統領は、中国との貿易対立を強調しているが、軍事・安保的牽制に対するMAGA陣営の要求を無視することは難しい」とし、「現在の日中対立争は、日本が米国の域外バランサーの役割を担う、事実上の米中対立シ・シーズン2だと見なければならない」と評価した。
今後の日中対立は、緊張状況を維持しながらも直接的な衝突まで飛び火するようにはしない、「管理された緊張」局面が持続されるだろう、という見解が優勢だ。両国が国内政治状況、台湾問題をめぐる戦略的関係、インド・太平洋戦略など構造的要因までが絡んでおり、容易に後退したり譲歩することは難しい構図が形成されているためだ(マネートゥデイ)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。