韓国、8月の貿易赤字が統計作成以来最大規模に・・「日本との貿易で発生した赤字を、中国貿易の黒字でなんとかしないと、全体的に赤字になるしかない」

全体的な経済状況を分析するにおいて、韓国の場合は、他国よりも「貿易赤字」が持つ意味は特に大きいと言えます。各記事によく載る表現をお借りしますと、『貿易で食って暮らす』わけですから。ですが、8月の貿易赤字が95億ドルで、統計を作成して以来、最大の規模になったそうです。いまはGDPなど規模が変わったので単純比較はできませんが、朝鮮日報はこの金額を「1996年(いわゆるIMF期間の直前になります)の年間貿易赤字が206億ドルだったので、その約半分が、先月だけで発生した」としています。また、通貨安だから貿易に有利なわけでもないと確実になった、とも。今年の累計貿易赤字は247億ドルです。

特に、中国との貿易において、いままでのようにはいかなくなったこと、外交的なものではなく、もう技術においても、中国と韓国の関係が変わりつつあると報じています。もちろん、エネルギーや食料などにおいて、輸入価格が上がってしまったのも理由ですし、それは大きな影響を及ぼしているけど、単にそれだけではない、というのです。「日本との貿易で発生した赤字を、中国との貿易で得た黒字でカバーする」のが基本パターンなので、中国との貿易が黒字がちゃんと発生してくれないと、全体的にも赤字になるしかない、というのが専門家の話です。

 

朝鮮日報は今の状況を、『通貨安で最大の貿易赤字という、いままで経験したことのない状況が来ている』としつつ(文在寅大統領がよく使っていたフレーズに似ている気もします)、為替レートは通貨安、ウォン安が続いており、今朝はドル1357ウォンだったそうです。当局は口頭介入をしているものの、あまり効果がなく(韓国だけの問題でもないですし)、ニューシースなど一部のメディアは『外貨保有高が減りつつあり、介入に使っているのが明白だ。このままだと、外国に対し『なにか危ない状態なのか』という間違ったサインを与えてしまう可能性がある』と報じています。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・8月の貿易赤字95億ドル(約13兆ウォン)は、いままで最大の貿易赤字を出した1996年の1年間の赤字206億ドルの、ほぼ半分に達する規模だ。金額も衝撃的だが、為替レートが上がる(※韓国の表現で『通貨安になる』)状況でも輸出が鈍化し、赤字が5カ月連続で発生したという点で、懸念が高まっている。通貨安の為替レートが韓国の輸出を増やし、貿易収支の改善に寄与していた過去のIMF期間や2008年の金融不安時期とは、全く異なる様相が広がっているのだ・・

・・(※エネルギーなどの輸入価格が大幅に上がってしまった、という話の後に)輸出も懸念を強くするばかりだ。輸出上昇傾向が鈍化しているうえ、最大の輸出市場である中国で、4ヶ月間も赤字が続いて、韓国貿易構造全体を揺るがしているということだ。キム・ジョンシク延世大教授は、「中国で稼いで対日本赤字を埋め、米国に売って黒字を残すのが韓国貿易の黒字構造だ」とし「中国で黒字が出せないなら、赤字になるしかない」と指摘した。

 

米国が中国産製品の輸入を管理するようになって、いままでの、中間財を中国に輸出し、完成品にして米国市場に売っていた国際分業構造に問題が発生しているうえ、中国の製造競争力が強くなり、韓国産の立場がますます困っている、という分析も出ている。ジョサンヒョン国際貿易通商研究院長は「中国から原材料や汎用半導体の輸入は増え続けるが、韓国製品の輸出は減っている」とし「対中貿易が変化を迎えている」とした。先月、中国と貿易で半導体と無線通信機器の輸出はそれぞれ3.4%、14.1%減ったが、輸入は16.3%、3.8%増えた。

グローバル景気が一気に萎縮し、輸出比重が大きい韓国としては、活路を見つけることが容易ではないという診断も出ている。ジュ・ウォン現代経済研究院室長は、「対中輸出が減り、赤字が続くというのは、私たちの輸出が機能していないという意味だ」とし「1~2年以内にASEANや米国など新しい市場を拡大することは、現実的に難しいので、懸念は大きい」と言った(朝鮮日報)・・>>

 

キム・ジョンシク教授は他にも、貿易赤字がさらに大きくなると、『お金(外国からの投資金などのことでしょう)』が海外に出ていくようになるので、そのまま金融市場が揺れることになる、と指摘しています。いまの通貨安は韓国だけの問題でもありませんが、前にも紹介したことがありますけど、韓国がもっとも気にしているのがこの『流出』でして。ハードカレンシーを持っているわけでもありませんし。ちょうどニューシースの記事にも教授の話が載っているので、続けて紹介します。

<<・・これ(※通貨安)に対する外国為替当局の悩みも大きくなっている。為替レートは基本的に市場で決定されるが、急騰や急落など市場安定に支障を来すほど一定方向に流れてしまえば、当局が外国為替保有額を使ってドルを買ったり売って市場安定措置を取る。当局関係者は「場合によって市場安定化のために介入するというのが基本的な原則」と話した。専門家たちは、外国為替当局の介入は必要だが、ドル売りによる実介入の場合、外国為替保有額が減るしかなく、望ましくないと指摘した。

 

キム・ジョンシク延世大経済学部教授は、「米国側が年末まで基準金利を上げ続けるものと見られ、韓国貿易収支も改善される可能性がなく、そこからさらに為替レートが通貨安に流れる可能性が高い」とし「すると、為替差損を避けるために外国人投資家たちの資金が流出し、さらに通貨安になるので、ドル1400ウォンを超えるのは時間の問題に見える」と話した。

教授は、「現水準の口頭介入は全く効果がない。流れを変えるためのものではなく、過度な変動性を防ぐためにドル売りによる微調整(スムージングオペレーション)は必要だと見ているが、そうなれば、外国為替保有高が減るしかない」とし「外国為替保有額が減ると、他の国々に、『韓国の外国為替がリスキーではないのか』という間違った認識を与える可能性もある」と警告した(ニューシース)・・>>

 

いや、しかし、本当に様々な方面からミッション(?)が発生していますね。尹錫悦(ユンソンニョル)大統領、いまのレベルでクリアーできるのでしょうか。中国経済から影響を受けない国など世界のどこにも無いでしょうけど、韓国経済の場合、明らかに中国経済の成長のおかげで、これまた国内メディアの表現を借りますと『チャイナブームに乗って』発展できました。その流れが、もう大きく変わろうとしています。文在寅大統領が、任期を終える直前ユン大統領(当時は当選者でしたが)がTHAAD追加配置について話したことで、『大統領になれば、そんなこと言えないだろう』と話したことがあります。それが、THAADだけではなく、貿易を含めた国のシステムそのものに対する話だったとすれば・・妙に合っている気もします。

 

 

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

   ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2022年9月2日)からですが、<尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)>です。文在寅政権の任期末と尹錫悦政権の政策を並べ、対日、対米、対中、対北においてどんな政策を取っているのかを考察しました。政権交代、保守政権などの言葉が、結局は仮面が変わっただけだということ、率直に書きました。 新刊<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。「私はただ、日本が好きだから、日本人として生きたいと思っています」。これが、本書の全て、帰化の手続きを進めている私の全てです。 刊として、日本滞在4年目の記録、<「自由な国」日本「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書) >と、新しく出現した対日観について考察した卑日(扶桑社新書)>も発売中です。 ・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。 ・当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。