併合時代の記事を読んでみると、朝鮮人を「朝鮮人」とも、「半島人」とも表記しています。いざ朝鮮側の記事などでは、あまり気にしていないようで、普通に「朝鮮人」と書いています。朝鮮の人だから、当然かもしれません。でも、日本側の人、特にある程度の高官、または何かの式典で演説する人の場合は、朝鮮人という言葉を使わず、ほぼ間違いなく「半島人」と言います。100%ではありません。何かの決まりがあったわけではありません。個人的に、半島人と呼ぶのは、朝鮮人へのある種の「気遣い」だったのではないか、そう思っています。
朝鮮人徴集兵だったウ・スヨン氏は、2010年1月、朝鮮日報への寄稿文で、次のように話しています。<・・朝鮮人にも兵役義務が与えられ、私自身が徴集1期となりました。率直、死ぬのが怖かったです。ところが、その頃から私たち(※朝鮮人)に接する日本人の態度に変化が見え始めました。それまでは遠慮なく「朝鮮人」と、民族を卑下していた彼らは、朝鮮人という言葉を使うことを自らタブーとし、民族ではなく地域を意味する「半島人」と呼んでくれるようになりました。私に「お前らにも、もうすぐ参政権が与えられ、私たちと同じ権利を行使できるようになるだろう」と言ってくれる日本人の友達が増えました。私は、私たちに与えられた兵役義務を肯定的に考えるようになりました・・(過去エントリーを参考にしてください)>
あくまでいくつかの記事を読んだだけの感覚ですが、『朝鮮人』というのは、『日本人ではない』というニュアンスがあります。半島人は、朝鮮半島が日本の一部だから、「日本人に含まれる」という意味になります。もちろん、どんなシチュエーションでどんなニュアンスでどんな表情でどんな言い方をしたのかが、もっとも重要でしょう。「現場の雰囲気」ってやつです。しかし、少なくとも寄稿文の内容だけで判断すると、半島人と呼ばれるのは、戦場で戦っていた朝鮮人青年たちにとって嬉しいことであり、場合によっては「生きがい」だったかもしれません。
戦後になると、韓国はそういう過去を『消したい』と思ったのでしょうか。なんと、日本が韓国人(朝鮮人)を半島人と呼んだから、韓半島(朝鮮半島)と呼ばれるようになった。半島という名称を廃止すべきだ! 国会でそんな議論が行われました。
1948年7月、韓国という国が出来る直前のことです。いろいろ法律などを制定していた国会で、「韓半島(朝鮮半島)と呼ぶのをやめようぜ」という案が話題になりました。パンド(版圖)と呼ぶことにしよう、というのです。その理由は簡単で、「日本は、朝鮮人を半島人と呼んでいた。そのせいで韓(朝鮮)半島と呼ばれるようになったのだ。だから名称を変えるべきだ」です。しかし、「あのね、それはね、地理的に3面が海に囲まれているから、半島と呼ばれているんだよ」と丁寧に説明できる人もいて、この案は否決となりました。本当に知らなかったのでしょうか。それとも、「半島人」という過去をまるごと消したかったのでしょうか。徴用に無理矢理『強制』の字をつけて強制徴用という言葉を作りだしたように。
最近の『親日清算』の原点を見ている気がして、笑えなくもない話です。しかし、ウ・スヨン氏の気持ちを考えると、当時、彼を『半島人』と呼んで迎え入れた人たちの気持ちを考えると、何とも言えない胸の苦しさが感じられます。
ちなみに、拙著<「反日」異常事態>に「国民」「人民」「人」について少し書きました。憲法の対象を「国民」ではなく「人民」にしよう、と議論されたのも、この時期です。外国の人もその法の影響下にあるわけだから、国民と言わずに人民として範囲を国民でない外国人にまで広げておこう、という主張でした。2018年から文政府が憲法の主体を「国民」から「人」に変えようとしてるのは、この「人民」騒ぎの再現ではないのか、と指摘されています。1948年、この件もまた、『韓国の憲法は韓国民のものだ』と、否決となりました。以上、1948年7月3日の東亜日報の記事でした。
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