現政権(李在明大統領)だけでなく、韓国政府は日本を中韓の経済圏に招き入れようとしてきました。本当に自社の必要性などによって企業レベルで主張している人たちもいますが、経済界の代表として、政治家として、この主張を続けている人たちが多いので、困ったものです。その中で出てくるものが、日中韓FTAでした。実は日本側が消極的でほぼ進捗のない状態ではありますが、2000年代に入ってからすでに「議論中」ということになっています。ただ、日中韓首脳会議がしばらく開かれなかったこともあって、しばらく話題になりませんでしたが、それから「関係改善以外の言葉を認めない」風潮になり、石破政権あたりから、またこの日中韓FTA関連が話題になるようになりました。すでに尹錫悦政権のとき、韓国は中国にFTA拡大(現在のFTAを強化するいわゆる「第二次中韓FTA」)を要請している状態です。
ですが、李在明大統領が、「日中韓FTAより、CPTPPからアプローチするように」と直接指示を出したことが明らかになりました。しかし、水産物輸入再開の問題があるので、国務総理がこれに「慎重になる必要がある」とし、事実上の反対意思を示しました。ソウル経済(21日)、国民日報(22日)などが報じています。記事には、李大統領がなにかすごい決断でもしたかのように書いている文章もありますが、しばらくのあいだ日中韓首脳会談が開かれなかったこと、そして最近の日中対立などで、「日中韓FTAは無理ゲー」だとやっとわかったのではないでしょうか。またいつもの、「日中の間の経済バランサーになる」とか思っているのかもしれませんが。他に、「どこの国が主導しているかは重要な問題ではない」など、本音がわかるような、そんな文章になっています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・李在明政権が、来月と予想される日韓首脳会談で、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)加入を議題にすると見られる。外交部ではすでにCPTPP加入推進を公式化しており、その背景には李在明大統領の直接的な注文があったことが分かった。21日、大統領室のある関係者は「来月の日韓首脳会談が開かれれば、CPTPP加入議論が自然に出てくることになる」と明らかにした。 CPTPPはアジア太平洋地域の日本・オーストラリア・カナダ・シンガポールなど12の加盟国が相互市場開放を目的に締結した貿易協定だ。事実上、日本が主導する協定であるだけに、来月中旬に日本で開かれる可能性がある李大統領と高市早苗 日本首相の会談で、韓国の加入を議論できるという意味だ。この関係者は「CPTPPをどの国が主導するのかは重要ではない」としながらも「現時点で韓国政府が(CPTPP加入を)優先的に進めており、ある程度は進捗があるから」と説明した。
外交当局はすでに韓国政府のCPTPP加入推進を公式化した状態だ。趙顕 外交部長官は19日、ソウル外交部庁舎で開かれた業務報告で、李大統領に「私たちの経済の領土を広げるためCPTPP加入を推進し、日本とも経済協力を深化できるパートナーシップを構築していく」と話した。これに先立ち、魏聖洛 国家安全保障室長も15日、国会「先進外交のための超党的フォーラム」懇談会に出席し、「(変化する世界貿易秩序に対応する次元で)CPTPP加入を今は推進する必要がある」と話したと伝えられた。 CPTPPが日韓間の新しい貿易環境に対応するために重要であるという判断だ。このように政府でCPTPP加入を着実に取り上げているのは、李大統領の直接的な言及が影響を及ぼしたものと見られる。
最近公開された10月21日国務会議の議事録によると、外交・安全保障関連議論の中で、李大統領は「日韓自由貿易協定(FTA)よりは日中韓FTA、日中韓FTAよりはCPTPPでアプローチした方が良い」と話した。李大統領が「今まで米国・中国など主要国家中心に関係を続けてきたなら、今は輸出市場も多様化しなければならず、市場開拓も政府レベルで出なければならない」とし「経済・安全保障分野を最大限多様化しなければならない」と力説した。これに趙長官が「CPTPPと日中韓FTAに拍車をかける」と話すと、李大統領はそのまま「CPTPPでアプローチせよ」と要請したのだ(ソウル経済)・・>>
<<・・「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」加入を置いて、金民錫 国務総理が直接ブレーキをかけ、その背景に関心が集まっている。CPTPPを主導している日本が韓国の加入前提条件として、水産物の輸入など国民的な関心事を要求し、やっと回復した両国関係の懸念事項になると見ているようだ。趙顕 外交部長官は19日、大統領駐在業務報告で「私たち経済の領土を広げるためのCPTPP加入を推進する」と明らかにした。しかし、金総理は「CPTPPは、様々な理由で進展がうまくいかないと予想される、そんな現実的な側面がある」と慎重なアプローチを注文した。21日、複数の外交情報筋によると、韓国がCPTPP加入意思を公式発表する場合、日本の一部の議員が水産物輸入再開を強力に要求する可能性が大きいことが分かった。金総理はここに、農民の反発が大きい農産物開放問題まで出てくることを懸念しているようだ。
政府の立場で、水産物輸入再開は、解けそうにない難題だ・・・・CPTPP加入は慎重に進める一方、他の方式での日韓経済協力代案を探し出す余地もある。金総理は「自由貿易協定(FTA)やCPTPP以外の、何らかの方法を考えなければならないのではないか、プロジェクトを考えてみて、別に議論をしてみたら良い」と提案した(国民日報)・・>>
多分、李大統領は「水産物輸入再開しなくてもCPTPP加入できる」と思っているのでしょう。国務総理は「いや、そうはならんやろ」としている、と。さて、1月に開かれると報じられている首脳会談で、どんな話が出てくるのでしょうか。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。