韓国政府、北朝鮮の軍事衛星発射で「919軍事合意」の一部を効力停止・・「破棄」はできず

本ブログでも何度も取り上げましたが、文在寅政権がいわゆる『南北平和ムード』最大の実績としてきた919軍事合意が、ついに効力停止となりました。しかし、一部だけです。これは、南北首脳会談の際に発表された南北合意で、南北ともに「陸海空すべての空間で軍事的緊張と衝突の根源になる行為を全面中止する」というものです。これで、在韓米軍含めて、軍事境界線付近で偵察すらできなくなっていました。いままで北朝鮮が打ち上げたミサイルだけでもすでに合意違反だとする指摘が相次ぎましたが、文政権では「北朝鮮は合意をちゃんと守っている」というスタンスでした。

2022年11月1日にも北朝鮮のミサイル発射が話題になっていましたが、外交・安保の司令塔といえるジョンウィヨン国家安保室長は「安保にそこまで問題にならない」などの理由で、9・19軍事合意違反でもないと明言しました。特に、ちょうどそのとき、文大統領は喪中で留守でしたが、「葬儀の手続きを終えて大統領が大統領府に実質的に復帰してから、発射された」と話し、まるで北朝鮮が配慮してくれたというニュアンスで話し、いつもは左側寄りのメディアも、多少あきれた論調の記事を載せたりしました。

 

で、その919合意ですが、やっと「一部」効力停止となりました。北朝鮮の軍事衛星発射がきっかけで開かれた臨時国務会議で、合意の1条3項を停止するとし、イギリスを訪問中のユン大統領も承認しました。1条3項は、軍事境界線付近での「飛行禁止」に関する内容です。これで、偵察はなんとか再開できるようになりました。野党「共に民主党」は、軍事衛星発射については安保理決議違反だとしながらも、919合意の一部効力停止には反対しています。文在寅前大統領側も、「919合意を効力停止することは、法を守らないからって法を消すようなものだ」と批判しました。これを文大統領側が言うとは、もはやなにがなんだか。ちなみに、「南北関係発展法」によると、国家安保に深刻な問題だと判断された場合、大統領は南北合意内容の全部または一部の効力を停止できるようになっています。「破棄」までは南北関係の法律に定められていません。

 

なんで破棄まで明記されていないのかについて、ジョハンボム統一研究院研究員は、「軍事的衝突が発生したとき、責任問題が発生するから」だとしています。YTNの1月の記事ですが、「だから、ユン政権でも破棄はできないだろう」としていて、結果的にあたったことになります。研究員の主張は、こうです。「南北関係は特殊関係です。国家間の関係ではありません(憲法上、国家ではない)。しかし、北朝鮮は国連に加入しています。そこで、国家間に準ずる暗黙的な関係を形成されます。国家間で締結されたすべての合意は破棄することができます。しかし、南北関係発展法にはどうなっているかというと、南北間に締結された合意は、大統領が一定期間を定めて効力を停止させることができる、こうなっているんです・・

・・破棄よりは効力停止のほうが弱い措置になります。いくら北朝鮮が挑発をするとしても、私たちが正当な対応だとしても、9.19軍事合意は偶発的な衝突を防ぐ緩衝地帯です。だから、北朝鮮がすでに事実上、無力化させたこの合意ではありますが、私たちが先に「完全に廃棄する」と言いだすと、偶発的衝突突が発生したとき、責任の可否についての問題があるかもしれません。だから、(※もしユン政権が919合意についてなにかの措置を取るとしても)効力停止あたりにレベルを調節するだろうと見ることができます」。 読み方にもよりますが、どことなく、他の国との合意は「軍事的衝突の可能性が無いから破棄してもいい」というふうに見えなくもありません。気のせいでしょうか。

 

 

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