朝鮮日報のパリ特派員が書いた記事を一つ紹介します。内容は、「ちゃんとしたスタンスも示さないで、国益がどうとか言ったところで、誰もそんな言葉を理解してくれない」というものです。韓国は、地理的な概念ではなく民主主義という意味で『西側』の国であり、また、そうであるべきだ、その点をもっとハッキリしないといけない、と。
朝鮮日報の記事そのものの趣旨は、理解できます。急にG8がどうとかの内容が出てくる以外は、保守メディアとして、相応の記事だと思います。特に、「どっちつかずのスタンスで実利を取るズルいだけの論理が、賢明な知恵のように受け入れられている」とする指摘は、まさにその通りとしか言いようがありません。記事の中で特に気になったのは、詳しくは書いてないものの、韓国の外交政策、対日、対中、対北政策において、ヨーロッパの外交当局者たちが不信を抱いているとの内容です。特派員ならではの経験談、とも言えるでしょう。特に、『(韓国の外交政策の)本音はいったい何だ!』と言う人もいた、とのことでして。以下、ちょっと引用してみます。<<~>>が引用部分となります。
<<・・韓国は確かな西方(※以下、『西側』にします)国家だ。 20世紀以降、政治・経済・文化すべての面で西側世界の枠組みの中で成長した。市場資本主義・自由民主主義・三権分立など西欧的価値に基づいており、米国と西側の国々が70余年前に自国民15万人を犠牲にして守った国であり、彼らとの交流・協力を通じて世界10大経済強国に成長した。西側を代表する主要8カ国(G8)候補とまで取り上げられている。
だが、国民はもちろん政治家たちも、「韓国は西側国家」という命題に、疑問を持つ。さらに、関連したアイデンティティを曖昧にすることこそが「国益」だと考える人もいる。「安保は米国、経済は中国」のように、灰色地帯で実利を取るというズルいだけの論理が、賢明な知恵のように受け入れられている。このような思考方式が広がっているため、同盟国の議会代表を門前払いしておいて「国益のための選択」と話すこともできるのだ。何の持論もなく信頼を削るだけの行動を国益だと標榜することに、慣れてしまっている。
韓国の対外政策が、他の西側諸国や同盟国を追従しなければならないと言いたいわけではい。自分が立っている立場が明確であってこそ、自主たる外交が可能だと言いたいのだ。言い訳だけ繰り返していると、国際社会の信頼を失う。そんな国の国益判断は、国家権力を掌握した特定勢力の利益に過ぎないという認識を与える。多くのヨーロッパの対外政策当局者たちが、韓国の対北・対中・対日政策をめぐって、そのような疑問を抱いている。「韓国の本音はいったい何だ」と尋ねる人もいた。
残念ながら、中国はこれをよく知っていて、利用している。アイデンティティが弱く、『芯』も強くない国だと見て、『操鍊』すればいくらでも「中華世界」に編入させることができると見ているのだ。THAAD問題をめぐっての干渉や、変わらない行動で韓国を追い込み続けるのも、そのための過程ではないだろうか。アイデンティティが弱いのは、未成熟な人の特徴だ。韓国はもうそんな段階から抜け出さなければならないだろう。世界が新冷戦に向かっている中、どんな戦略を立てようが、「西側の一員」という自己認識だけは確実でなければならない。寓話で、コウモリは、曖昧なアイデンティティに陥り、どっちつかずのまま、両側から捨てられた。国際社会でも、それは同じだ(朝鮮日報)・・>>
繰り返しになりますが、G8がいきなり出てきた以外は、珍しく「『状況の一部』としての自覚を持て」と、よく書いた記事だと思います。でも、これが外交政策だけの問題、いわば、政権の問題なのでしょうか。対日はともかく、対中で曖昧になったのは、もうずいぶん前のこと。結局、その『どっちつかずで甘い汁だけ吸いましょうよ』としているのは、世論そのものではないでしょうか。まだ政権交代になる前の調査ではありますが、今年1月3日「アジア経済」が「米中の間で韓国が取るべきスタンス」に関して調査したところ、60%が「戦略的曖昧さを維持する」を選びました。
<<・・「米国・中国間の葛藤状況の中、韓国政府の適切な態度を問う質問に、回答者60.3%は『両国間で戦略的曖昧さを維持しなければならない』と答えた。続いて『伝統的同盟関係である米国との関係をさらに重視しなければならない』という回答が28.4%、『経済的依存が大きいため、中国との関係をさらに重視しなければならない』という回答は6.8%にとどまった(アジア経済、2022年1月3日)・・>>、と。保守支持がもっとも強いとされる大邸(テグ)・慶尚北道(キョンサンブクド)地域でも、「米国との関係を優先すべきだ」と答えた人は40.4%でした。
毎日経済の論説委員が書いたフォーラムに出てくる表現ですが、韓国の世論は、朴槿恵政権では「これが国か」として、文在寅政権のときには「これは国か(※じゃ、これは国か)」になって、いまの尹錫悦(ユンソンニョル)政権では、多分このままだと、「これも国か(※これでも国なのか)」になるだろう、とのことでして(毎日経済)。政権が変わっても結局は『国じゃない』モードになるしかないのは、ある意味、国民に共通する国家としてのアイデンティティーが無いまたは弱いから、ではないでしょうか。
いわば、『国って何だ?』という考えがはっきりしていないわけです。本ブログのコメント欄でもそうですが、『独立できていない』と言われている所以でもあります。実際、先の朝鮮日報の記事だと、特派員さんは読者から韓国は「(地理的に)西側ではないのに、なんで西側の国だと言うのか」とする質問を受けることがある、とのことでして。「これがG8か、これはG8か、これもG8かとは言っているけど、実際にG8として何をやるのか、そんなことまでは考えていない」と書けば、まとめになれるかもしれません。
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