中国「THAADに対する反対立場は、韓国に対するものではなく米国に対するものだ」 → 米国「THAADは韓国政府の要請で配置したものだ」

前にもお伝えしましたが、中国政府が尹錫悦(ユンソンニョル)政権に対して「3NO」の遵守、特にTHAAD問題を圧迫しています。そんな中、米国国防総省が、THAADは韓国政府の要請によって配置したものだと言い切りました。尹大統領は外交部(外務省)に対し、「中国側が『誤解』しないように積極的な外交をするように」と特別注文を出しています。8月には外交部長官(外相)が訪中することにもなりました。しかし、もしその外相会談かなにかで、中国側がTHAAD関連で「それは韓国の要請によるものなのか」と聞いた場合、尹政権は『うわあぁぁ』以外に言えることがあるのでしょうか。

さて、最近の数日間のことを簡単に振り返ってみると、25日、朴振(パクジン)韓国外交部長官は、国会の対政府質問で、「3NO政策は、私たちが中国で約束したり合意したりしたのではなく、私たちの立場を説明したものだと知っている」、「私たちの安保に関連する事案であり、安保主権は当然私たちの判断で結論を下さなければならない」、などと話しました。安保にかかわる内容だから、3NOはやめることもできる、と。

 

このことで、ジャオリーゼン中国スポークスマンは定例ブリーフィングで、「韓国は2017年にTHAAD問題に対して丁寧な立場を明らかにした」、「米国が韓国にサードを配置することを中国が反対する立場は、韓国に対するものではなく、中国の戦略安全保障に対する米国の試みに対するものだ(ニューシース記事より)」、と話しました。前の指導者の負債から目をそらしてはならない、とも。この後に引用する朝鮮日報の記事も指摘していますが、全般的に、『国家間の合意だ』とする内容です。

これは、メディア(特に官営メディア)の主張ではなく、スポークスマンが直接話したことなので、いままでよりは強い圧迫になる、というのが一般的な見解でした。そして、この発言に対し、特に赤いマーカー付けた部分に対し、米国国防総省は『THAADは韓国の要請で配置したものだ』と話しました。ある意味、『返事』をしたわけです。また、朝鮮日報(朝鮮BIZ)の記事によると、これからTHAADに関する内容は、米韓の合意によって決定されるだろう、とも。これからどんな決定が下されようとも、韓国政府も同意したことになる、との意味です。なんというか、「韓国はすでに数十年前に、『どちら側なのか』を選んでいる」とした、2020年の米国国務省の発言と同じ流れにも見えます。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・中国外交部が韓国政府に「THAAD(高高度ミサイル防御体系)関連の3NO」の維持を公開的に要求した中、米国国防総省は批判的な立場を明らかにした・・・・文在寅(ムン・ジェイン)政権の時から、当局者たちは、3NOは国家間の合意や約束ではなく「現象維持」について、政権の立場表明だったと説明した。 しかし、中国は、政権が変わっても遵守すべき国家間合意とみなす視点を、連日、明らかにしている・・

・・マーティン・メイナス米国防総省のスポークスマンは、中国外交部ザオリーゼン スポークスマンが3NO政策の維持を公開的に要求したことに対し、米国の声(VOA)放送の論評要請に、「THAADは外部の脅威をそし、韓国の主権を保護するため、韓国政府の要請に応じて配置された、安全で信頼できる防御体系だ」と話した。また、「今後の配置に関するいかなる決定も、韓米両国間の合意によって決定されるだろう」と話した・・

 

・・エイブラムズ前在韓米軍司令官も、韓国を圧迫する中国政府リュシャオミン特別代表のツイッター文に反論した。リュ代表は去る27日、「韓国が2017年明らかにした、THAAD問題に対する態度は、両国の相互信頼を高め、協力を深化する上で重要な役割を果たした」とし、「隣国の安全に関する重要な問題について、韓国は慎重に行動し、根本的な解決策を求めなければならない」と述べた。これに対してエイブラムズ元司令官は「韓国南部地域のTHAADが、中国の戦略的安全保障に何の問題があるのか説明してほしい」とし、「サードは地域防衛システムであり、中国の先端センサーはTPY-2レーダーがどのモードで動作するのかも区別できる」と指摘した(朝鮮BIZ)・・>>

 

政権が変わっても、中国関連の政策はそこまで変わったようには思えません。韓国メディアには『完全に変わった』『戦略的曖昧さはもう無い』とする記事が多いですが、どうしても私にはそうは見えません。昨日の午前のエントリーに書いたばかりですが、だからこそ中国も『やり方を変える必要は無い』と判断したのでしょう。米国側の対応も同じです。『数十年前に~』発言と同じく、何も変わっていません。

繰り返しになりますが、(どうせ公表されないでしょうけど)外相会談で中国側が『韓国の要請によるものだって』と話した場合、パク外交部長官は、なんと答えるのでしょうか。それを『誤解だ』とでも言うのでしょうか。じゃ、米国側が話したのは事実ではない、ということになりますが、それでいいのでしょうか。それから米国側には何と話すのでしょうか。あ、そうか。米国にも同じことを言うのでしょうか。それは誤解だ、と。

 

 

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