韓国、労働組合の力を決定的にパワーアップさせる「黄色い封筒法」が国会本会議を通過

2月21日、黄色い封筒法というものをエントリーしたことがあります。労働争議に置いて、基本的には労働組合側を有利にする内容の法案で、その確信となるのは、労働争議範囲の拡大と、労働組合への損害賠償の制限です(事実上、できなくなっています)。結構前から問題になっていたこの「黄色い封筒法」(スト参加労働者に、市民が黄色い封筒に入れたお金を渡したことでこう呼ばれています)。9日、ついに本会議を通過しました。

さっそく大統領が拒否権を行使すると予想されていますが、それを意識して、昨日、ソウルで10万人規模(主催側発表、2か所で5万人+6万人)の大規模集会が開かれました。この法案について、簡単に書いてみます。まず「範囲の拡大」というのは、たとえば、Aという大企業から、BやCなど多くの企業が、下請けを受けているとします。いまの韓国のシステムでは、A社はA社の労働組合とだけ団体交渉をすればいいです。でも、黄色い封筒法では、BやCの労働組合が、A社を相手に労働争議を起こすことができます。

 

他の国でも似たようなケースが成立する場合はありますが、韓国の場合は、大企業(財閥)が他国より強力ということもあって、BやCだけでなく、無数の企業が下請けを受けています。韓国経営者総協会の人によると、「基本的に、A社から100の会社が下請けを受けていたとすると、A社は自社+100社の101社の労働組合とも団体交渉をしなければならなくなる」、とのことでして。また、労働争議は現状、「賃金・労働時間・福祉・解雇その他の待遇など、『労働条件を決定する過程』に対してのみ可能」です。でも、黄色い封筒法では、「労働条件の決定」ではなく「労働条件」(全般)を対象にしています。ノーカットニュースによると、「リストラによる『結果』も労働条件として争議行為が可能になる」とのことです。リストラ決定も「労働条件の全般」に入るからです。ケース・バイ・ケースだとは思われますが、リストラによって労働者が受けた損害についても労働争議が可能だということでしょう。

 

また、損害賠償については、労組の不法ストライキに対する企業の損害賠償請求において、加担者それぞれの帰責事由や参加度によって責任範囲を別々にする(労働組合そのものではなく、各個人に対して別々に)訴訟するようにしています。朝鮮日報はこの件で「たとえば、総被害額が100億ウォンであれば、ストライキを主導したA労組員は50億ウォン、単純参加したB労組員は100万ウォンという方式で請求額を分けるというということだ。ストライキに誰がどれだけ責任があるかを企業が区別することは容易ではない。黄色い封筒法が企業の請求自体を難しくし、労組の不法行為に対し、事実上の免罪部を与えるものだ」としています。

また、同紙によると、これがまるで労働者全般のための法律のようになっているけど、実は労働組合関連の損害賠償請求は99.6%が民主労総を相手にしたものである、とも。民主労総は韓国労総とともに、最大の労働組合総会です。朝鮮日報は、たとえば(いままで韓国の大企業としては労働組合がおとなしい方だった)サムスン電子を相手に、サムスン電子の協力企業がストを行うこともできるようになるとそ、各企業の対応コストはものすごい勢いで増えていくだろう、としています。

 

 

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