ソウル最高級エリアの超高層ビル、ローン満期延長できず工事中断・・「プロジェクトファイナンス(PF)リスク」の実例

韓国旅行に詳しい方なら、清潭洞という言葉をご存知かもしれません。ソウルでもっともお金持ちが暮らしているとされる江南の中でも、もっとも高級エリアとされる地域です。引用部分にもありますが、「江南の中の江南」とも呼ばれます。韓国の不動産関連ニュースによく出てくる「漢江ビュー高級住宅(漢江がよく見える場所の高層マンションなど)」が多い地域としても有名です。その真中にあったプリマホテルというのを撤去して、地下まで合わせると50階を超える住居・商業複合型の超高層ビルプロジェクトが動いていました。

ですが、MBCなど複数のメディアの報道によると、PF(プロジェクトファイナンス)関連で借りたお金の満期延長ができず、この工事(ソース記事には詳しく書いてませんが、ホテルと周辺の撤去作業中だそうです)が中断されました。大きな変化が見られなかったので本ブログでは取り上げる頻度が減っていますが、PFリスクは国内外の機関から家計負債とともにずっと指摘されています。今回の清潭洞高層ビル中断、多分このままプロジェクトそのものが中断されるのではないか、とも言われていますが・・この件で、複数のメディアが再びPFリスクに注目しています。

 

PFは、金融機関が、プロジェクトだけを見てお金を貸します。自己資本などはほとんど無い状態で始まります。このプロジェクトの場合、施行会社(プロジェクト総括会社のことで、建設するのは施工会社と言います)は約4600億ウォンを借りましたが、自己資本は410億ウォンしかなかった、とのことでして。記事によると、2020年~2021年までは、時系列的にこのプロジェクトが構想中だった頃になりますが、その頃は各金融機関が「うちからお金を借りてください」と競争をしていました。そして今から約1年前、清潭洞プロジェクト施行会社はセマウル金庫など金融機関および投資家など26か所から4600億ウォンを借りました。

セマウル金庫がもっとも金を出しましたが、1年前だとすでに金融機関のスタンスが代わりつつあったからか、満期は1年だけ。利子は4~7%でした。当時施行会社は、「それでも4~7%なら、十分なんとかなる、と思っていたそうです。しかし、1年経ったいま、満期延長には10~13%が必要でした。さすがに耐えられなくなったわけです。本ブログだけでなく、一部の韓国メディアが取り上げてきたPFリスクの、まさに典型的な事例です。ちなみに、第1金融圏(普通の銀行)は、最近はPFからほとんど撤収済みです。記事で施行会社代表は、最高とされる清潭洞でもEOD(満期前の回収要求)が相次いでいるくらいだから、全体的にどうなのか想像してみてください」な趣旨で話しています。

 

このままだと土地はオークション、または公売にかけられることになりますが、その場合、優先順位が低い(後順位)金融機関や個人投資家が資金を回収できる可能性はほとんどありません。ソウル大学のキムギョンミン教授は記事内のインタビューで、「リスクが高いプロジェクトは、無理して満期を延長せず、『処理』しておかしないと、ある時点に多くのプロジェクトが一気にくずれる事とになり、その場合は金融機関まで一緒にたおれることになる」と指摘しています。実は、PFなどパーフェクトにファンタジーだった、といったところでしょうか。実際、海外では政府や自治体保証がある施設の工事以外は、PFはそう無いとも聞きますし。以下、<<~>>で記事を部分引用し、そのまま終わりにします。

 

<<・・100億ウォンを超える漢江辺の高級住宅。カラフルな高級ストリート。ソウル江南でも地価が最も高い、江南中の江南、清潭洞です。清潭洞プリマホテルがあった場所、大きな道に沿って、遮蔽物が設置されています。ホテルを撤去し、最高級の住居商業複合ビルを建てることにしました。49階、漢江も見えます。ところが、開発が中断されました。開発会社が推進していた4,000億ウォン台の融資が詰まっています。不動産プロジェクトファイナンス、PFローンの延長ができなかったのです。

建てるだけで超高価での分譲が保障されていた江南ですが、もうそうでもありません。【清潭洞不動産仲介事業所]:「清潭洞でダメだったら、首都圏すべてでだめです。こんなに良いところでうまくいかないのに、他の所は言うまでもないでしょう」】・・・・国内PFローンは133兆ウォン。低金利の時期、規模が大きく膨れ上がりました。だが、金利が上がり、市場が凍りつき、ローンの逆襲が始まったのです。PF発経済危機が迫っています(MBC)・・>>

 

 

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