5月、日韓議員連盟が尹錫悦(ユンソンニョル)大統領を表敬訪問し、面談したことがあります。岸田総理も韓国の政策協議団の表敬訪問を受け入れたし、尹大統領が議員団と会ったこと自体は問題ありません。内容的にも、産経新聞(5月11日)の報道によると、「尹氏は日韓両国が自由民主主義、市場経済という価値を共有するパートナーであり、関係を改善、発展させる必要がある」と話し、具体的な話はありませんでした。
議員団も「国と国の約束を守ることが日韓友好協力の基盤だとする岸田文雄首相のメッセージを伝達。完全かつ最終的な解決を明記した1965年の日韓請求権協定に基づく対応を尹氏に求めた」となっていて、また、他のメディアの記事だと「懸案に対する具体的な話はなかった」とのことで、内容的にもさほど問題があるわけではありません。儀礼的なもの、だったのでしょう。
でも、一つ、気になるニュースがありました。当時尹大統領と面談した議員団の一人、日韓議員連盟の武田良太幹事長が、日本メディアとのインタビューで『日本も努力するのは当然だ』と話した、とのことでして。本ブログでは今まで、『共に』という言葉の罠について、何度も取り上げてきました。この表現、文在寅政権でも無かったわけではありませんが、尹政権になってから、詳しくは大統領職引受委員会の頃から、強調されるようになりました。韓国だけでなく、日本『も』努力しないといけない、というのです。
これは、「韓国が解決策を用意する」という日本の主張と、問題の発端が韓国側にあるという主張を、真正面から否定するものでもあります。政権(当時は引受委員会でしたが)関係者がこのことを公言したのは、3月18日に開かれたセミナーからです。尹錫悦氏の外交顧問であり、後で政策協議団のメンバーにもなるパク・チョルヒ ソウル大学国際大学院教授が、「韓国が正解を持ってきたら、日本が採点するというアプローチは、通用しないだろう」、「関係進展は韓国の努力だけで出来るものではなく、日本も共同で努力すべき部分がとても多い」と話しました。
そして3月28日、相星孝一 駐韓日本大使とあったユンソンニョル氏は、 「韓日関係は未来志向的に必ず改善になり、過去のように良い関係が緊急に復元されなければならないと考えており、両方ともに多くの努力が必要だと思う」、「互いに意見の違いがあり、一見 解けにくいような問題もあるが、真正性を持ってお互いに話し疎通し会話すれば、それほど難しい問題ではないと思う」と話しました。『両方ともに多くの努力が必要だ』とし、まったく同じ趣旨を話したわけです。
それからも、政権関係者たちは、『共に』を強調しました。パク教授の話した内容のとおり、これは『韓国側が解決策を用意することは、受け入れない』とセットで出てきた話ですが、あえてその部分は話さず、相手がうっかり「それはそうだね」と反応しやすい部分だけを、繰り返して強調しているわけです。そこで日本側が反応を示すと、その瞬間、流れは「だから、解決策を韓国側『だけ』で用意するのは間違っている」という話に変わるでしょう。ざっと、そんなところですが・・ファイナンシャルニュースの記事によると、どうやら、日本側にもその『共に』に同意する人がいるようです。当時議員団の一人だった武田良太議員が、日本紙とのインタビューで何を話したのか、<<~>>で引用してみます。
<<・・彼は7日、毎日新聞とのインタビューで、「当初、ユン大統領との面談は20分と予定されていたが、(ユン大統領が)30分も延長し、積極的に対応した」とし、「この方なら正直に意見を交換して韓日関係の正常化のために会話できると、私を含むすべての日韓医院連盟メンバーが感じたと思う」と話した。特に、「韓日の懸案を(韓国の)内政に利用してはならないと明らかにしたのは、非常に印象深かった」とした。
武田幹事長は、ユン大統領の韓日関係改善意志を肯定的に評価した後、「(岸田文雄)首相も韓日関係の健全化を期待できると感じているようだ」と話した。それと共に「首脳会談の実現が本格的な関係改善につながってほしいと願う」とし、韓日関係改善に対する期待感を表明した。彼は韓日関係改善のためには日本側の協力が必要だという韓国側の立場については、「日本側に協力を求めたいことがあれな、柔軟に対応する意義がある」とし「日本側も努力するのは当然だ」と明らかにした・・>>
『協力』というものがどんなものか分かりません。資料の提供とかそういうものなら協力しても構いませんが・・とにかく、韓国側のメディアでは、「日本『も』努力するのが当然だと言った!」ということがクローズアップされています。武田良太議員が詳しく何を考えているのかはわからないし、それに、同じ考えを持つ人がどれぐらいいるのかも分かりません。ただ、このような意見が主流にならないことを願うばかりです。
あと、最後に余談ですが、『懸案を内政に利用しない』の部分、なぜか(韓国の)となっていますが、韓国側の記事だけだと、「日韓両方に対して」言ったような印象を受けました。また、5月の表敬訪問で、尹大統領は「今月(5月)中に金浦羽田路線の復元を目指す」と話しましたが、実現できませんでした。
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