エスパー米元国防長官「なぜTHAAD部隊の生活環境に対応してくれないのか。これが同盟に対する行いなのか」

エスパー米国 元国防長官の回顧録『聖なる誓い』に、韓国ソンジュにあるTHAAD部隊に関する内容があり、一部のメディアが記事にしています。2020年にもエントリーしたことがありますが、THHADの追加配置はおろか、既存のものもちゃんと運用されず、兵士の生活に必要な物品すらもちゃんと搬入できずにいます。

ちょうどそのとき、2020年10月、エスパー長官が、韓国のカウンターパート(国防部長官など)と最後に会ったときのことです。ニューシースの報道によると、エスパー長官は兵士たちの生活に関する問題を指摘し、『3年前から同じことを言っているのに、なぜ対応してくれないのか。これが同盟国に対する行為なのか』と『大きく、鋭い声』で話し、韓国国防部長官の眼の前で、同行した議長に『THAAD撤収』を検討するように指示した、とのことです(エスパー氏はこれを「演出だった」としています)。以下、引用してみます。<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・エスパー元長官は「THAAD基地の生活条件はひどかった」とし、「私はこの問題を繰り返し韓国カウンターパートに提起した」と指摘した。また、該当問題は、韓国の国内政治と、中国を過度に気にするスタンスによるものだったと分析した。彼は著書で「私がこの問題を圧迫するたびに、韓国側は『解決策を見つけるまでもう少し忍耐を持って待ってほしい』と言った」とし、「2020年10月、私たちの最後の会議で、私は怒りの声を出した」と言う。

エスパー元長官は「(※初めて問題を指摘してから)3年が経過したのに、目に見える進展がなかった。彼らに時間をあたえるための私の忍耐は、ついに底をついたのだ」と述べた。会議場で、テーブルの向かい側のカウンターパートの相手に、数分もかけて大きく、鋭い声でこの問題を指摘したというのだ。

エスパー元長官は当時の会議で韓国側のカウンターパートに「私は3年前に基地を訪問した。あのときあら状況は悪かった」、「あなたたちは、仕事しているから忍耐心を持ってほしいと言った」と声を高めたという。続いて「この問題を翌年に提起したときも、私は同じ言葉を聞いた」、「これは、同盟が同盟のために取る行動ではない」と指摘したと、エスパー元長官は著書で伝えた。彼はまた「あなたの息子や娘が、あのような条件で暮らし、働いているなら、あなたは幸せなのか」とも尋ねたという。

彼は、当時、会議に座っていた韓国代表団が、どう反応すればいいのか苦労する姿だったと言う。また、自身がマーク・ミリー合参議長に「THAADを撤収すれば、その影響がどうなのか調べてほしい」と言った、とも。ミリ議長もすぐに「わかりました」と答えた。エスパー元長官はこのような状況に韓国代表団は注目したという。ただし、彼はこのような一連の発言を「私の演技(performance)」と表現した。本音ではなかった可能性もあるという意味だ・・>>

 

ちなみに、エスパー氏が『怒ったぞ』としているこの会談のあと、共同記者会見はキャンセルされました。追加配置も必要でしょうけど、既存部隊の運用が制限されている件。これ、実は「3不1限」ではないのか、とも言われています。文在寅大統領が中国に言った「3不(3NO)」には、既存のTHAAD運用を正常化させないという『1限』の裏合意があった、という内容です。これもまた本ブログで紹介したことがありますので、未読の方はお読みください。「今は尹政権だから大丈夫だろう」と思う人もいるでしょうし、実際、スタンスに変化がある可能性もあります。

 

しかし、中国からすると(内容の良し悪しは別にして)、相手は『韓国』であり、ムン政権とかユン政権とかではありません。中央日報によると、就任式に参席した中国の王岐山副主席も、この件に言及しています。  <<・・王副主席は「敏感な懸案を妥当に処理すること」と述べた。 これは、文在寅政府のとき、中国が韓国のTHAAD配置を指摘する際に用いてきた表現だ。当時大統領府は問題が「封印」されたと宣言したが、実際は、そうではなかった。王副主席が、追加配置はもちろん、既存の配置も受け入れることができないという既存の立場を繰り返したものだと解釈される。外交情報筋たちは、中国側が、マスコミに公開される冒頭発言でこれを言ったことにも注目している。記者やカメラがあることを、王副主席が知らなかったはずはない。にもかかわらずこのような発言をしたのは、事前に計画されたものだ、とのことだ・・>>

 

就任式からクライマックスだったユン政権。『ただの同盟ではない(一つ前のエントリーとは逆の意味ですが)』現状をどうするのか。多分、米韓首脳会談のあとに公開されるのは肯定的な内容ばかりでしょうけど、本件(追加もそうですが、既存部隊のの正常化)関連なら、オースティン長官も何度も指摘してきたし、首脳会談でも関連した話は出てくるでしょう。その際、ユン大統領はどんな対応を取るのでしょうか。文在寅氏は、ユン大統領が公約としていたTHAAD追加配置について、『候補だったから言えた。大統領としては言えないだろう』と話したことがあります。確かに、それから公約はキャンセルされ、100以上の項目が発表された新政権の「国政課題」にもありませんでした。

 

 

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

様のおかげで、こうして新刊・準新刊のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、画像左の方ですが、<「自由な国」日本「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書) >が2022年4月28日に発売されます。日本滞在4年目に感じた「日常」と、ラムザイヤー教授論文騒ぎにまつわる、日韓の対応の差などをまとめました。2021年発売版に、相応の追記を致した新書版でございます。 ・のほうですが、韓国に蔓延する、新しい、そして歪んだ対日観、『卑日』について考察した本が発売中です。卑日>という題です(扶桑社新書、2022年3月2日)。なぜ今韓国に、日本に対する『卑』が必要なのか。それを自分なりに考察、率直に書きました。 ・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。旧「インフォメーション」もこちらに統合してあります。 ・に、既刊 <文在寅政権最後の暴走>が発売中です。文政権においての日韓関係とは。文政権の考える『まともな国』とは。まともな南北、対日、対米、対中関係とは。それらはどういうもので、どう失敗したのか。そんな内容の本です。同じく既刊として、自分なりの『日本語』本<日本語の行間~韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書)>も発売中です。本当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。 ・れでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。