韓国の家計債務、ついに「学界の研究対象(原文ママ)」に・・「家計ローンを減らすと言いつつ、そのローンに依存する経済はどうなるのか」

本ブログにも無数のネタを提供してくれた家計債務問題ですが、ついに世界的に「学界の研究対象(原文ママ)」になった、という記事がありました。いままでとはちょっと書き方が異なる記事でもあります。拙著やブログにずっと書いてきた内容の一つに、「韓国経済は債務によって発展したもので、日本のように政府が債務を負うのではなく、民間(特に家計債務)が負う形だった」というのがあります。これ、いままで韓国メディアからは同じ意見を見つけることができませんでしたが、なんと大学教授が同じ指摘をし、アジア経済にそのまま記事が載りました。

「政府の不動産依存」、「他国では政府が、韓国では家計が債務を負う形になった」と明確に書いてあり、同じ主張を見つけてちょっとうれしいとも思いました。残念ながら、このような記事が載っても影響はさほど大きくないと思われますが。記事は、韓国の家計債務問題を、「学界の研究対象」だとします。そして、海外の専門家たちが指摘しているのは、「静かな金融危機」である、とも。大きな騒ぎが起きるのではなく、政府の介入などで金融機関の資本力が低下すると、それ自体が経済にかなりの影響を及ぼす、いわば「静かな」金融危機が発生するというのです。『政府』による金融機関への金利調整介入、事実上の徳政令とも言える政策、「自転車操業」の限界など、そんな話は海外にも伝わっているのでしょう。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・家計債務が消費、投資、成長など経済全般にリスクをもたらしているという分析が出ている。家計債務問題がいますぐ大規模な金融危機につながらなくても、少しずつ金融機関の不良を育て、雇用・資源配分部門の効率性を下げていく「静かな金融危機」につながるという指摘だ。大統領室と政府は、家計債務をめぐる指摘が相次ぐと、対策づくりに乗り出したというが、専門家たちはこいままでどの政権も不動産と家計融資に依存して成長してきた慣行自体を解消しない限り、目立つ変化はできないだろうと見ている・・

・・米国、ヨーロッパなど主要国とは異なり、韓国の家計債務はデレバリッジ(債務縮小)せず増えてきたことには、不動産と家計ローンに依存した経済成長方式が主な原因として作用したという分析だ。実際、いままでどの政権も、景気を生かすために不動産市場の浮揚策を主に使用してきた。ハ・ジュンギョン漢陽大学経済学部教授は「グローバル金融危機以後、他の国々はほとんど家計債務を減らし政府が債務を抱える傾向だったが、韓国は政府の代わりに家計が主に債務を増やす方法で行った特徴がある」と話した・・

 

・・(※現政権も含めて、いままでの李明博・朴槿恵・文在寅政権も、家計債務を減らすべきだとしながらも、景気のために実際には『家計債務で不動産を買って』という政策をおこなったり、または結果的にそうなる政策を行ってきたとする内容のあとに)このような政府基調と家計債務増加傾向は、学界でも研究対象だ。「借金で建てた家(※原題ハウス・オフ・デプト)」の著者である世界的碩学アミール・サフィー シカゴ大学教授は、去る7月に発表した論文「HOUSING, HOUSEHOLD DEBT, AND THE BUSINESS CYCLE」で、不動産に縛られた韓国と中国の家計債務問題を指摘した。

サフィー教授は「韓国は住宅好況期の家計債務金利が持続して低い水準を維持し、銀行の要件も企業ローンよりはるかに低かった」とし「これは住宅担保ローンの増加を促進するのに役立ったし、またジョンセ(伝貰)ローンというユニークな金融商品の拡大につながったりもした」と説明した。特に、彼は1980年から2015年まで16カ国の標本を調査した結果、家計債務の総負債原理金利換算率(DSR)が大きく上昇し始めたとき、家計債務ブームは最もリスキーな地点に到達することが分かった。特に心配な部分である」と強調した(アジア経済)・・>>

 

本ブログでもずっと紹介してきましたが、去年あたりから、DSR関連のデータが話題です。住宅購入のためのローンの場合、DSR(元利金返済のために所得のどれくらいを使っているのか)が平均で60%だとか、いろいろ。繰り返しになりますが、このような指摘が何か大きな影響を及ぼすとは思えません。ただ、こういう主張がメディアに出てくるようになったのは、一歩前進かもしれません。「学界の研究対象」になってもはや隠せなくなっただけかもしれませんが。

 

 

おかげさまで、新刊「韓国人として生まれ、日本人として生きる」が発売中(2023年7月29日発売)です!2023年、まさに心願成就、帰化できました。「韓国人として生まれた」を受け入れ、その連続性を大事にしながらも、「日本人として生きる」を上位の概念にしたのはなぜか。なぜ名前を変えなかったのか。「両国間の架け橋になりたい」などと全然思っていない理由は何か。『日本人』として初めて韓国を訪れたときの感想をメインにして、一つ一つ、自分なりの持論を綴りました。新刊・準新刊紹介エントリーもぜひ御覧ください。ありがとうございます
・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

 ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2023年7月29日)からですが、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。「韓国人として生まれた」より「日本人として生きる」を上位の概念にしたのはなぜか。なぜ名前を変えなかったのか。帰化した人たちがよく口にする「両国間の架け橋になりたい」などの言葉について、私はなぜ「そんなつもりはありません」としか思っていないのか。一つ一つ、自分なりの持論を綴りました。 ・新刊は、<韓国の借金経済(扶桑社新書)>です。本書は経済専門書ではありませんが、家計債務問題の現状を現すデータとともに、「なぜ、マンションを買えば貴族になれるのか」たる社会心理を、自分なりに考察した本です。帰化を進めている私の率直な気持ちを書いた<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。