国家間の約束を、「約束だから守ろう」ではなく「広い心で守ってあげよう」とする世界

珍しく、「韓国が先に解決策を用意しよう」という記事がありました。まず、趣旨的にこんな文を書いたパクホンギュ高麗大学教授は、すごいと思います。その点だけは素直に評価せざるを得ません。

でも、いざ本文を読んでみると、「国家間の約束を守ろう」という内容はまったく出てきません。じゃ、解決策を韓国が用意すべきだと主張する根拠は何か。「そのほうが国益になるから、日本を包容しよう(後で本文も引用しますが、意訳すると『広い心で受け入れよう』になります」です。

拙著『日本人を日本人たらしめているものは何か』及び、本ブログでも『心情』について書いたことがありますが、韓国側が使う「心」は、日本側が言う「国家間の約束」の反対概念です。国家間の条約、合意だから、守るのが当たり前ではないかとする日本の主張と、愛は無いのか!とする韓国の主張が平行線のまま続いているわけです。

 

その心が曇っている私としては、ソース記事の主張が「国家間の約束を守ろう」ではなく、「広い心で守ってあげよう」と言っているように見えます。教授が本当にこう思っているのか、それともこう書くしかないのか、それは分かりません。後者の可能性も十二分に考えられます。

しかし、政治外交学科教授が大手全国紙に書いた、珍しい珍しい極めて珍しい『韓国が解決策を用意しよう』記事。そこに『国家間の約束を守ろう』という内容がまったく無いのは、さすがに虚しいとしか言いようがありません。中央日報、「保守が進歩(リベラル)を包容しながら国益を広げよう」という記事、以下、必要な部分だけ引用してみます。<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・日韓関係への見方には二つのアプローチがある。一つは政治・経済アプローチで、外交と安保、経済を中心に韓日関係を見る。もう一つは人文・社会アプローチで、過去に関わる懸案と価値・規範を含め、市民社会と文化交流の観点から接近する。前者の国益論、これに反して後者は治癒論だ。

現在、韓国は社会・経済的に不平等が深化しており、公共善(※共通善)に対する合意ができず、国家アイデンティティさえも定められない状態であり、保守と進歩(※リベラル)陣営が対立している・・・・国益論だけを強調するのは問題がある。韓日関係には、国際政治と外交での一般論が適用できない特殊な側面が存在する。国益論は韓日関係の最優先原則にはなれない。

 

それでは、韓日関係を改善するためにどのようにアプローチしなければならないのか?明らかなのは、人文・社会アプローチに当たる治癒論を経視してはならないという点だ・・・・(※金大中・小渕宣言などで)治癒論は大きな成果を得たが、時間が経つに連れ、カ◯イシャが負うべき責任の性格、シ◯ザイの真正性、補償の適切性に対する両国の認識差により、むしろ傷口が広がってしまった。韓国が主張する治癒論に日本は応じなくなったのだ。むしろ反発して逆攻する事態が起こった。これにより、ヒ◯イシャ本人よりも、現在は一般世論のほうがもっと傷ついている・・

・・(※いままでのように責任を要求する治癒論ではなく、相手を包容する治癒論が必要だとしながら)今、韓日関係を改善する時点は熟した。核心事案は、現金化に関する問題だ。日本は韓国に解決策を提示するよう要請している。包容論的治癒論で、韓国が先制的措置を断行しよう。おそらく、日本が解決すべき問題なのになんで韓国がするのかと、責任論的治癒論者たちと、彼らの考えに共感する多くの人々が反発するだろう。

 

これは避けられない。ユンソンニョル政府が韓日関係を改善すると言った以上、この問題に直面するしかない。その瞬間、国益論だけを掲げてはならないだろう。また、国益のためという名分の下に、(※日本の)演出されたシャ◯イで、世論の心を惑わしてはならないだろう。責任論的治癒論の成果を認め、その限界を説明し、包容論的治癒論に基づいて和解を進めると、真心を込めて世論を説得しなければならない。包容論的治癒論でコミュニケーションの瞬間を無事に通過できたとき、国益論が作動できる基盤が造成され、その基盤の上に韓日関係の車輪は力強く前へ走り出すだろう>>

 

でも、繰り返しになりますが、「韓国が先に~」とする趣旨はすごい勇気だと思っていますし、書き方がワケワカラナイのも、そう書くしかない事情がある(かもしれない)と、ある程度は理解しています。必要以上に長く、「私は両方の味方です」な雰囲気づくりに頑張っている、学者という側面を強調するために「漢字で出来たオリジナル単語(~論)」を使うなどの、韓国側らしい構成ですが、これらは一般的に、「反論を防ぐための手段」となりますから。

でも、これまた繰り返しになりますが、いくらなんでもこれはないでしょう。どこをどう読んでも、『仕方ないから守ってあげようぜ』でしかありません。しかも、日本がシャザ◯することが前提になっていて、「演出されたものであってはならない」としているなど、完全完璧な上から目線です。

 

◯◯論など、聞いたこともない論がいろいろ出てきますが、『何があろうと、国家間の約束だから守るべきだ』な『最優先にすべき原則』が出て来ないかぎり、無理です。それが通じない狭くて苦しい世界、その自体が問題なわけです。毎日のように無数の「~しなければならない」という傲慢な文章が溢れ出る韓国側のメディアに、「国家間の約束を守るべきだ」という一行が出てこない現実。それが問題です。さらに、「真心で説得する」って、何の冗談でしょうか。それで済むなら、国家に政府組織って必要でしょうか。このような前近代的な認識こそが、日韓関係のズレの根本でありましょう。ちなみに、引用最後の部分、「力強く前へ走り出すだろう」ですが・・打ち切り漫画の最終回の最後に出てきそうな、適当な結び方にしか見えません。

 

 

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