「8月中のTHAAD正常化」も、「8月中の現金化」も無し・・THAADは手続き上の問題もある?

8月19日、韓国最高裁がいわゆる現金化関連で『判断保留(保留判断ではなく、判断そのものを保留)』しました。当時、どこから出てきた話なのか分からないものも、『担当判事の任期が9月4日までだから、8月中には現金化判断があるだろう』という分析が多くのメディアに載りました。ただ、本ブログでも紹介したことがありますが、一部のメディアは『そんな慣例はないし、情報ソースも確かではない。判断を出さないまま、現状のままで長期化するのではないか』という記事を載せ、反論していました。

それでも大手メディアには、数日前まで「8月中に」「あと数日」などと記事が載りましたが・・結局、8月が過ぎましたが、何もありませんでした。「4日までは」という記事を載せているところもあるにはありますが、いまのところ、可能性はそう高くないと思われます。そんな中、朴振(パクジン)外交部長官が、明日、原告2人と直接会うことにしました。直接会って、話を聞くというものです。

 

しかし、関連団体は、外交部が最高裁に提出した意見書(外交的に努力中だという内容で、事実上の保留要請)の件で、まずは外交部がシャザ◯し、意見書を破棄しなければならないと主張しています。◯はイです。読みづらくて申し訳ありません。 ヘラルド経済からの短い引用ですが、<<・・外交部の訪問を控え、原告側を支援してきた団体は、「シャザ◯が先だ」と明らかにした。 1日、市民会は光州市議会で記者会見を行い、「政府は最高裁判所の意見書提出を直ちに撤回し、原告側にシャザ◯せよ」と強調した・・>>、とのことでして。会いに行ったということだけでも、ユン政権としては相応の『アリバイ作り』が出来る気もします。結果はあまり期待しないほうがいいかもですが。

もう一つ、THAAD関連で、8月中にはTHAAD(追加配置ではなく、すでに配置済みのTHAAD部隊)を正常化するという話がありました。環境評価そのもの(10ヶ月はかかると言われています)がまだスタートすらできていないので、その期間を考えると、8月中はまず無理です。8月中という話は国防部長官をはじめ、かなりハイレベルから出てきた話ですが、法的プロセスについて何も考えなかったのでしょうか。いま(8月31日~9月1日)の情報だと、正常化はできていません。

 

ただ、『地上からの接近』だけは、あと数日内に正常化するとのことです。地上からの接近というのは、部隊内で必要とされる装備、兵士や関係者たちが暮らすための物資などを、トラックなどで普通に搬入できるようにするという意味です。『いや、それできて当然だろう』と思われるでしょうけど、いままでは市民団体などのせいで、トラックでの搬入は極めて少ない回数しかできず、主にヘリで物資搬入を行ってきました。既存のTHAAD基地、環境評価が行われなかったのは(朴槿恵氏は任期末がダイナミックすぎでなんとも言えませんが、文政権でずっと環境評価は無く、配置からずっと『臨時配置』のままです)、もちろん政権がやる気を出さなかったというのもありますが、環境評価のためには、『市民の代表』が参加する協議会の存在が必要です。

 

代表といっても、市民団体を介さないとなりません。韓国関連ニュースにはやたらとこの『協議会』という言葉が出てきますが、市民団体の政治勢力化が進んだ結果でもあります。で、肝心の団体のほうからこの委員会に参加せずにいたので、環境評価そのものを始めることすらできなかったのです。7月7日のKBSの報道によると、つい7月にも、この状況のままでした。基地正常化のスタートラインとなる『関連協議会の構成』そのものが、まだでした。前にも引用した記事ですが、必要な部分だけ、引用してみます。

<<・・住民と市民団体など40人余りがソンジュ(※該当地名)の郡庁前に集まりました。国防部が駐韓米軍の高高度ミサイル防御体系サードを正式配置すると明らかにし、「環境影響評価」作業に着手するとしたためです。環境影響評価を推進するためには、公務員や専門家など10人規模の協議会が構成されなければならず、ここには住民代表が必ず含まれなければなりません。しかし、市民団体は中断を求める声が高く、環境影響評価作業は4年経っても進んでいません(KBS)・・>>

 

で、イジョンソプ国防部長官曰く、その協議会がやっと構成でした、とのことです。おお、よくも構成できたな・・と思えなくもないです。でも、ここからは京郷新聞の記事ですが・・妙なことに、その『市民の代表』が誰なのか、公開されていない、とのことでして。ユン政権がこうでもしないといけないと思っているのは、ある程度は分かります。しかし、法律に『市民代表』が誰なのか公開しないとならないと定められているのかどうかまでは分かりませんが、少なくとも今まで公開するのが慣例だったのなら、反対側に名分を与えてしまうだけではないのか、そんな気もします。

<<・・イジョンソプ国防部長官は8月29日、国会国防委員会全体会議で、「(サード基地)環境影響評価協議会が、19日、構成されたと聞いている」と話した・・・・サード反対団体は評価協議会構成自体を認めることができないという立場だ。(※協議会の)住民代表の身元が、公開されなかったという理由だ。パク・スギュ、THAAD撤回ソンジュ住民対策委員会スポークスマンは、「住民代表が秘密なら、その住民の意志をどうやって集めたというのか」とし、「ソンジュ郡民の目を避けて、非公開で推進したサード基地環境影響評価評価協議会は、無効だ」と主張した。続いて「これから行われるすべての環境影響評価手続きに対して、全ての手段を使って積極的に反対する」と話した(京郷新聞)・・>>

 

現金化はユン政権でも何一つ対処できないでいますが、THAADの件は、方向性だけは文政権の頃よりまともに動いているとも言えるでしょう。しかし、なんでここで『8月中に』などという『期限』を自ら言い出して、手続き的に弱点を残したのか、わけが分かりません。しかも、結局は8月中という期限も守れませんでしたし。米国側に『とにかく喜んでもらえそうなことを言わないといけない』と思って、8月がどうとか言ったのでしょうか。普通に『出来る限り早く、目に見える変化を成し遂げたい』ぐらいにしておけば、もっとよかったのでは。

 

 

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