ユン政権、ついに公式に『基金案』を提示か・・日本側は、2019年河野外相発言などで、すでに受け入れられないと表明済み

読売新聞に、「早ければ来月、尹錫悦(ユンソンニョル)政権が、解決案を提示する」という記事が載りました。ちょうど官民協議会が『次回作(政権)にご期待ください』と言わんばかりに、急に終了となりましたので、タイミング的にその関連性も気なるところです。韓国では聯合ニュースなど多くのメディアが伝えています。さっそくですが、<<~>>で引用してみます。一部に用いている「◯」表記は、「イ」のことです。

<<・・韓国政府が、早ければ来月、現金化の解決案を日本政府に提示すると、日本読売新聞が6日、韓国政府高官を引用して報道した。高官は、「韓日関係の早期改善を目指すユン政権は、日本側とコミュニケーションを図った後、早ければ来月ごろにでも、解決策を提示するつもりだ」と話した。これに関連して、新聞は韓国政府が解法を模索するために4回にわたって実施した民官協議会で、原告に支給する金を誰が引き受け、財源はどのようにするかを中心に議論されたと紹介した。民官協議会では、新たに創設する基金や既存の財団などが問題解決の主体となり、韓日両国企業が出した資金を財源とすることが望ましいという方に意見が集まったと同紙は伝えた(聯合ニュース)・・>>

 

さて、すでに引用部分にも出ていますが、どうしても基金案(以下、財団案なども含めてのものと致します)の可能性が高いと思われます。これといって参加者たちが合意できたのは、一つ前のエントリーでも紹介しましたが、「政府は支払いの主体になってはならないから、代位弁済は無し」ということだけです。他に、シャザ◯が必要だという意見もほとんどの参加者が合意したものの、どんな形でどれだけのシャザ◯にするかは政府の問題だから協議会に聞くな、というスタンスでした。率直に言って合意や議論をしたというより、今まで出ていた案を掘り返しただけです。

となると、もう基金案しかありません。しかも、基金案にもいろいろありますが、韓国政府が参加する形の基金は成立しなくなります。企業など、徹底して民間『だけ』の基金または財団になります。協議会の話がそのままユン政権の公式案になるわけではありませんが、最初から協議会の存在を国内外にアピールしていたし、内容もマスコミに流れたし、ユン政権としても、協議会の会議結果から完全に離れた内容の案を出すことはできないでしょう。こんな状態で公式案を日本側に提示するとなると、やはり基金案しかないわけです。

 

皆様もよくご存知のはずですが、この基金案、日本側は「だから、それは成立しないって」と何度も言ってきました。有名なのが2019年7月日の、当時の河野外相の『極めてブレ◯でございます』発言です。当日、ナムグァンピョ(当時)韓国大使と面会した際、ナム大使は現金化問題の解決案として、基金案を提示しました。しかし、すでに基金案に対して、日本側は受け入れられないと何度も表明していました。当時のFNNプライムオンラインに詳しく載っていますが、そこで、河野外相は公開された状態で(まだマスコミのカメラが撮っているときに)、ナム大使に該当発言をしました。FNNは、このように相手国大使の話に『待った』を入れること自体、異例の事態だったと書いています。

 

にも関わらず、来月、またもや基金案を公式案として提示するのでしょうか。良いか、良くないかの問題ではありません。基金案は、本件の本質とは完全に「別の話」をしているだけです。算数の宿題に風景画を提出するようなものです。そもそも、基金案でなんとかなる案件だったのなら、ここまで長引くこともなかったでしょう。ひょっとして、ユン政権は、『文在寅政権の基金案ではなく、尹錫悦政権の基金案だから大丈夫だろう』と思っているのでしょうか。

保守側のメディアでも、もう「基金案と、日本側が相応のシャザ◯をする」を既成事実としている雰囲気です。中央日報はこの件について、いくつかの難しい部分もあるものの、「政治的解決を考えなかった文在寅政権とは異なり、ユン大統領は『主権問題の衝突なしに補償も可能な方案』を講じていると明らかにした。財源は韓国の財団や基金が充当し、日本はこの問題に対する相応の立場を表明する方式になるだろう」としています。中身は文在寅政権のときに出てきたものと変わっていないのに、何を根拠にしてここまで書くことができるのでしょうか。『前の政権のことだから』以外に、何があるのでしょうか。

 

中央日報の記事で一つだけ「それはそうだ」と思える部分は、もし今回ユン政権が案を出しても、政権が変われば、またそれがひっくり返されるのではないか、とする指摘です。<<・・また重要なのは国内政治的プロセスだ。2015年日韓合意も、政権が変わると、事実上白紙化された。今回だけは国民の多数が同意し、野党も大きく反対しない解決策を用意しなければならない。原告側の説得と同意は言うまでもない。もしそれができなければ、原告側は再び法的に対応し、日本はこれを問題として外交的解決を遅らせるだろう。要約すると、こうだ。政権が変わってもひっくり返らない解決策を作り、日本との交渉でも最善を尽くして国民が納得するほどの結果を得なければならない(中央日報)・・>>

ただ、記事に、『その案とは、どういうものか』については書かれていません。いや、『多くが同意し、野党も大して反対しない、反対する人たちからも同意を得て、納得できる結果のため最善を尽くす』と書けば、これ、どんな事案にでも、世界、宇宙規模で使える文章ではないでしょうか。「愛と根性で」なんとかするという話に似ている気もして、極めて憂いでございます。

 

 

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