韓国政府、広がる米国への反発気流の中、中国に協力強化を提案・・中国は国際投資貿易相談会に韓国を主賓国として招待、最大のブースを展開

<本文に入る前に、まず、今朝、エリザベス女王が亡くなったというニュースを見ました。エリザベス女王、長い間本当にお疲れ様でした。冥福をお祈りします> 昨日の2つのエントリーでもお伝えしたばかりですが、電気車(バッテリーといったほうがいいかもしれませんが)や半導体関連で、韓国では米国に対する反発ムードが広がっています。そんな中、産業通商資源部アン・ドックン本部長が米国インフレ抑止法の修正を主張しながら、「チップ4加入などと連携するかもしれない」などと話し、話題になりました。

アン本部長は本件で米国側に派遣された代表団のリーダーでもあり、尹錫悦(ユンソンニョル)政権が本件を任せた人、とも言えますが・・国民日報など複数のメディアによると、そのアン本部長が、今回は中国との協力強化を提案し、中国は韓国を中国最大の国際投資貿易相談会「CIFIT」の主賓国家として招待するなど、なんというか、とても分かりやすい動きを見せています。各記事ではインフレ抑止法だけがクローズアップされていますが、実は前の外相会談のときから、ユン政権は『先端技術において中国との協力強化』などを提案していました。インフレ抑止法はただの名分で、予定通り進んでいるのではないか。そんな見方もできます。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・米国インフレ抑止法制定による​​電気自動車補助金サベ◯問題と関連し(※◯はツです)、政府が米国政府と別途協議チャネルを構築することにした。しかし、インフレ抑止法がが制定されたばかりであり、しかも、米国が11月に中間選挙を控えているだけに、短期間でこれといった成果を出すことは容易ではないだろう、という観測が多い。米国主導の半導体サプライチェーン協議体「チップ4」交渉が延期された状況で、韓国は中国最大の貿易博覧会に主賓国として参加するなど、電気自動車補助金をきっかけに、中国側に一歩近づく形となっている。ただし、米国主導のインド・太平洋経済フレームワーク(IPEF)協議にも積極的に参加し、米中間の間でバランスをとっている・・

 

・・(※いくつかの案件について書いたあと)当初今月初めの予定されたチップ4予備会議も、参加国間の実務的問題などを理由に今月中旬以降に延期されたことが分かった。このように韓米がうまくいかないでいる中、中国は8日から11日まで開かれる「第22回中国国際投資貿易相談会(CIFIT)」に韓国を主賓国として招待した。 CIFITは中国商務部主催で1997年から開催されてきた中国最大の、国家規模の投資貿易博覧会だ。主賓国招待は、表面的には韓中修交30周年を掲げているが、米国の対中牽制に参加しないようにする意図もある。韓国ブースは参加国のうち最大規模で運営される。アン本部長は、オンラインメッセージで域内包括的経済連携協定(RCEP)、韓中自由貿易協定(FTA)を取り上げ、韓中両国間の協力強化を提案した。ただ、政府は、すでに参加を宣言したIPEF交渉にも積極的に参加し、米国とも足並みをそろえた(国民日報)・・>>

 

IPEF加盟国がIPEF会議に参加することが「積極的」「足並みをそろえる」になるのでしょうか。バランスを論ずる以前のことではないのか・・そんな気もしますが。ユン政権が始まってからすぐに、各メディアは『ユン政権になったから、もう日韓・米韓関係は問題ない。もう問題は中国との関係をどう管理するかだけだ』と報じてきました。日本側のスタンスが変わらなかったことで、一部メディアが『なぜだ、ユン政権になったのに』というニュアンスの記事を載せていたと、本ブログでもいくつか紹介したことがあります。「変わらなかった」というより、「変わる理由がなかった」ですけど。

 

5月の米韓首脳会談からは、米国に対しても同じ流れができました。特に、バイデン大統領が『日本より先に』訪韓したことで、もう完全に米国側だ!という論調が主流となりました。米韓首脳会談で具体的な話が何一つなかったこと、クアッド加入など事前に期待されていたことが何一つ実現しなかったことなど、『日本も米国も、多少は期待はしているとも聞くが、基本的には様子見である』というのがすぐ分かる状態でした。にもかかわらず、なんというか、大きな『ズレ』を抱えた記事が増えていったわけです。

7月の、韓中の外相会談とほぼ同じタイミングで、「中国とは、先端素材などのサプライチェーンを強化する協力方案を肯定的に議論中であることが確認された」という記事がありました(チャンネルA)。「先端素材の生産に代表される先端産業をはじめ、気候環境対応、デジタル産業、シルバー産業など多様な分野で、中国と協力できる」、「中国とのサプライチェーン安全管理チャネルを強化、企業の中国進出と中国への投資活性化が成し遂げられる代案を設けている」などの内容でした。

 

それから、8月27日、オンラインで韓中財務相(企画財政課長)会議が開かれましたが、そこで、なんど両国は国家レベルでサプライチェーン関連もMOUを締結しました。「サプライチェーンの不安定において、政策意見を共有し、協力を強化する。 両国政府の国長級関係者が参加するサプライチェーン協力調整協議体も新設する」ことにも合意した、などなど、聯合ニュースなど複数のメディアが報じました。具体的な話がどこまで進んでいるかはわかりませんし、「MOUだから」と見ることもできます。しかし、このタイミングで、政府レベルでこんな動きをする必要があるのか、対外的にあたえるメッセージとして、これはどんな影響を及ぼすのだろうか、いろいろ、疑問でした。

 

個人的な意見ではありますが、今回の米国とのトラブルを、ユン政権はある種の『名分』としているのではないか、そんな気がしてなりません。新刊『尹錫悦大統領の仮面』にも書きましたが、ユン政権は最初から『北朝鮮問題において積極的に協力する』を条件に、日本には各懸案の一括妥結を、米国には中国関連での例外を求めていました。しかし、それからも日本は『一貫した立場』で、米国も、ユン政権が思っていたほどの『プレゼント』は用意しませんでした。用意する理由がなかったのです。それから、7月あたりから急に中国関連スタンスが明らかになり、ユン大統領自ら『中国が誤解しないように積極的な外交を』・『経済のためなら大統領はどこにも行ける(※訪中の可能性)』と話したり、『中国が加入できないグループには私たちも入らない(与党重鎮議員ハテギョン氏)』、『中国主導のグループにも参加できる(ハンドクス国務総理国会議長)』などの発言が相次ぎました。

それから8月には、例の外相会談と、急に北朝鮮に対して支援を提案する『大胆な構想』発表などがありました。この流れを、『後頭部をたたいたのは米側だから』とするために、今のトラブルをむしろ歓迎しているのではないか・・そんな見方もできるわけです。個人的な見解であるし、いまはまだ、『まさか』とも思いますが。

 

 

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