韓国軍、日本自衛隊機に対し「火器管制レーダー照射」指針を運用中・・指針の破棄を検討

韓国では政権が変わると、「現在の問題は、私ではなく、前任者の責任だ」を確実にするための調査が行われます。軍事政権が終わったときも、左派政権ができたときも、それからもそれからも、この現象は続きました。新しい大統領になると『和解や統合』を主張しますが、自分側と相手側に向ける基準が違い過ぎで、結果的には何の効果もなく(本当の統合とは、自他に同じ基準を適用することから始まります)、これからもずっと続いていくことでしょう。残念ながら。

ただ、皮肉なことではありますが、その『前政権に対する調査』が、なかなかの成果を出すことはあります。例えば、軍事政権が終わったあと、それまでは一切表にでなかった、朝鮮戦争のときの韓国軍の問題などが、証拠(資料や遺体など)とともに明らかになったりしました。こういうのは、意図はどうであれ、調査の成果だったと言えるでしょう。今回、また似たような展開がありました。まだ成果と言うには微妙ですが、なかなか大きな情報です。

 

うまくいっているものが一つもないので逆に説明しづらい気もしますが、現在、尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、日米韓安保協力という側面で、非常に困っています。本ブログでも何度か取り上げましたが、米国は日韓の安保協力を、いまの「日米韓」から、「日韓」でも出来るようにしてほしい、と要求しています。過去エントリーでも紹介したことがありますが、まだまだ非公式ではあるものの、米国側から日韓相互防衛という言葉が出てきたりもしました。

まず国内世論的に無理で、また、中国との3NOに関する問題(日米韓安保協力は、3国同盟にはならない)もあるので、尹政権がいますぐ日韓相互防衛に同意するとは思えません。ただ、同盟まではいかないにせよ、米韓関係を考えると、日本ともある程度は協力するスタンスを見せないとならない、まさにジレンマと呼ぶに相応しい状態にあります。そして、この側面で最大の懸案は、あのレーダー照射です。

 

韓国政府はこの件で、「真実を究明するよりは、とりあえず『問題が解決された』ことにしてほしい」というスタンスを取ってきました。8月11日の聯合ニュースですが、日韓局長級協議で、このような主張をしている、とのことでして。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。 <<・・韓日外交情報筋たちは、哨戒機葛藤(※レーダー照射問題)と関連して、「実務的に(韓日間で)協議がなされている」としながら、「両側の認識に差があるため、今となっては、なにが正しいかを問うのは難しい。この問題を一段落できる方法を用意しなければならない」と話した。4年も過ぎた哨戒機の件において、真実を究明するよりは、葛藤を縫合して韓日国防当局交流を復元する方向で議論がなされるだろう、という観測が出ているのだ(聯合ニュース)・・>>

 

「なにが正しいのか」というのは、レーダー照射問題において、日韓どちらの主張が正しいのか、ということです。すなわち、真実究明はもうしなくていいだろう、なかったことにしよう、というのです。本当に、呆れるかぎりです。そして、このニュースが載ってから、1週間が経ち、また新しい情報がありました。中央日報など複数のメディアによると、レーダー照射の件があった直後、韓国政府が「日本の哨戒機に火器管制レーダー照射をする権限」を現場に与える指針を作って、いまも運用中である、というのです。これは中露に対する指針よりも強いものだそうです。

 

<<・・文在寅(ムン・ジェイン)政権で、軍当局が低い高度で近接する日本海上自衛隊の哨戒機に対し、現場指揮官が追跡レーダーを照射するなど、積極的に対応するよう指針を作ったことが確認された。2018年12月~2019年1月、相次ぐ日本海上哨戒機低空飛行に対する措置だった。追跡レーダー照射とは、艦砲やミサイル攻撃の意思を知らせるものだ。ところがこの指針は、韓国防空識別区域(KADIZ)を絶えず無断進入する中国や、領空に入ってくるロシアには適用されない。公海で、日本とだけ、交戦すらもかまわないという趣旨になる。

17日、シンウォンシク国民の力議員によると、2019年2月、軍当局は「日・哨戒機対応指針」を海軍に送った。その年の1月に作成した「第3国航空機対応指針」とは別の指針だ。「第三国航空機対応指針」には、公海で第三国の航空機が味方艦艇に近づく場合、段階的に対応するという内容を盛り込んでいる。第3国の航空機が1500フィート(約457m)より低く接近すれば、味方艦艇は相手を識別した後、通信で警告するなどの「4段階」の手続きに従って行動しなければならない。1次の警告が通じなかった場合、より強硬な2次警告をすることになっている。

 

ところが、「日本の航空機対応指針」は、それより1段階多く、5段階になっている。日本自衛隊機が二次警告通信にも応じずに近づいた場合、「追跡レーダー照射」で対抗するように規定している。追跡レーダーは、艦砲やミサイルで狙おうとする標的の方向、距離と高度を測るレーダーだ。射撃統制レーダーとも言うし、日本では火器管制レーダーと言う(中央日報)・・>>

 

シン議員は、「文在寅政権の方針を端的に表すことだ」としながら、前政権への批判にこの件を使っています。しかし、まだこの指針は運用中です。破棄を検討している、とのことではありますが。繰り返しになりますが、重要なことは、この指針が政権が変わり、国防部長官が変わっても、まだ運用中であることです。「とりあえず問題を一段落させよう」と話しながら、局長級協議で、韓国側はこの指針をちゃんと説明したのでしょうか。文化日報によると、この指針が作られたのは、例のレーダー照射の直後である2019年2月である、とのことです。韓国軍は慎重に破棄を検討している、とも。しかし、同記事に「大統領府は2018年末にすでに指針を作成中だった」とする内容もあります。

一つ確実なのは、韓国軍には日本自衛隊の哨戒機に対し火器管制レーダーを照射する指針が存在しており、それはいまも有効である、ということです。それに、レーダー照射の後にこの指針が出来たとしても、タイミングからして、文政権は照射の件を『よくやった!』と褒めているようなものでしょう。そこまでしないといけない理由は何でしょうか。何を隠し通そうとしていたのでしょうか。尹政権がこの件を『一段落』したいと思っているなら、まずはそこを調べるべきでしょう。日本側としては、その結果を見てから判断しても、ぜんぜん遅くないはずです。

 

 

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