韓国紙、為替レート急変による通貨価値の問題で「米韓首脳会談で話した『金融安定協力』はどうなったのか。米国側に投資し、IPEFにも加入したのに、なぜ続報がないのか」

『ウォン』の為替レートが通貨安のほうに急激に動き、しかも米国の大幅な金利引き上げがまた予想されているなどで、通貨スワップなど通貨価値関連の記事が増えています。米国関連だと、インフレ抑止法(電気車補助金)や半導体関連法で政府の対策を求める記事がまだまだ多く、この件もまた尹錫悦(ユンソンニョル)政権だけでなく、米国側に対するある種の不満の表出だと見ることも出来ます。ちなみに本エントリーのソース記事にも、『米韓首脳会談のとき、金融関連で協力すると言ったではないか』『米国側に投資し、IPEFにも加入したのに、なぜ続報がないのか』などと書いています。

いまのところ、通貨安に対し、『金利を上げる(米国との金利差を維持する)』と『米国または日本との通貨スワップ』以外は、効果的な手段がないというのが一般的な見解です。しかし、金利を上げるのは容易ではありません。家計負債はもう言うまでもありません。国際金融協会(IIF)が今年5月に発表した「グローバル負債モニタリング」報告書によると、世界でGDPより家計負債が多い国は韓国(104.3%)だけです。香港(95.3%)、タイ(89.7%)、イギリス(83.9%)、米国(76.1%)、中国(62.1%)、日本(59.7%)、ユーロ(59.6%)、などでした。

 

それに、つい先日も、『ゾンビ』企業(3年連続で、営業利益で負債の利子が払えないでいる企業のこと)、について書いたばかりですが、金利が上がると、さらに増えることになるでしょう。最近、不動産価値が明らかに下落しつつあるのも、やはり金利の影響は大きく、いま中央銀行が金利引き上げに踏み込むにはかなりの負担があります。多分、やるにはやるでしょうけど、近いうちに限界が来るのではないでしょうか。それに、なにより、金利を引き上げなければ、外国人投資資金の離脱が本格化するでしょう。

でも、通貨安をこのままにしておくわけにもいきません。物価上昇率は(月によって)日本の2.5倍~3倍で、『冷蔵庫尽くし(とりあえず冷蔵庫に残っているものを食べて支出を減らす)などの新造語が流行っている中、消費がさらに冷え込むことになるでしょう。しかも、今回の通貨安では、輸出企業などのメリットもあまり無いと報じられています。そこで、いつも通貨スワップ主張が盛り上がります。首脳会談当時も、米韓通貨スワップを『最優先議題にすべきだ』などの主張があったものの、首脳会談でそのような話はなく、共同声明に『協力する』という内容だけが入りました。

 

そこで、またまた一部のメディアが、『通貨スワップはまだか』『しないのか、できないのか』『IPEFにも加入したのに』などの主張を載せるようになったわけです。韓国経済の記事ですが、相変わらず、「私たちは十分やるべきことをやったのに、なんでもっと『もらえ』ないのか」とする論調が目立ちます。これは、この記事だけでなく、ユン政権になってから各メディアに共通する論調だったりします。特にIPEFの場合、『中国が反対するにも関わらず、加入した』ということを、かなりアピールしています。「加入しない手はなかった」と見るべきだと思いますけど。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・外国為替市場の混乱が『危機』になるのを防ぐ方法は、3つある。金利をいくら引き上げても問題ないほど基礎体力を育て、海外資金を吸い込む投資魅力国にするのが定石だ。しかし、これは時間もエネルギーもかかる。いますぐ有事に備えるための方法を考えると、そのうちの一つが、韓米通貨スワップだ。通貨スワップはドルを相手国から限度内引き出し、後で利子をつけてウォンで返済する仕組みだ。韓米通貨スワップは外国為替市場で効果が保証された保険となる。2008年にも、力を発揮した。当時、韓国銀行と企画財政部が互いに通貨スワップ締結は自分たちの手柄だと、顔を赤くして主張したほどだ。しかし、どうしたことか、今回は両方ともおとなしい。(※通貨スワップ締結を)しないのか、できないのかは分からないが、締結当事者の韓国銀行側は「可能性もないし、必要もない」と言い切っている。

 

別の代替案として浮上したのが、通貨協力体系の構築だ。去る5月21日、韓米首脳会談の時、両国は秩序に基づいた外国為替市場のためにより緊密に協議していくと共同声明を発表した。通貨スワップよりもより確実な保険という評価が出ていた。しかし、どうしたことか、その後には何の知らせもない。いままで多くの危機説が『説』で終わった理由は、徹底的に準備したからだ。今の対応は、数十年前と瓜二つだ。 「ファンダメンタルは良好だ」「状況を注視している」という話だけだ。

確実な安全装置が必要だと思われる。アメリカにその役割を期待してはならないのだろうか。韓国と米国は経済・安全保障はもちろん、技術・価値まで共有することにしたグローバル包括的戦略同盟だ。そんな次元で、数十兆ウォンの対米投資とインド・太平洋経済フレームワーク(IPEF)参加などを約束したのだ。ついにユン大統領が米国大統領に会う可能性が大きくなっている(※国連総会)。外国為替市場などでお互いに聞きたい話をやりとりできる席になることを期待してみる(韓国経済)・・>>

 

電気車補助金も、半導体の対中国投資関連もそうですが、こうして各記事を読んでいると、向こうが約束を守らなかったような、そんなニュアンスがあります。しかし、他の件もそうですがこの『金融安定協力』も、5月当時の共同声明に書いてある内容を読み返してみると、大したことは何も書いてありません。核心は、『協議する必要性について認識した』だけです。以下、当時の全文から、該当部分だけ紹介します。 「ユン大統領とバイデン大統領は今年10周年を迎えた韓米自由貿易協定(FTA)が依然として両国経済関係の根幹であることに同意する。秩序に基づいてうまく機能する外国為替市場を含む、持続可能な成長と金融安定性を促進するために、両首脳は外国為替市場の動向について緊密に協議する必要性を認識した。 両首脳は、公正で市場ベースの競争という共同の価値と重要な利益を共有し・・」。

ユン大統領、もし国連総会で首脳会談できたとしても、なにかいろいろ言わないとならなくなりました。すでに法案は成立しているけど電気車補助金はもらえるように言わないとならないし、中国に投資した半導体企業から支援金を回収する法律が話題だけどサムスンは回収されないように言わないとならないし、自国通貨(ドル)高政策を行っている国の大統領に通貨スワップを申し込まないとなりません。これ、できるのでしょうか。

 

 

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