専門家「米国を動かすため、日本と協力しよう」・・広がる米国への反発、サムスンの実績問題まで加わり、混乱状態に

価値外交という言葉があります。一般的には、同じ価値観を持つ、いわゆる『西側』との関係を優先するという意味になっています。米韓首脳会談の頃に出てきた言葉で、尹錫悦(ユンソンニョル)政権が米国側を優先する方向に『完全に舵をきった』とする、論拠の一つにもなっています。その後にユン政権が見せた中国への外交スタンス・・例えば与党重鎮が『中国が加入できないグループには入らない』と話したり、国務総理が『中国主導のグループに入ることもできる』と話したり、政府レベルで中国に半導体協力強化を提案したりMOU締結したりしたことを考えると、よく分からなかったりしますが。

なんというか、朴槿恵政権の『創造経済』のようなものだと思えば、分かりやすいかもしれません(さらに分かりにくくなる気もしますが)。で、ここから本題ですが・・最近、本ブログの小テーマにもなっている、電気車だの半導体だの、インフレ抑止法関連で広がりつつある『米国への失望感』により、この価値外交に批判が集中しています。定義がどうであれ、それが『西側』に立つ外交という趣旨であるなら、いまのユン政権において、『それ以外』は一つしかありません。中国側に立つことです。価値外交に批判が増えれば増えるほど、ユン政権は中国側に近づくしかない、そんな構図です。

 

この構図は、それがユン政権のジレンマです。各政権において、国家単位で、できてしまったジレンマでもありましょう。ソウル経済の記事には、「この件をWTOまでもっていくのはあまり実効性がないので、象徴的な意味のため、日本、EUと協力して問題提起しよう」という主張も載っています。これ、本記事だけでなく、結構多くの記事から目立ちます。日本やEUは、米国が信頼する国だから、でしょうか。さて、日本やEUと、本当の意味で『価値観』を合わせてきたなら、それもありかもしれませんが・・こんなときに限って、都合よくそうなれるはずはないでしょう。

以下、各紙、<<~>>が引用部分になります。記事の引用部分に、「ハリス米国副大統領が訪韓する」という話が出てきますが、ハリス氏は安倍元総理の国葬に参加するため日本に来て、4泊して、帰りの日(29日)に韓国にも訪れる予定です。泊まる予定はないとのことなので、記事に書いてあるような、いろいろな話し合いができるかどうかは、分かりません。わざわざ引用はしませんが、一部、同じ指摘(そこまで話す時間もないだろう、など)をするメディアもあります。

 

<<・・ユン政権が、米中対立のの中で「価値外交」を掲げて米国側に立ったものの、いわゆる「インフレ抑止法」の前に、何もできないでいる。政府は、米国と外交的コミュニケーションを続け、国内業界に有利な方向に法の執行を誘導する方針だが、その実効性は未知数だ。11日、外交部によると、ジョヒョンドン外交部第1次官とイドフン第2次官は、今月米国を訪問し、米国のインフレ抑止法施行による国内電気自動車の生産業界の懸念を伝えることにした・・・・これと関連して外交部当局者は「当然、今回の会談でもインフレ抑止法に問題を提起し、十分に私たちの懸念を伝え、米国側に早急な措置を促す計画」と説明した。ユン大統領も今月29日に訪韓するカマラ・ハリス米国副大統領に、米国のインフレ抑止法施行に関する国内電気自動車業界の懸念を伝達し、これを早急に解消するための努力を要請するものと見込まれる(ソウル経済)・・>>

 

ソウル経済は専門家の話として、「WTOでは時間も長くかかり、実効性は大きくない。米国のインフレ抑止法のような措置が今回で終わるわけでもない。象徴的な意味を与えるため、他国と共同でWTOに持っていくことも必要だ」と書いています。そして、「米国に、インフレ抑止法に多数の国家が反対していることを明らかにしなければならないという話だ」としながら、EUと日本を挙げています。「懸念を米国に個別に伝達する一方、欧州連合(EU)、日本の関連機関との共助案も模索」、などなど。しかし、先も話しましたが、そう都合よく出来るのでしょうか。

また一つ、この流れが、国内でさらに広がる兆しが見えています。サムスンの実績及び株価下落がその理由です。約600万人とされる蟻(個人投資家)たちの砦でもある、サムスン電子(ニュース1の記事より)。その実績や株価が下がりつつあり、同じく不動産価格の下落とともに、経済安保にはあまり興味がないという人でも、これらの動きにおいて『米国のインフレ抑止法によって、こうなった』『私たちは味方だと思っていたのに、後頭部をたたかれた』という認識を持つようになるわけです。

 

この部分は、ちょっと私の考えが飛躍してしまったのかもしれませんが、可能性としては結構高いと、私は見ています。本ブログでも8日に紹介しましたが、サムスン電子の半導体分野の責任者でもあるギョンギェヒョン社長(DS部門)が、急に半導体工場を公開し、取材に集まった記者たちに『チップ4に加入する前に、中国の理解を得ておいてほしい』と、事実上、ユン政権へのメッセージを公にしました。まったく関係がないとも思えません。まだ確定したわけではありませんが、クアルコムが、ファウンダリーにおいてサムスンからTSMCに乗り換える、という予想も出ていまして。国内の個人投資家たちが、深く考えようとせず、これを『ユン政権の外交の問題』とする可能性。決して少ないとへ言えないでしょう。

<<・・サムスン電子の(※実績・株価)下落で、個人投資家の損失も少なくないと観測される。個人は、9月になってからも、サムスン電子を1兆2736億ウォンも買った。今年の累積純買収は7兆3660億ウォンに達する。同じ期間、外国人が9兆3879億ウォン、機関は8兆3818億ウォン分を売った。サムスン電子の小額株主(持分率が1%未満の株主)は、6月30日基準で592万2693人に達する。小額株主が保有したサムスン電子株式は合計39億5990万2598株で、総発行株式の66.33%に達する。 それいからも個人純売買が続いたため、この比重はさらに増加したと予想される(ニュース1)・・>>

 

調査機関にもよりますが、支持率は30%を少し超えるだけのユン大統領。米国側が法案の修正に応じてくれる可能性は高くないと言われています。しかも、もうすぐ現金化問題の解決案として基金案を提示するとも言われていますが、うまくいく可能性はさらに低いでしょう。北朝鮮はまったく話し合いに応じる気配を見せず、中国はニヤニヤするばかり。ユン大統領、この状態において何か秘策はあるのでしょうか。ないだろうけど、礼儀上、あるのでしょうかと書いておきます。あと、最後にちょっとした告知ですが、プレジデントオンラインに、拙著『尹錫悦大統領の仮面 (扶桑社新書)』の一部編集版が掲載されました。ありがとうございます。

 

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