年1~2回、大手メディア、どちらかというと右側のメディアを中心に、リショアリング(企業が生産拠点などを自国に戻すこと)記事が話題になります。実は10年前の2014年、韓国政府は「Uターン法(正式名称は海外進出企業の国内復帰支援関連法律)というものを施行しましたが、朝鮮日報(7日)東亜日報(17日)などによると、実績は最近の5年間で108社だけ(去年22社)で、大企業は4社だけです。朝鮮日報の記事によると、日本の場合は年平均で600社、米国は年平均で300社がリショアリングしている、とのことです。また、海外進出企業の95%は、韓国内投資意向がない、とも。各メディアで特に指摘しているのが、自動車産業です。
同じく朝鮮日報によると、「日本の場合、トヨタやホンダなどは、メキシコから日本へ生産拠点を移したり、生産量の一部を日本に割り当てるなど、リショアリング効果が著しい」、と。しかし現代自動車はロシアから生産拠点を移すとき、国内は考えずインドを選んだ、とのことです。そもそも「帰って来る」つもりがなく、国内復帰は選択肢にもない、というのです。引用ソース記事は東亜日報ですが、「勤労の時間や賃金などの条件を、企業や労働組合ではなく政府が決める国」「労働組合が経営権を手に入れようとする国」としながら、企業運営そのものが容易ではないという点などを挙げていますが・・短い文章ながら、内容はなかなかのインパクトです。また、政府は「とりあえず雇用創出」を強調しているけど、その際に企業の長期的な採算性などにはほとんど気を使わない、とも。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・「海外進出企業の国内復帰支援に関する法律(Uターン法)」が2014年に施行され、10年が経ったが、依然として実効性が疑われている。米中対立が強くなり、サプライチェーンに関するリスクが増加する状況において、海外に出た企業は戸惑いながらも、国内に復帰する代替案については全く考慮していない。政府が繰り返し「帰ってきて」と叫んでいるが、5年間(2019~2023年)国内に戻ってきた企業は108社にとどまった。それにもかかわらず、雇用創出と生産誘発効果が大きい大企業はたった4つだけだ。昨年だけでみると、海外に出た国内企業が2816社だが、国内復帰政策に入った企業の数は22社にすぎなかった。韓国企業のUターンが進まないでいることとは異なり、日本、米国、欧州連合(EU)など世界各国は税制と支援金を強化し、リショアリング(海外生産基地の本国回帰)政策を競争的に広げている・・
・・アップルとインテルはアメリカに、トヨタとホンダは日本に、戻った。リショアリングに最も積極的な国は米国だ。2010年バラク・オバマ政権は「リメイキング・アメリカ」の旗を掲げ、企業の国内復帰を誘導し始め、2011~2019年に復帰企業の数が3327社に達した。ドナルド・トランプ、ジョー・バイデン政権に変わりながらも、リショアリング政策は続いた・・・・企業の立場から見ると、米国は市場へのアクセサビリティは高いが、人件費や工場建設費用などのコスト面で見ると、どの国よりも不利だ。しかし政策補助金、研究開発エコシステムの競争力、ブランドイメージの向上など各種インセンティブを通じている。何よりアメリカが「親企業の国」という点が強力に作用する。
一方、韓国は「企業運営が難しい」という認識が強い。税制の恩恵などのインセンティブだけを見て、企業がリショアリングを決心するのは容易ではない。海外進出企業を動かすには、企業経営環境から根本的に改善しなければならない。労働時間と賃金を労働組合と企業の合意ではなく政府が決定する国、株主の議決権を制約し、国民年金が企業の経営権に介入する国、支配株主が広範な責任を負い、新規事業に参加すると制裁を受ける国、商法改正など不合理な規制法案があふれる国、そして労働組合が経営権を越えて不法ストライキをする国で、企業が存分に活動できないのはあまりにも当然だ。合理的な労・使関係の中で創造的な企業経営が保障されなければ企業が離れず、去った企業が戻ってきて、外国企業も韓国をハブ地域として活用するだろう・・
・・海外進出企業はサプライチェーンリスク低減、研究開発人材需給、韓米自由貿易協定(FTA)の活用、ブランドイメージの向上、経営効率化などの理由で国内復帰を検討する。このために、企業は復帰目的に適した立地を直接選択しようとする。一方、政府と地方自治体は、人口消滅を防ぎ、雇用を創出するために、何とか企業を呼び込むことにだけ関心を持つ(※立地選定などに関わる)。復帰する企業の長期的な成功について心配したりはしない。国内復帰企業が、事前に約束された政府の支援を適期に受けられず、廃業する事例も出ている。明確な基準と透明な決定、そして適期支援など政策執行過程を改善する必要がある(東亜日報)・・>>
円安だから~という話もありますが、必ずしもそうとも言えません。引用部分にあるトヨタとホンダの事例ですが、すでに数年前から「メイドインジャパンの風は吹いていた(中央日報、7月18日)」、とのことでして。実はウォンもかなり安くなっていたので、記事は「円安をウォン安に書き換えてみると、日本と韓国は条件が似ているが、このように両国企業の選択は異なるものだった」としています(通貨安だけの問題ではない、と)。
<<・・(※ヒュンダイ車がロシア・中国の工場を売却した東南アジア・米国などで生産拠点を組むとしたこと、などで)韓国はその拠点の選択肢に入ってなかった。これとは異なり、日本の自動車業界は数年前から「メイドインジャパン(Made in Japan)」の風が吹いた。ホンダは23年間運営していたメキシコ工場を2016年に日本埼玉県に移した。トヨタは2017年、米国インディアナ州工場で作っていたベストセラーの中型セダン「カムリ」年間10万台の生産分を愛知県工場に移した。日産は2017年に北米で作ったスポーツユーティリティティー(SUV)の物量の一部を日本工場に回した。朝日新聞は、日本自動車企業の国内復帰について「安価な人件費を求めて海外に行った日本企業が、円安効果、サプライチェーン関連の不安定、経済安全保障意識の強化、「メイドインジャパン」に対する消費者の信頼に応じて、国内に戻る事例が続いている」と報道した(中央日報)・・>>
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