専門家たち、「通貨スワップが結べないのは、米国が韓国の金融をおそれていないからだ」、「円安は日本がしかけたわなだ」など

結局、米韓通貨スワップに関してはこれといった話もなかったイエレン財務長官の訪韓(そもそも、そんなことを話すための訪韓でもなかったでしょう)。それでもまだまだ韓国メディアは、一部を除いて、協力するといった、結局は通貨スワップを結ぶという意味だ、などと記事を出しています。米韓首脳会談のあととまったく同じ流れです。あのときも、通貨スワップに準ずる内容だとする記事が結構出てました。

ただ、本ブログでもいくつか紹介してきましたが、一部のメディアは、「これでは何の進展もないのと同じだ」という趣旨の記事を出し、本当にこれでいいのかと主張しています。左側のメディアは尹政権を牽制するためにやっているかもしれませんが、右側以外はほぼ同じ趣旨の記事を出しており、与党側からも通貨スワップを主張する声があり、いろいろ『まとまっていない』状態が続いています。

 

そんな中、「米韓通貨スワップが結べないのは、米国が韓国の金融をおそれていないからだ」としたり、円安を「日本がしかけたわなだ」としたり、どうも見方の基準点がよくわからない主張も出ています。分析そのものが間違っているというわけではありませんが、どうも見方というか、心理というか、そんなところが、ぶれているとしか思えません。今朝にもまた、KAIST金融専門大学院キムテス教授が「ソウル経済」寄稿文で、「同盟だから、常設通貨スワップを要求してもいい」と主張しました。ただ、金融だけではアメリカが韓国をおそれてないから、他の分野も一緒にやろう、と。

寄稿文は、中国とも通貨スワップを結んでいるのに、『同盟』米国と結んでいないのはどういうことだとしながらも、韓国の金融部門の弱さを指摘しています。「G-SIBは互いに絡み合って国際金融生態系を作っている。いずれかの銀行に問題が起こると、米国とて大きなダメージを受けるしかない。 残念ながら、韓国にはG-SIBが一つもない。アメリカがおそれるに及ばないのだ」、と。

 

G-SIBといのは、Global Systemically Important Banks、世界の金融システムにおいて重要とされる銀行のことだそうです。教授によると、米国と常設通貨スワップを結んでいる5カ国、日本、EU、イギリス、カナダ、スイスのG-SIB銀行の数は、17(EU 8、日本3、イギリス2、スイス2、カナダ2)。 そして米国に8つ。これら17行の銀行で、世界全体のG-SIBの80%以上を占めている、とのことでして。

教授は、こんな状況で『金融』だけで通貨スワップを要求しても意味がなく、尹政権が他の分野(例えば、対中牽制など)にも積極的に参加することで、それを通貨スワップまで繋げる必要があるとしています。それを「おそれる」と表現するあたり、本当に同盟としての関係を意識しているのかどうかわかりませんが。

 

このように、うんたらかんたら、ユンたらムンたらな状態ですが、もう一つ、『円安』と通貨スワップを繋げる記事もありました。こちらは延世大学校経済学部教授の寄稿文で、『米韓通貨スワップで為替レートが安定したら、そのとき韓国経済は円安の影響をもろに受けることになる』というのです(アジア経済)。いや、わななのかどうかはともかくして、通貨スワップできていないからそんな心配はしなくてもいいのでは・・な気もしますが。寄稿文は、円安を「日本がしかけたわな」としながら、いまはウォンも通貨安状態だから目立っていないだけで、もしウォンの為替レートが安定すれば、円安の影響は決して少なくない、としています。そして、その対処は決して容易ではない、とも。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<米国が金利を大幅に引き上げながら、世界は資本流出を防ぎ、インフレを下げるために金利を上げる同調政策を取っている。しかし、日本だけはこれと逆で、通貨において緩和政策を運用している。日本がこのような政策を使うのは、円安を通じて輸出を増やそうとしているからだ。実際の円の為替レートは、米国が追加的に金利を上げれば年末まで140円台後半になるという見通しも出ている。日本銀行の黒田東彦総裁も、これまでの緩和的通貨政策を今後も持続することを明らかにしている。

それにより、韓国の輸出競争力は大きく低下すると懸念される。過去にも円安で輸出が減少して貿易赤字が拡大し、韓国経済は資本流出でピンチを経験したことが多い。韓国経済は為替レートが高く(※韓国の表現で「通貨安になる」)なっても問題であり、韓米通貨スワップで為替レートが低く(※通貨高)なっても問題となる、為替レート政策にジレンマを抱えているのだ。もちろん、エンジャーが過去ほど重要ではないという見方もある・・

・・しかし、韓・中・日の産業構造と貿易構造が共に製造業構造として類似していることから、円安の影響を過小評価すべきではない。特に、円安が大幅に進んだ場合、韓国の輸出はもちろん、旅行のようなサービス貿易でもその影響は大きくなる可能性があり、そういう点でも、円安という罠を警戒する必要がある。米国の金利引き上げは、韓米通貨スワプロの解決策を見つけることができる。しかし、米国の金利引き上げと円安が同時に来た場合には、対応する解決策はこれといって無い・・>>

 

で、ここまではともかく・・寄稿文はここから『だから、こうすればいい』という内容になりますが、それがなかなかのK(傑)作です。「まず、輸出増大と国内物価安定を両立できる適正水準で為替レートを安定させる必要がある」、「国内経済の不安要因を解決する必要もある。インフレによる賃金引き上げの要求と、金利引き上げによる家計負債問題、不動産バブル問題は、経済の信頼にかかわる問題だ。金利を上げてインフレ期待値を下げつつ賃金引き上げ要求を減らし、規制緩和・租税政策正常化で家計負債と不動産バブルを管理すべきだ」、「政策当局は日本の円安に対して慎重な対応戦略を樹立する」、などなどです。

いや、それが出来るならすでにやっているはずですが・・というか、「解決法はありません」と書いてあるように見えるのは、私の心が曇っているからでしょうか。というか、このやり方なら宇宙平和のための解決方法もすぐ書けるのでは・・な感じがしました(パク長官っぽく)。次の更新は、17時頃になります!

 

 

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