中国外務省、「世界のサプライチェーンを(米国から)守るべきだと、中国と韓国が同意した」と発表

中国の外交部(外務省)が、公式に「サプライチェーンの安全を揺るがす行動(※米国)に対し、中国と韓国がともに阻止すべきだと同意した」と資料をアップロードしました。「サプライチェーンの守護に韓国と中国が同意した」とのことですが、『誰から』守るのか、が問題でして。言うまでもなく、米国が世界のサプライチェーンを揺さぶっているとし、その米国から守護するという意味になります。

本当に朴振(パクジン)外交部長官がそんなことに同意したのか、米国だと書いてないから何も考えず言ったのか、同意してもいないのに中国外交部が適当に発表したのか、非公開にしてくれると信じて同意したのか、どうなのかは分かりません。でも、なんというか、この発表だけだと、完全に仲間(一味?)同士の会合か何かのようです。今朝お伝えした「THAADの適切な処理」の件もそうですが、これらの発言が出てきた時点で、すでに中韓外相会談は『やらなければよかった』ものになったと言えるでしょう。

 

もし尹錫悦(ユンソンニョル)政権が、一部の韓国メディアが報じている(信じている?)ように、もう米国側に舵を切っており、中国が何を言おうと、自由民主主義陣営の一員として居場所を守る決意をしていたなら、むしろこれらの発言は『成果』だったともいえます。「一応、隣国に説明義務は果たした。しかし、何を言われようと、私たちの路線は変わらない(静かに帰国しながら背中で語る、画面が暗くなって次回予告へ)」と、これからの行動で国際社会に韓国の決意と進む道を示すこともできたでしょうから。しかし、最初から、ユン政権にそんな意志はありませんでした。

そもそも大統領が朴振(パクジン)外交部長官に注文したのは、『中国が誤解しないようにしろ』だったし、それから、大統領室関係者などは「中国と『も』半導体関連協力を強化する」と話しました。王毅外交部長の「THAAD処理」「共に阻止」などの発言は、少なくとも今の韓国側が示している条件を、中国は受け入れないという意味になります。条件と言っても、『国益のためのものだ』とする説明、中国とも協力を強化するという提案などですが、そんなものが通じるはずがないでしょう。

 

多分、ですけど、ユン政権はこれから、「それでも、私たちの路線は変わらない」ではなく、「じゃ、追加で何を用意すればいいだろうか」を考えることでしょう。そして、結果的には、昨日の夕方にお伝えした『そのグループの内側から、バランスを取って是正する役割』という言葉に釣られるのではないか、そう思われます。どのみち、『ユン政権が事前に期待していた側面』からすると、すでに外相会談は失敗です。中国との関係においても、米国との関係においても。聯合ニュースによると、他にも韓中FTAに関する話もあった、とのことです。また、後述しますが、一つ前のエントリーで紹介した「韓国外交部は、中国の『THAAD適切な処理』発言を発表しなかった」関連内容が、聯合ニュースなど大手にも載るようになりました。以下、<<~>>で引用したいと思います。

 

<<・・中国が、9日に開かれた韓中外交長官会談で、米国のグローバルサプライチェーン再編の歩みを批判し、韓国と中国が共に阻止しなければならないという立場を明らかにした。中国外交部は10日、ホームページに、パクジン外交部長官と王毅国務委員兼外交部長の会談結果関連資料を出し、それとは別に、「中・韓、サプライチェーン安定の守護に同意」という題の資料を載せた。この資料によると、王部長は会談で、「現在のグローバル化が逆流にさらされており、個々の国家が経済を政治化し、貿易を道具化し、標準を武器化して、グローバル産業ネットワークとサプライチェーンの安定を揺さぶっている」と批判した。これは、アメリカに対する発言だ。

王部長は「中・韓 両側は、市場規律に違反するこのような行動を共同で阻止し、両国と全世界の産業ネットワーク、サプライチェーンの安全と安定を共に守護しなければならない」と強調した。韓国が米国主導の半導体サプライチェーン協議体(チップ4)予備会談に出席すると決めた中で出てきたこの発言は、半導体サプライチェーンから中国を外そうとする米国の試みに韓国が参加してはならないというメッセージを内包した「牽制」だと解釈される・・

 

・・中国外交部はまた、「両側(パク長官と王部長)は、中韓自由貿易協定(FTA)2段階交渉を加速化し、できるだけ早期に合意を引き出すことにした」とし「両側は産業・供給ネットワークの安定維持に関する業務に対する対話を展開し、産業・供給ネットワークの完全性・安全性・円滑性・開放性・包容性確保に注力することにした」と紹介した。これと共に中国外交部は、THAAD(高高度ミサイル防御体系)問題に関する別途の資料で、王部長が中国の安保の懸念を重視し、問題を適切に処理しなければならないと要求した事実を公開した(聯合ニュース)・・>>

THAAD関連の部分は一つ前のエントリーと重複するので、省略します。ただ、雰囲気が変わってきた、という点だけ、ちょっとだけお伝えします。THAAD関連で、「韓国外交部は、『適切な処理』『安保の懸念』などについては発表していない」と、ちゃんと大手の記事にも載るようになりました。今朝の時点では、これに触れていない記事がほとんどでした。会談結果に関しても肯定的なものが多かったです。また何か書けない理由でもあるのか?と思いましたが、どうやら、韓国外交部の発表だけで記事を出していたのが原因のようです。午後になって中国側の発表内容が伝えられ、雰囲気が変わってきました。

 

中国は、笑いが止まらないことでしょう。ユン大統領がペロシ議長に会わなかったのは、今回の外相会談のためだと言われています。にもかかわらず、尹政権は中国から何も引き出すことができず、「韓国が中国の主張に同意した」と発表されてしまいました。大統領候補だった頃から米国との関係改善、米韓同盟のアップグレードを強く主張してきたユン大統領。しかし、クアッド加入も、戦略核兵器再配置も、通貨スワップも出来ず、米韓同盟関連で(前からあった共同演習などが再開された以外は)これといって展開があるわけでもありません。北朝鮮関連で何か進展があるわけでもなく、日韓関係においても外相会談だけで3回やったのに何の進展もなく、そして、急に中国関連でいろいろ言い出して、今回、この結果です。これでいいのでしょうか。ユンたん。

 

 

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