数々の反日発言で話題(?)になっている韓国の独立有功者の会『光復会』のキム・ウォンウン会長が、中国の戦勝節(9月3日)、韓国の中国大使に祝電を送ったことが分かりました。「韓国と中国は抗日戦争を一緒に行った同志(仲間)だ」、「中国人民の抗日戦争勝利75周年を大韓民国光復会メンバーたちと一緒にお祝いする」、「韓国と中国は抗日、反ファシズム戦争を一緒に行った同志だ」、「世界平和のために韓中が連帯する」、「独立有功者の子孫である私たちが、血で結ばれた先烈たちの同志愛を生かし、韓中国民の共生を大きく開いていく」などの内容です。ソース記事は世界日報となります。
ちなみに、韓国では、左派が独立運動関連で「中国との『血』なんとか関係」を強調することがよくあります。これは、右派が主張する「米国との『血盟』」を意識しての、『米国より先に中国と血盟だった』を主張するためのものです。光復会は、独立有功者及びその遺族で構成された、韓国公式『英雄』団体であり、会長が左派の重鎮ということもあって、韓国で大きな影響力を行使しています。
さて、抗日『戦争』を共に戦った~などの表現から、キム氏が『韓国も戦勝国だ(戦争に参加してともに戦った)』と言いたがっていることが、容易に分かります。しかし、果たしてそうでしょうか。韓国は、光復軍を『臨時政府の正規軍』としています。臨時政府は、韓国の主張だと『朝鮮半島の公式政府』であるため、政府と軍が戦いに参加したという設定のもと、『日本と戦争した』という駄々をこねているわけです。
抗日戦争公式政府でないと大韓民国の『正統性(legitimacy)』そのものが成立しなくなるため、憲法前文にも「韓国は臨時政府の法統を継承(正統性を正当に受け継ぐ)している」と明記しています。朴正煕大統領の頃に消されたこともありますが、その期間以外は、ずっと韓国の憲法に刻まれています。そして、その臨時政府の正規軍が「光復軍」です。約300人しかいなかったし、それすらも本当に光復軍なのかどうか怪しい人が多いと言われていますが、とりあえずそういう設定になっています。
それでは、『現実』で、共に戦えたのかどうか、ちょっと見てみましょう。いや、『現実とどう戦っているのか』と書いたほうがいい気もしますが。『光復軍の統帥権が臨時政府にあった(とりあえず、臨時政府の軍だった)』のは事実です。ですが、これが決まったのが1945年4月です。光復軍が創設したのは1940年なのに、5年間何をやっていたのか?と言いますと、その5年間、統帥権は中国にありました。『臨時政府の統帥権は名義にすぎない』という規則とともに。光復軍は、「韓國光復軍行動9個準繩」という規則の下、臨時政府ではなく中国軍事委員会に属していました。簡単に言えば、中国が「援助してやるから言うこと聞け」と要求し、光復軍は中国軍事委員会の軍門に下り、傭兵のような存在になったのです。※「国民政府」の軍事委員会ことです。
韓國光復軍行動9個準繩は、「光復軍は中国軍(参謀総長など)の命令と指揮を受けなければならない」、「臨時政府の統帥権は名義だけである」、「光復軍は必ず中国軍と連合して行動しなければならない」、「中国内での軍事訓練も、該当地域の中国軍司令官の統制を受けること」、「もし光復軍が朝鮮半島に進撃して入ることが出来た場合でも、必要な協定が締結されるまでは、中国の軍事委員会の命令と指揮を受けなければならない」、「もし戦争が終わっても光復軍が朝鮮半島に入ることが出来なかった場合、光復軍をどう処理するかは中国の軍事委員会が決める」などの内容が盛り込まれています。ちょっと長い要約が『韓国民族文化大百科事典』に載っています。
そこで、臨時政府(『金九』氏が主席でした)は、統帥権をくださいと随分と抗議したようですが、韓國光復軍行動9個準繩は1945年4月まで続きました。聞くどころ、その頃から中国軍の援助は途切れ、光復軍の幹部の約半分は逃げたそうです(これは本で読んだだけの話で、リンク先のソースとは関係ありません)。
じゃ、金九主席が統帥権者になれたから、そこから何か出来たのか?と言いますと、そうではありません。今度は米国から、『戦争終わったからって、朝鮮半島に入るなよ』と言われるようになりました。これは、1945年11月、臨時政府の金九主席が、中国駐屯米軍司令官であるウェデマイヤー氏に書いた手紙からもよく分かります。
「私を含め、大韓民国臨時政府(最近まで重慶にありました)のメンバーたちが、航空便で韓国に入国することに関連し、私は、私たちが公人としてではなく、間違いなく個人として入国が可許されたことを、十分に理解しているとここに証明します。さらに、私たちは韓国に入国し、集団的にも、個人的にも、行政的・政治的権力を行使する政府としては機能しないことを誓います。私たちの入国目的は、米軍政が韓国人たちのために秩序を確立することに協力することであります。あなたの配慮と考慮に、本当に感謝致します」。ソースは2019年1月20日ハンギョレ新聞です。統帥権者が、「個人資格」でないと朝鮮半島に入れない。正規軍の統帥権者である『大韓民国政府の代表』なら、まずこんな扱いにはならなかったでしょう。これが、キムウォンウン氏が主張している『抗日戦争をともに戦い、血で結ばれた』の本当の姿です。
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