朴裕河(パク・ユハ)教授の寄稿文・・「彼らは、北朝鮮のため『補償』ではだめだと考えていた」

補償と賠償の差。それは、違法かどうかです。一部ではありますが混同される場合もあるので、本ブログでも何度も「賠償は違法に対するもので、補償は違法に対するものではない」というふうに短い説明を書いてきたりしました。この前、最高裁から「学問的主張である」と無罪判決となった朴裕河教授。朝鮮日報に教授の寄稿文が載ったので、紹介したいと思います。左派側がこの件にこだわり、「国家による強制」でなかればならないとする理由として、1990年代に議論されていた日朝の外交関係樹立を取り上げました。

私は、この『併合時代を違法とする観点(亡命状態だったが正式政府があった)』というムリのある考え方は、憲法前文からして憲法レベルのものであり、別に左派だけに限られるものではないと思っています。いままで20年近く、ネット、ブログ、そして拙著に書いてきた、もっとも中心となる内容でもあります。また、1990年代以前にも同じことはありました。教授が指摘した1990年代のことは、もっと大きな流れの『一部』で、その大きな流れには、右も左も無いと私は思っているわけです。引用の前に、自分の考えを記しておきました。教授は「保守がこの件をどう思っているのか」については語っていませんが、「日朝外交関係樹立の議論があったとき、北朝鮮が確実な賠償を勝ち取るために、◯アンフ問題をその方向にもっていく必要があった」、そして、そのために左派が動いたのだ、としています。気づいている人は他にもいるかもしれませんが、現状、教授でないなかなか言えない観点でもあります。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・この問題はしばしば日韓の問題とみなされるが、実は冷戦体制とも深く繋がっている。この問題が始まった1990年代初めは、北朝鮮が日本と国交正常化交渉を行った時期であり、北朝鮮はこの問題を、「不法の賠償」を受けるための良い機会と考えた。1992年当時、ユン・ミヒャン元代表が、北朝鮮が朝日修交交渉で「賠償」を受け取ろうとし、「南と北の両方が」「賠償を受け取るのに十分な主体の力(※主体力量、北朝鮮がよく使う表現です)」という用語を使った背景でもある。この問題に深く関与した法律家たちも、北朝鮮の対日交渉力を意識していた。

補償ではない「賠償」を受けるには「不法」でなければならず、まさにそのため、あくまでも「国家による強制」でなければならない仕組みが、そのように始まって、定着した。しかし、北朝鮮は2002年、平壌宣言でその主張をたたみ、経済的補償を受ける方式に戻った。しかし、その後もユン代表など周辺関係者たちは同じ主張を続けた。彼らが朴槿恵政権の日韓合意をそこまで反対した理由も、同じである(朝鮮日報)・・>>

 

27日、仏像の所有権関連で、「当たり前の判決なのに、なんでここまで11年もかかったのかが問題だ」という記事を紹介したことがあります。韓国メディアにしては実に少数の、少数すぎワロタな見解でした。朝鮮日報(朴教授とは別の記事です)は今回の朴教授の件でも、「なんで『学問的主張だ』と判決するまで6年もかかったのか」を社説にしています。そして、その理由として、「文在寅大統領の任期が終わるのを待っていたのではないか」、とも。それはそうでしょう。「政権で裁判結果が変わる」がもはや普通になっていますから。「6年近く」というのは最高裁判決だけで、全体で見ると10年近くかかりました。この部分引用して、そのまま終わりにします。

<<・・最高裁判決を見れば、どんな争点も見つからないのに、なぜこんなに時間がかかったのかを考える必要があるだろう。朴教授は2017年最高裁判所に上告した。今回の事件の主審であるノ・ジョンヒ大法官は、2018年8月に前任者の退任で本件を引き継ぎ、5年2ヶ月ぶりに判決を下した。文在寅前大統領によって任命されたノ大法官は、左派・進歩の研究会所属で、任命権者の意思に合わせて判決を下すとされてきた。今回の判決も文在寅大統領任期中にも十分出せる事案だったが、文在寅政権の基調と合わなかったので、先延ばししてきたのではないか、との批判が出ている(朝鮮日報)・・>>

 

 

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