韓国の教授が分析した、日本、米国、韓国の「脱物質主義」(2017年)

最近、物質主義と儒教思想をつなげる意見についていろいろ読んでいます。教科書的な定義ではなく、~な考え方、という意味での物質主義なので、考えの幅も広く、いろいろ新しい発見がありました。本ブログでは何度も引用したデータですが、ピュー・リサーチ・センターの「人生に意味を与えてくれるもの」レポートで、唯一、「物質的豊かさ」を1位に選んだのが韓国でした。日本および他の国は圧倒的に「家族・子供」でした。日本でもよく知られているソウル大学李栄薫(イ・ヨンフン)教授(記事当時)も、2012年12月4日文化日報で、韓国は社会の基礎となる家族共同体の現状を憂い、社会的成就と幸福を『地位が高い』と『お金があるのか』だけで見るのが大きな問題だと指摘しています。

教授は、朝鮮の儒教の特徴である「人間の道徳的レベルと社会的地位は一致する」という考えを取り上げ、朝鮮半島の儒教的に「優れた人」とは、道徳的なだけでなく、社会地位的も物質的な富も、ともに持つ人を意味する、というのです。儒教社会の官僚、すなわち文官以外にそんな存在はそうありませんでした。最近、英語幼稚園などをブログで取り上げたばかりなので、その『文官』という漠然なイメージが今でも影響を及ぼしているのではないか、そんな気もします。「朝鮮時代の儒教秩序は、道徳を強調しているけど、本当に精神的成就を追求する道徳哲学は育たなかった」となると、たしかに2023年の今とも繋がっているとも言えるでしょう。

 

そんな中、ちょっと変わった形でいくつかの国の「脱物質主義」を分析した人がいたので、いまさらですがエントリーしてみたいと思います。「韓国社会よ、どこへ」という本を執筆した、ジャン・ドクジン ソウル大学社会学科教授です(2017年2月28日韓国日報)。こちらは、一般的な物質主義とはちょっとアプローチが異なります。各国の価値観を調査する国際アンケート資料などをもとに、いわゆる『大きな政府』、強力な武力、全体主義な考え、経済成長などを望むほど「物質主義的な価値観による見方」とし、『小さな政府』、文化発展、自分自身を表現すること、人権や民主主義発展などを望むなら「脱物質主義な見方」とし、その割合を調べたものです。普通、経済成長を成し遂げた国なら、経済成長中までは前者の見方が強くなるけど、それからは後者が強くなるのが一般的です。ですが、教授は、1980年代からある資料を分析してみても、なぜか韓国ではこの考えが前者(物質主義的な見方)からあまり動かないでいる、とのことでして。

 

2017年時点で最新のデータ分析結果は、日本、米国、韓国のデータそれぞれ、「物質主義(強)」な価値観の人の割合が、日本24.95%、米国20.87%、韓国55.06%。「物質主義(弱)」が日32.10%、米31.91%、韓30.54%。「脱物質主義(弱)」が日33.73%、米28.81%、韓11.72%。「脱物質主義(強)」が日9.22%、米18.41%、韓2.68%でした。強弱を合わせると、物質主義85.6%、脱物質主義14.4%だけになります。特に「強」の割合が、圧倒的です。教授は、「一般的に、ある程度の経済的成長のあとには、心に余裕ができ、単に『食べて生きる』という問題から離れ、別のものを探す」ものだけど、韓国の場合は「予想はしていたけど、30年前(の資料)とここまで同じだとは、さすがに驚きました」とも話しています。

教授はその原因を「社会不安」としています。対立が多く、制度に対する信頼が弱いので、不安が多く、結局はすべてが不安になる、と。『より強くなる』方を選ぶ人が多すぎで、それがむしろ(別の方向まで含めての)『もっと成長する』可能性を制限している状況である、と。 ところで、ハッピーハロウィンであります。

 

 

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