日本に対していつも「日本『も』~」「共に~」と話している韓国の朴振(パクジン)外交部長が、中国で「韓国も」「共に」と散々言われました。一部の韓国メディアが、これを「5不(5NO)」要求と呼んでいます。今回の韓中外相会談で、中国側が「中国も韓国も、ともに守ること」として示した5つの事案のことですが、見た目だけはそれっぽく出来ているけど、その意味は、明らかに韓国側に5つの誓いを要求するものです。ニューデイリーがこの件を「5不」と呼んでから、毎日新聞(日本の毎日新聞とは違います)など一部のメディアが、同じ用語を使っています。
5つの事項とは、短くまとめますと、「自主独立的であること」、「互いに配慮すること」、「サプライチェーンを共に守護すること」、「内政干渉しないこと」、「国連憲章の趣旨と原則を守ること」です。ニューデイリーはこれらについて、こう分析しています。まず最初の3つ、「自主独立を堅持し、外部の障害と影響を受けないこと」、「重大な関心事においては互いに配慮すること」、「多国間主義を堅持し、国連憲章の趣旨と原則を守ること」は、そのまま「3不(3NO)」です。米国のミサイル防御体系(MD)に編入しない、THAAD追加配置しない、日米韓同盟を作らないという内容の延長線でしかない、と。
その次、4つ目の「安定的で円滑なサプライチェーンと産業ネットワークの守護」と「相互に内政に干渉しないこと」は、インド・太平洋経済フレームワーク(IPEF)と半導体供給のための「チップ4」など米国が主導する経済ブロックに編入しないこと、また、両岸(台湾)問題において、台湾や米国側に立たないようにせよ、という意味になります。それっぽい言葉を並べているけど、結局は今までの3不主張から何も変わっていないし、しかも2つ増えて5不になっている、というのです。
さらに興味深いのは、これらの5つの事項は、「韓国と中国が、共に守らなければならないことが5つある。でも、中国はすでにやっているのでこれ以上やることは無い」として提示された点です。率直に言って、韓国が台湾問題にどう関わろうが、チップ4加入しょうがしまいが、中国にそれを決める権限はありません。また、共にと言いつつ、中国側が何かをするとも言っていません(すでに十分にやっている、と話しています)。ここでいう『共に』というのが、実は韓国に対する一方的な要求に過ぎないことが、よくわかります。流れや中身は違う点も多いですが、日本に対して「日本『も』」「共に」「拍手は片腕だけではできない」などと話してきた、韓国側の対応と似ている気もします。以下、<<~>>でちょっと引用してみます。
<<・・韓国側は、「サード配置を理由に行われた限韓令を解除し、北朝鮮の挑発抑制および非核化のために動く」ことを中国側に要求した。しかし、王毅中国外交部長は、パッとしない返事だけを並べた。王部長は「中国は、韓中関係の重要な部分である人的・文化的交流強化に積極的な態度を取っているので、そのために努力していこう」とだけ話したと伝えられている。北朝鮮問題に関しても、王部長は「中国は朝鮮半島の平和のために可能な限りの努力を続けていく」という、マニュアル的な回答だけを出した。しかも、中国側は、既存の「3不約束」に、台湾問題の不干渉とチップ4など米国中心の経済協力に参加しないよう、要求を出した。
王部長は「韓中両国が守らなければならない事項」として、「自主独立を堅持し、外部の障害や影響を受けないこと」、「互いに重大な関心事に配慮すること」、「安定的で円滑なサプライチェーンと産業ネットワークを守護すること」、「相互、内政に干渉しないこと」、「多者主義(※多国間主義)を堅持し、国連憲章の趣旨と原則を守ること」の5つを要求したことが分かった・・・・これをめぐって国内では、「中国が3不を取り消すどころか、5不を要求してきたのだ」との解釈が出ている(ニューデイリー)・・>>
同じく、マーカー付けましたが「努力していこう」と話したこともまた、とある騒ぎに似ています。この場合は逆バージョンになるのでしょうか。読者の皆様もご存知でしょうけど、NATO首脳会議で岸田総理とユン大統領が会って、軽く挨拶を交わしました。それから、韓国外交部は、岸田総理がユン大統領に「努力しよう」と話した、と発表しました。まるで、『共に努力しよう(日本も何かをする)』と言ったかのような、そんなニュアンスです。しかし、後で日本外務省の発表内容によると、岸田総理は『(ユン大統領が)努力を尽くしてほしい』と話しました。
同じく、方向性や中身は違うことも多いですが、似たようなやり方(落とし方?)の話です。パクジン長官としては中国に「努力する」と言ってほしかったのに、「努力しよう(韓国も何かしろ)、ちなみに中国はすでに努力している」と言われたわけです。やり方がまったく同じ王さんとパクさんがケンカしていて、王さんのほうが上手、といったところでしょうか。
それでも、地上波放送を含めてまだまだ多くのメディアが、「無難な会談だった」「なかなか有効的な雰囲気だった」などと、妙な解釈を記事にしています。例えば一つ前のエントリーで紹介した「宣誓」ですが、中国外交部の原文には「宣示」、えいごでは「officially announced」になっている、とのことでして(宣言や宣誓は韓国でも使う言葉ですが、宣示という言葉は使いません)。一部のメディアは韓国外交部の分析を引用し、「宣示や公式的にアナウンスしたというのは、今まで中国が主張してきた『合意や約束』よりは弱い表現であり、これは韓国に配慮したものだ」としています。さすがに、ちょっと無理があると思いますが。逆に、朝鮮日報など一部のメディアは、「今回の外相会談は、共同声明もなかった」としながら、中国に対してもっとハッキリと強いスタンスを示さなければ報じています。そういえば、そうですね。
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