韓中、国交正常化30周年記念式・・いつもとは違う雰囲気に、戸惑うメディアも

日中国交正常化も9月で50周年となりますが、韓中修交も30周年で、そのための記念式がソウルと北京で開かれました。20周年の時と比べると、雰囲気がずいぶん違っていた、とのことです。結論から言いますと、王毅外交部長が参加したものの、事前の予想よりはレベルが低い人で、尹錫悦(ユンソンにョル)大統領と習近平主席の会談も、電話通話もありませんでした。しかも、中国側は直前までイベントの具体的な内容を非公開にするよう、韓国側に要請していたとのことです。

それはそうでしょう。『現状』という言葉がある限りは。むしろ、この期に及んで何か前よりも盛大なイベントが開かれたとするなら、そのほうが不自然です。個人的に、記念式ができただけですごいものだと思っています。関係者たち、さぞ大変だったでしょうね。それでも、一部の韓国メディアは戸惑っています。

 

なぜなら、THAADの件が大きな話題になっていた25周年記念式のときよりも、参加者のレベルが下がったからです。いつものパターンです。ちなみに、中韓両国は、5、10、15周年などを「整周年」といって、それぞれ記念式を盛大に開いてきました。本エントリーはYTNソウル新聞の記事から引用していますが、ニュアンスに多少の差はあれど、ほぼ全てのメディアがこの件を大きく取り上げています。

各紙によると、2012年の韓中修交20周年記念式には、当時『次のリーダーになる』と言われていた習近平(当時)副主席が参加しました。イベント会場も市内のホテルから人民大会堂に変わるなど、明らかに破格のことだった、と言われています。特に次のリーダー、主席とほぼ決まっていた人の登場はまさしくサプライズであり、当時のメディアは『中国がどれだけ両国関係を重要視しているのか、よくわかる』と喜びが隠せない様子でした。今日の記事でも、多くのメディアが『(20周年のときの)彼のサプライズ登場は、韓中関係の重要性を象徴していました』としています。

 

2017年THAADでいろいろ騒ぎになっていた頃、それでも韓中修交25周年行事は行われ、政治協商会議副主席であるワンガン氏が主賓として出席しました。一応、長官よりも『級』高い、副首相レベルの人だった、とのことです。同紙は「THAAD配置が問題になっていた時だったものの、中国側は相応の誠意を示した」としています。ワンガン氏は「中韓両国は長らく隣人でした。両国の間の友好と交流も深く、長い」などと話しました。ただ、8月23日のYTNの報道によると、中国側は今回の30周年記念式、直前まで内容を非公開にするよう要請していた、とのことでして。ここは引用してみます。

<<・・今年の韓中修交30周年イベントは、中国側の要請で、その内容が公開されないでいます。なぜでしょうか・・・・30周年イベントは、ソウルと北京で同時に開かれる予定です。朴振(パクジン)外交部長官と、王毅外交部長が参加し、両国首脳の祝辞を代読することになると伝えられます。王毅外交部長兼国務委員で長官級に該当しますが、(※いままでの)副総理級には及ばないという評価です・・・・記念行事が目の前なのに具体的な日程が発表しないのは、王毅より級が高い「主賓」がサプライズ登場するのではないか、という期待感も読まれます。来月末に50周年を迎える日本と中国の修交記念行事にまけてはならない、という妙な雰囲気も垣間見えます(YTN)・・>>

 

しかし、結果として、サプライズはありませんでした。繰り返しになりますが、王毅部長が参加して、たとえ表面的でもこんなイベントができただけで結構凄いことだと思いますが、何を期待していたのでしょうか。余談ですが、2015年の日韓修交50周年記念式には、当時も結構いろいろありましたが、それでも東京とソウルの記念式には、安倍晋三当時首相と朴槿恵当時大統領が参加していた、とのことです。あのような場面を期待していたのでしょうか。

<<・・韓中修交30周年記念式に王毅中国国務委員兼外交部長が参加した。10年前の20周年行事に当時副主席だった習近平主席が出席したことと比べると、級が下がった。葛藤と協力が交差する作金の韓中関係が反映された結果だと解釈される・・・・「韓中修交30周年」という重要な日に、ユンソンニョル大統領と習主席が、オンライン会談はおろか、電話通話すらしなかったという点、そして、中国の出席者選定は、今の微妙な雰囲気が両国関係の「ニューノーマル」になったことを表している、との解釈が多い・・・・官営メディアのグローバルタイムズは、「サード問題に対する懸念とともに、3カ月連続続いた韓国の対中国貿易赤字、文化面での対立などが、30周年を迎えた両国交流に影を落としている」と指摘した(ソウル新聞)・・>>

 

ユン政権、最近、中国との関係にずいぶんと力を入れてきましたが・・パクジン外交部長官と王毅外交部長の韓中外相会談に続き、30周年記念式もまた、(私が思うに)ユン政権の期待には及ばない結果となりました。本ブログでも相次いで紹介してきましたが、与党重鎮議員が『中国が加入できないグループには韓国も加入しない』と話したり、国会議長が『中国主導のグループに入ることもできる』と話したり、なにより、大統領が『休暇』を理由に、台湾を訪問したばかりのペロシ議長と会わないなど、最近のユン政権の努力(?)はかなりのものでした。でも、これは個人的な意見ですが、そこまでしなかったとしても、外相会談と30周年記念式の結果は大して変わらなかったのではないでしょうか。

で、最後に告知ですが・・今回の『対中外交』も含めて、尹錫悦政権の、日本、米国、中国、そして北朝鮮に対する外交面をメインとした、拙著『尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)』が、9月2日、発売となります。残念ながらお盆休み(印刷所が休みますし)などもあって、安倍元総理の件は間に合いませんでしたが、文政権任期最後の1年と、尹政権の外交政策を並べることで、『政権交代』というのも、ただ『仮面』が変わっただけだということを、いつもどおり、率直に書きました。書きたいことが書けて、幸せです。本当にありがとうございます。

 

 

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