2019年、こんな騒ぎがありました。<国内貨幣に載っている人物画が、親日派の作品という主張が提起された。今年発行10周年を迎えた5万ウォン札の『申師任堂』をはじめ、1万ウォン札の『世宗大王』、5,000ウォン札の『栗谷・李珥』、100ウォン鋳貨の『李舜臣』将軍の人物画が論議の対象である。韓日葛藤が長期化し、反日運動が真っ最中の中で、最近、各種オンラインコミュニティには「大韓民国の通貨に刻まれた親日派の痕跡」というスレッドが共有されている。この記事によると、国内の通貨に刻まれた偉人たちの人物画の一部は、親日派の芸術家が直接作業したり、彼らの作品を(※弟子が)再現したものである・・(ソース記事:2019年8月13日ソウル経済)>
特に5万ウォン札の場合、10年前に『作家のキム・ウンホは親日派だ~』という指摘があって、別の人に任せたら、その別の人がキム・ウンホ氏の弟子で、少し修正するだけに留まった、と言われています。『親日派』って、「当時、優秀だった」という意味でもありますから。
6月には、顕忠祠(ヒョンチュンサ)の李舜臣の影幀もまた、チャン・ウソンという親日画家の作品だとされ、撤去が決定しました。問題は、この作家の描いた絵が100ウォン玉にも使われているため、100ウォン鋳貨も変えるべきだという意見が強くなったりしました。
こんな騒ぎは、『親日』特定に長けている人たちがいるため、他の分野にまで広がったりします。『身分の高い男と身分の低い女性の愛』は、韓国の恋愛作品の基本パターンであり、その源流になっていると言われているのが、「春香伝」です。
春香(チュンヒャン)というキーセンの娘が、家柄も良く、将来有望な李夢龍(イ・モンリョン)という男と恋に落ちます。文官を登用するための国家試験である「科挙」のために漢陽(ソウル)に向かったイ・モンリョン。しかし何の連絡もありません。その隙に、地域の官吏は春香を自分のものにしようとしますが、春香はこれを拒否、笞刑でひどい目にあうがそれでも屈服せず、結局はイ・モンリョンが帰ってきて、ハッピーエンド・・そういうストーリーです。
ただ、「元はそういう物語じゃない」という指摘もあります。イ・モンリョンは漢陽で別の女と結婚していた、春香はショックで自殺した、またはその妻のほうが自殺した、春香は実は大して美女ではなく、イ・モンリョンは騙された(別の女が春香のふりをして部屋に誘い、イ・モンリョンは暗い部屋で本物の春香と寝た)などなど、いろんなバージョンがあります。それが、今の物語、一般的に知られている春香伝の形になったのは、併合時代のことです。春香は美女で、単に約束を守るために苦しさに負けなかったヒロインである、そういうことになっているし、今でも春香伝の舞台となった韓国の南原(ナムウォン)には、春香のための祠堂があり、影幀(位牌の代わりになる肖像画)があり、毎年、まつりも行われます。
この肖像画(キャプチャー&内容のソース:KBS)、実は、1939年にキム・ウンホ氏画家が描いたものです(1961年に自ら修復)。先の貨幣騒ぎのときに名前が知られ、この作品まで巻き込まれてしまったわけです。朝鮮戦争のときに毀損され、キム・ウンホ氏自ら1961年に修復したものです。市民団体は相次いで南原市にこの絵の撤去を要求しました。
韓国には、祠堂に肖像画を飾って、そこで祭祀を捧げたりします。毎年この絵の前で祭祀を捧げてきたこともあるし、まつりのシンボルでもあったため、南原市は拒否しました。それに、『他に春香の絵が描ける人も知らないし他に絵も無い』という事情もあったそうです。しかし、市民団体の相次ぐデモと、KBSなどの取材、なにより「親日」という言葉に負け、結局撤去を決めました。
他に、5万ウォン札もキム・ウンホ氏の作品(詳しくはそれをベースにしたもの)で、1万ウォン札の世宗大王の絵もキム・ギチャンという親日画家の作品で、5千ウォン札はイ・ゾンサン、千ウォン札はイ・ユテという、それぞれ親日作家の作品だと言われています。他に500ウォンと10ウォン、あまり使われないけど5ウォン鋳貨がありますが・・それら3つには、人物画が入っていません(笑
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