17日にも「日中対立はチャンスでもある。日本も中国も、韓国を必要とするからだ」というタイトルでエントリーしましたが、「両方からラブコールが来ている。これは大きなチャンスである」という主張が結構出ています。記事によっては「中国から」「日本から」というバージョンもあります。ただ、これは前にも何度も同じことがありました。たとえば2022年5月17日ニューシースの記事を見てみると、こうなっています。「尹錫悦大統領が就任して間もないのに、日本と中国からのラブコールが激しい」、「ユン大統領が日本との関係改善に集中するような姿を見せると、習近平主席が中国への招待の意思を伝えるなど、日中が力比べをする格好になっている。これによりユン大統領が来る21日、ジョーバイデン米国大統領と初の首脳会談をした後、日本と中国のどちらと先に首脳会談するかが、関心事として浮上している」、「いまのところ、有利に見えるのは日本だ」、などなど。
今回は、「中国が韓国にものすごいラブコールを送っている」という記事が『また』ありましたので、ピックアップしてみます。聯合ニュース(27日)です。こういう記事には共通点があって、「これは韓国を味方に引き入れるための戦略かもしれない」と書きながらも、「だから注意しよう」という内容はありません(笑)。記事では中国のこのやり方を「遠日親韓」としていますが、そこまで書かなくても、これまた随分前から言われていた『弱い環をねらう戦略』の一環でしょう。最も弱い環の法則。すなわち、どれだけ丈夫な鎖でも、最も弱い環の強さが、その鎖の強さになる(チェーンの他の部分がどれだけ強くても、結局はその弱い環の部分でチェーンがきれる)わけです。中国は日米韓において、韓国をこの環だと見ています。
このように、なにかあればすぐ「~からラブコール」という記事が出ており、今回も「両方からラブコール」「中国からラブコール」「日本からラブコール」(首脳会談が予定されていること、などで)などと記事が続いています。しかし、中国の場合、単に「弱い相手から」という戦略の延長線上にあるもの、と見たほうがいいでしょう。以下、聯合ニュースの記事を<<~>>で引用してみます。
<<・・駐中韓国大使のインタビューを、中国共産党機関紙人民日報系列の英字新聞グローバルタイムズと環球時報がそれぞれ一面をすべて使って報じている。人民日報は中韓議員連盟会長関連記事を、駐韓中国大使の寄稿文と共に載せて、まさしく「韓国特集」をした。グローバルタイムズは人工知能(AI)、半導体など先端産業分野で韓国との協力の必要性を強調する社説も、最近になって何度も掲載している。官営媒体の記事は一つ一つが政治的意図と目的を込めるという点で中国指導部は明らかに韓国に親和的なメッセージを発信していると分析される。比重と頻度の観点から、2016年韓国のサード配置決定以後、前例のない「ラブコール」というのが現地情報筋たちの評価だ。これは、表面的には先月の慶州アジア太平洋経済協力体(APEC)首脳会議をきっかけに成し遂げられた両国首脳会談の結果であり、中韓友好の復元の信号のように見えるが、裏には「日本孤立」という中国の戦略と計算が敷かれているという評価が出ている。
先月、高市早苗 日本首相の「有事の際の台湾介入」示唆発言以後、中国は2カ月近く日本に向けた高強度圧迫を続けている。日本映画の公開が遅れ、日中を行き来したフェリーとフライト数が急激に減り、日本産の水産物禁止を通知したのに続き、自国民に日本旅行を控えるよう公式に発表するなど、中国は全方位的「限日令」を発動した状態だ・・
・・中国が言う代表的核心利益である「台湾問題」を、米国の対中牽制戦略に最も積極的に呼応する域内国家である日本が触ったことに対する怒りの表出であり、台湾に向けた警告であるわけだ。米国外交安保シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は今月初め、リスティ・ゴベラ、ボニー・リン顧問の寄稿文で両国関係が短期間内に安定化しそうではなく、「最低点」を形成する可能性が高いと見通した。中国は韓国と密着し、日中葛藤が日米韓共助構図に拡大しないようにするとともに、経済的利害関係が複雑に絡み合った韓国との関係を安定的に管理するという考えを持っているようだ。
これにより中国は北東アジア域内外交への不要な変数を減らし、対外的に「孤立した中国」というイメージを緩和する効果も期待できるわけだ。米中競争が構造化された状況で、習近平中国国家主席の外交戦略は、周辺国との摩擦を最小化するが、核心利益では強硬さを維持する方向に整理される模様だ。不動産低迷と青年失業、消費不振など内部課題が山積しただけに、同時多発的外交リスクの増幅は、まもなく政治的負担につながるからだ。このような状況を考慮すると、中国の「遠日親韓」戦略は、来年早い時期に推進される李在明大統領の訪中を控え、さらにスピードがつくという見通しが専門家の間で出てくる(聯合ニュース)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。