尹錫悦(ユンソンニョル)大統領、就任100日となりました。なにか記念演説もしているし、各メディアが関連記事を載せています。このタイミングなら8月15日の演説で一緒にやってもよかったのでは・・な気もしますが。本エントリーは、北朝鮮関連では最後に記事を一つ引用しますが、主に、『私が感じた尹大統領の100日間』となります。
さて、尹政権関連の、韓国側の記事を読んでみると、日本関連でズレているのはいつものことだとしても、米国関連で『すでに尹政権は、米国側だと示した』とする主張が『定番』となっています。米国側に傾きすぎだと不満を表出する記事すらあります。これは、個人的には実に驚きです。米韓首脳会談からして、尹政権の対米外交は空振りの連続でした。個人的に、尹政権になって前政権、ムンたんのときと変わったのは、米韓共同軍事演習の実起動(PCシミュレーションではなく)が再開されたこと『だけ』だと思っています。しかし、それもあくまで北朝鮮に向けてのもの。
いままで尹政権は、北朝鮮問題で積極的なスタンスを示すことで、米国の対中政策から『例外』を認めてもらおうとしてきました。これは米国だけでなく日本に対しても同じで、尹錫悦氏が初めて出馬宣言をしたとき、日韓関係改善のために各懸案の一括妥結を主張し、それを「グランドバーゲン」としましたが、その際も、『韓国が安保(北朝鮮問題)に協力する』を強調しました。当時、2021年6月29日のハンギョレ新聞は、尹氏が具体的には言及しなかったものの、「日本が求めてきた安全保障協力の分野で足並みをそろえる対価として、各懸案で譲歩を得ようとする構想だと思われる」と分析し、「しかし、日本政府がこのグランドバーゲン構想に好意的な反応を示してくれるのだろうか」と疑問を提示していました。
この「北朝鮮問題で頑張るから、いろいろ例外にしてくれ譲歩してくれ」という路線を、本ブログでは『用北』という言葉で紹介したりしました。しかし、それから日本は「一貫した立場」を崩さなかったし、米国もまた、すでに北朝鮮問題を中国問題と一つの案件、どちらかというと中国問題の一部だと見ていたため、これといった反応を示しませんでした。用北でなんとかなると思っていたなら、それは大間違いです。実際、尹大統領が候補のときから主張してきたクアッド加入は、認められませんでした。東亜日報(7月)はこの件で、尹氏が(まだ大統領就任前に)米国と日本に政策協議団を派遣したのは、最初からクアッド首脳会議に参加するためだった、と分析しています。記事の題には、『期待と現実』という指摘が入っています。
「新政権発足直後に日米韓首脳間の会談を相次いで行い、3国間の共助体制を迅速に復元するという破格的な構想を推進していたのだ。尹大統領就任式に岸田文雄日本首相が祝賀使節として出席し、その十日後、ジョーバイデン米国大統領の韓国訪問に続き、韓米首脳が一緒に、日本で開かれるクワッド首脳会議に参加するという、実にもっともらしい構想だった(記事より)」、と。しかし、それは岸田総理の訪韓・首脳会談が前提になっていたため(そこで日本にもクアッド関連で了解を得る必要があった)、それさえできれば米国が韓国のクアッド加入を断る理由などなかった、という展開です。しかし、日本も米国も、韓国のこの構想には応じませんでした。
読者の皆さんもご存知でしょうけど、それから尹政権は、韓国はイエレン財務長官の訪韓の際、通貨スワップ締結に失敗したり、日本との外相会談が成果なくおわるなど、これといった進展がなく、支持率は下がるばかりでした。それから尹政権は、目に見える形で、急速に中国に対して低い姿勢を見せるようになりました。最近、尹大統領の支持率はやっと30%台に復帰できたと聞きます。ペロシ議長と会わなかったことなどで結構話題になっていたのに、保守大統領の支持率が上昇したというのも妙な話です。韓国世論は米中の間での『戦略的曖昧さ』を支持しているという調査結果もありますが、そういうのが影響したのでしょうか。ただ、その中国との関係も、いまのところ、よくなる兆しは見えません。
その中、15日の光復節演説において、北朝鮮に「非核化を前提に大規模支援を行う」とした、いわゆる『大胆な構想』が、また問題になっています。いままで北朝鮮関連で強硬な姿勢を示し、関連問題で前政権の捜査までしている大統領が、いまになって「『太陽政策(金大中政権が行った宥和政策)』をやりますんでよろしく」といったところで、それで何の成果が得られるというのか、と。韓国経済は、この件だけでなく、どうしてこうも『方向性が変わるのか』とし、一貫した姿勢などどこにもないと指摘しています。それに、大統領室は、『北朝鮮が協議に出てくれるだけで、国連制裁なども先に解除してやる』と話した、とのことでして・・これは、明らかに日米の路線とは異なるものです。もう対北政策すらも、ブレてきたのでしょうか。ここからは<<~>>で引用してみます。もう『オチ』は結構書いたので、引用して、そのまま終わりにします。次の更新は、またいつもの16~17時に致します。
<<・・専門家たちの反応は、パッとしなかった。経済協力を対価として北朝鮮の非核化と開放を誘導する「日差し政策(※太陽政策)」は、既に前の政権でも何度もやって、うまくいかなかったからだ。もちろん、今回の「大胆な構想」にも、破格的な内容もある。大統領室は、北朝鮮が非核化交渉に乗り出した場合、初期段階で経済協力を推進し、国連制裁まで先制的に解決できるという意思を示した。ただ、この破格的な内容は、大統領の演説には入らなかった。北朝鮮が切実に望んでいる「体制安全保障」についての内容も用意したものの、公開はしなかった。尹大統領の初の光復節祝辞が、『アンコのないアンパン』になったという話が出てくるわけだ。外交情報筋たちは、『国連や米国と、事前協議が十分に行われていないからではないか』という観測も出ている。
大統領室の内外から、「事前に緻密に準備して推進しなければならない保守政権の外交・安保政策が、あまりにも下手だ」という批判も提起されている。「先月まで脱北漁民の件などで世論にアピールしていた大統領室が、対北宥和政策を発表したところで、北朝鮮がそれを信頼するだろうか」(ジョンソンジャン世宗研究所北朝鮮研究センター長)の言葉は、特に耳に残る。ナンシー・ペロシ米下院議長の訪韓の時も、大統領室の参謀たちは何の原則もなく、混乱する姿を見せた。なぜ会わないのかという指摘に押され、ユン大統領が翌日に電話通話を試みたなど、もはや外交においては惨事に近い。文在寅(ムン・ジェイン)政権の外交・安保政策を、『アマチュアだ』と批判してきた保守政権が、いまやっていることだ(韓国経済)・・>>
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして新刊・準新刊のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2022年6月1日発売)からですが、<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>です。アマゾンページに書いてある、「私はただ、日本が好きだから、日本人として生きたいと思っています」本書の全てを表していると言えるでしょう。そんな本です。 ・準新刊<「自由な国」日本「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書) >は、日本滞在4年目に感じた「日常」と、ラムザイヤー教授論文騒ぎにまつわる、日韓の対応の差などをまとめました。2021年発売版に、相応の追記を致した新書版です。 ・韓国に蔓延する対日観について考察した<卑日(扶桑社新書)>も発売中です。なぜ今の韓国に、日本に対してこんな対日観が必要になったのか。それを自分なりに考察、率直に書きました。・新刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。旧「インフォメーション」もこちらに統合してあります・本当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。